リヨンvsPSG 〜CLRound16を前にして〜



いよいよCL決勝Tが迫るなか、普段は見ない他リーグの注目チームの試合に興味があったため、今回記事を書いてみることにした。
リヨンvsPSG。両チームともにCLで勝ち残っているリーグアン屈指のビッグマッチである。PSGはマンチェスターU、リヨンはバルセロナと、CL優勝経験のあるビッグクラブとRound16を戦うことになっている。

スタメンは上図の通り。
ホームのリヨンは4-2-3-1。ここ数年ラカゼットやトリッソといった有望株の引き抜きに遭うなか、なおもアワールやメンディといった若くて才能のある選手が台頭しており、玄人好みのするチームであることには変わりない。

一方のパリは3-1-4-2。王様ネイマールとヴェラッティの怪我を受け、前線をムバッペとカバーニの2トップに。紛れもなくこのチームの問題は中盤にある。もともと手薄にも関わらず、さらにヴェラッティを怪我で欠き、ラビオは忠誠心を失い戦力にならず、、苦しい台所事情である。しかし、良いニュースもある。この冬にゼニトからパレデスを獲得。また、トゥヘル最大の革命であるマルキーニョスのアンカー起用は、ここにきてだいぶ板についてきたようである。彼の良さは、守備範囲の広さや球際の激しさだけでなく、ボールさばきの上手さにも見られる。たまにパスコースを探すのにもたついているところを奪われ、ピンチを招くような欠点も持ち合わせているが、アンカーでの実戦経験も経て、かなりの実効性を備えたMFに成長した。

リヨンのビルドアップ(序盤)
リヨンのビルドアップ時は、ボランチのアワールorエンドンベレがアンカーの位置に入り、4-3-3のような形になる。右サイドは、トラオレがサイドいっぱいに開いて幅を取るが、左サイドのデパイは幅を取らず、ハーフスペースに位置。この狙いとしては、パリが人数をかけてハイプレスを掛けてくることを見込んで、中盤の一枚(ドラクスラー)をピン留めし、プレスを無効化する狙いがあったのかもしれない。結果的にこれは機能せず。アウベスの裏という格好の狙いどころを突くことが出来ず、立ち上がりのパリの猛攻の一助となってしまう。

パリのプレス→速攻
パリの狙いは、プレスをかけてボールを奪い、速攻につなげることにある。前線に人数をかけ、数的同数を作り出すことでリヨンのビルドアップを封じにかかる。このハイプレスのキーマンはダニ・アウベスと中盤の3枚。まずはアウベス。彼は、リヨンの攻撃のキーマンであるLBメンディを封じるため、背後を顧みず、ひたすらメンディにプレスをかけ、ディフェンスラインに閉じ込め続けた。これにより、リヨンの重心は後ろに重たくなり、前進が思うように行かなかった。
次に、中盤3枚のプレスの掛け方である。ディ・マリア、ドラクスラーの2人は、本来はサイドアタッカーで、このポジションは本職ではない。必然的に、守備の強度が落ちる。しかし、この2人には走力という武器があり、これは中盤の守備において重要な要素である。リヨンのボール回しに対し、3人の間にパスを通されることがないように、しっかりとスライドをする。また、ボール保持者にプレスを掛ける際、カバーシャドウを用いて次のパスコースを切りつつボールを奪うという芸当もやってのけた。サイドアタッカーというポジションで一世を風靡するほどの実力者が、規律に従い、上級のプレッシングのテクニックを用いて役割をこなす姿には感嘆である。

結果的に、パリの先制点はこの形から生まれる。パスコースを切られたことでボールの預けどころを失い、もたつくアワールに対し、ドラクスラー、マルキーニョス、さらにはムバッペのプレスバックで囲み、ボール奪取→速攻で最後はディ・マリアが沈める、というトゥヘルにとってはしてやったりの理想的な形だった。

リヨンの攻勢
先制したパリは、得点後ハイプレスをやめ、5-3-2のブロックを形成。攻撃に出た場面では、失った直後にプレスを掛けることもあったが、基本的にはリスクを冒さず、リヨンにボールを持たせる展開に持ち込もうとする。これを境にリヨンが攻勢に出る。いくつか工夫も見られた。

・RBデュボワをDFラインにとどめ、3バックのような形に→パリの2トップ脇からボールを持ち上がることで自由な前進が可能に
・アウベスのプレスから解放されたメンディが偽SBのポジションを取って攻撃参加→デパイとのコンビネーションで左サイドのハーフスペースを攻略

リヨンの強みはSBなのだと強く感じた。戦術理解に優れ、スキルも兼ね備えた優秀な両SBである。おまけに2人とも年齢的に若く、これからが楽しみだ。右のデュボワと左のメンディ。名前を覚えておこう。

リヨンの攻撃は、ポジショナルプレーの原則に則ってなされる。元のシステムをそのまま5レーンに当てはめやすい4-3-3ではなく、4-2-3-1であることの特性を活かし、2列目と3列目の選手が複雑にポジションチェンジをしながら顔を出す。この攻撃の鍵を握るのは、フェキルである。基本的に彼は自由を与えられているのだろう。ボックス幅で自由に動き、ボールに絡む。一見すると、フェキルが動き回ることで、2列目の3人が渋滞する現象が起きるようにも思えるが、ここの補完関係はこの試合に限ってみれば、驚くほど流麗なものだった。間で受ける選手がいれば、裏抜けをする選手もいる。そのバランスがすごく良かった。
結果的に、左右両サイドを制圧し、何度も決定機を創り出す。

パリのビルドアップ(キーマンはキンペンベ)
リヨンはボールを失うと、即座にプレスをかけて奪い返そうとする。しかし、パリはこれを巧みにいなす。各人が距離間近く、少ないタッチ数でプレスを掻い潜り、スペースに走るIHや2トップに運ばせてロングカウンターを狙う。IHが本職ではないディ・マリアとドラクスラーは、この局面においても自慢の推進力で1人、2人を剥がし、カウンターの起点となっている。

ところで、相手がハイプレスを志向するチームの場合、最も激しいプレスを受けるのはどのポジションの選手か?答えはDFの選手である。なぜか?DFがボールを奪った瞬間は、それを奪い返そうとする相手の選手が周りに多くいて、あらゆる角度からプレッシャーを受けるからだ。よって、ロングカウンターを仕掛けるには、奪った後の1本目、2本目のパスを出す選手がいかに良質なパスを前線に供給できるか。これが生命線となる。パリにおいてその役割を担うのが、他でもなくキンペンべである。キンペンベの長所は、体を外側に向け、外にパスを出すと見せかけて内に鋭い縦パスを入れることができる点である。もはや芸術の域。

攻めあぐねるパリ
後半開始早々にリヨンがPKで逆転に成功。ここからパリが攻勢を仕掛ける。しかし、パリの突破口は、ほぼ一つしかなかった。左サイドに流れるムバッペのアイソレーションである。後半10本を超えるシュートを放ったパリだが、そのほとんどのチャンスが左サイドからのチャンスメイク。ここしかないと分かっていながらも止められないムバッペはやはりすごいと再認識させられたが、、

バランスよく間受けと裏抜けを繰り返すリヨンとは対照的に、パリの前線には裏抜けを狙う選手が乏しい。IHのディ・マリアとドラクスラー、あるいはウイングバックのアウベスとベルナトが2トップを追い越す動きを取り入れていれば、両サイドからもっとチャンスが作れていたはず。
しかし、この試合ではそこにパスを通すパサーが不在なのも事実。ヴェラッティの復帰か、途中投入されたパレデスの早期フィットが待たれるところだ。


試合は2-1でホームのリヨンが勝利。パリは今季リーグ戦初黒星となった。


感想
試合全体の感想としては、まずリヨンのサッカーに魅了された部分が大きい。強烈な個性を持った前線と若くて伸び盛りのボランチ、サイドバック。
かなり良いチームである。CLでバルサに勝つところが見たい。

一方のパリは、苦しい台所事情のなかで、ついにリーグ初黒星を喫してしまった。奇しくもこの試合をスールシャール(マンチェスターU監督)が生観戦しており、弱点を晒してしまった格好となった。しかし、このチームにはトゥヘルの修正力と、ブッフォンをはじめとしたベテラン勢のメンタリティが備わっており、このままあっさりと負けるようなヤワなチームではない。
注目の新加入パレデスは、中盤の真ん中に入ったが、短い出場時間のなかで決定的な仕事はできなかった。数回訪れたパスを裁く場面では、技術の高さを感じさせる所作を見せたが、3バックの時の中盤アンカーをやったことがないのか、迷子になるようなシーンが散見。まだフィットするには時間がかかりそうだが、可能性を感じさせるプレイヤーであり、今後が楽しみだ。

近年成長を遂げているリーグアン勢は、今季のCLでどこまで勝ち進むのだろうか。

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