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「途中で止められる成年後見」は実現する!?成年後見制度運用改善の動きまとめ

■後見事務における意思決定支援ガイドライン

2020年10月に最高裁判所、厚生労働省などのワーキングチームが「後見事務における意思決定支援ガイドライン」を発表しました。
これは、成年後見制度に携わる司法書士の間では話題となりましたが、一般的な認知度としてはあまり大きくありません。

◎内容
・以下の内容を公式見解で認めました。
「財産保全の観点のみが重視され、本人の意思尊重の視点が十分でない」
「本人の意思決定支援や身上保護等の福祉的な観点も重視した運用が必要である」

・後見人等を含め、本人に関わる支援者たちが常に「意思決定の中心に本人を置く」という本人中心主義を実現するべきとの指針を示しました。
これは、2000年の成年後見制度制定時の原点に戻った考えとなっています。

・法的な代理権に基づく代行決定を【最後の手段】と位置付け、本人による意思決定支援のための枠組みなどを提案しています。

これらはとても良い内容ではありますが、実務的な成年後見制度の運用改善にまでは言及しておらず、「理想論」と見られてしまうような印象もあったかもしれません。
※後見事務における意思決定支援ガイドライン:https://www.mhlw.go.jp/content/000750502.pdf

■成年後見制度の運用改善案

2021年12月、成年後見制度利用促進専門家会議が「成年後見制度の運用改善案」を発表しました。

◎内容
・令和4年度から5年間で「第二期成年後見制度利用促進基本計画」を実行

・サブタイトルは「尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進」

・財産管理偏重からの脱却、後見以外の類型や任意後見の利用促進、市民後見人の活用

・「有期(一時)後見人」、「後見人の柔軟な交替」
→成年後見制度が不便だと感じられてしまう問題のひとつとして、【後見人が一度決まったら変更ができない】というものがありました。これらを改善するのが上記の「有期(一時)後見人」や「後見人の柔軟な交替」ですが、具体的な実現時期等の記載はありません。

■有期(一時)後見人の認容

成年後見制度が不便だと感じられてしまう問題のひとつとしてあった、【後見人が一度決まったら変更ができない】ということが解消されるような仕組みで、
預金をおろしたい、不動産を売却した金銭で施設に入居したいなどの理由で一時的に後見人をつけることができます。

しかし、被後見人に多額の預金が残っていた場合でも役目を終えた時点で本当に後見人が外れるのか否かなど、運用面の問題についてはまだまだ議論の余地がありそうです。

■全国銀行協会の新指針

2021年2月、全国銀行協会が「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」を発表しました。

◎内容
・成年後見の利用は促しつつ、医療費や介護費、生活費等の【本人の利益に適合することが明らかである場合】には、家族等による預金の引き出しを限定的に認容する方針

・任意代理人(任意後見契約とセットになった移行型契約等)や、財産管理契約の受任者による預金の引き出しも認容する方針

上記の内容により、認知症になったら即時預金が凍結されるような事態は回避できる余地が生まれてきました。

上記の制度変更が実現された暁には、これまで資産凍結対策として注目されてきたいわゆる「福祉型家族信託」はその役割を終えるという見方もできるかもしれません。

今回の記事のベースとしているTRINITY LABO.セミナー
【成年後見制度の運用改善と「信託」への影響を考える ~家族信託は要らなくなるのか?~ 】では、家族信託の今後の必要性についても言及されていますので、その点も気になる方はぜひこちらのセミナーもチェックしてみてください!

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