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幻覚に踊るウッソ Vガンダム第45話雑感

YoutubeのガンチャンにVガン最大の問題作がアップされていたので雑観を書いてみる。話自体は面白い、というかアニメの作りというかテクニック?は本当に優れていると思う。おそらくスケジュールの都合上、この回はこれまでのお話をまとめた総集編になっている、で、普通のアニメだとただこれまでの絵を垂れ流すものになってしまうのだけど・・・・。冨野監督、ファーストやGレコなんかを見てもわかるように、既存の絵をまとめて別のお話、というか総集編自体も一つのお話として成立させる、本当に稀有な才能の持ち主だ・・・。余談だけど、この才能はクライアントからの要求を求められたスケジュールで仕上げる、ってことに対してはとても有能な才能だよね。だけど、何かの監督賞、作品賞を受賞するような作品を生み出すのには相性が悪いというか・・・・。うーん、だから富野監督は芸術的な作品を生み出したことで何か評価される監督ではなく、アニメを産業として成立させるために評価されている人なんだと思う

でも書いているけど、アニメを産業として成立させたから「文化功労章」を受賞した面もあるだろうし、ターンAやGレコみたいな作品を作って後に続くアニメータの道を作るみたいな役回りをやって、作品を作る側としてはまぁ、損な役回りだよなーと思わなくもない

ちょっと脱線したのでVガンに話を戻すと、この回は
「ウッソに幻覚を見せることでエンジェルハイロウ(天使の輪)のやばさを視聴者に印象付ける。ウッソの幻覚はシュラク隊の死亡シーンやカテジナに拒絶される、っていったような過去の話数のウッソのトラウマシーンを使う」
って作りになっていて、今後の展開で重要なファクターになる「エンジェルハイロウ」の脅威とその脅威は「モビルスーツじゃなく、女王マリアの母性からきている」ってことを視聴者に印象付けている。総集編なのに他のアニメのように物語から浮いているのではなく、きっちり物語に組み込まれていて、そこは冨野監督の技量の高さを示すものだけど・・・・。話の内容自体は、「母性を戦争兵器に転換するグロテクスさ」をこれでもかと強調して、正直言って冷静になってみると気持ちの良い話ではない。この回、放映当時リアルタイムで見ていたんだけどとても面白い、と感じていたんだよなー。話の内容は抜きにすると、演出も面白い、モビルスーツ戦も迫力がある、作画もVガンしてはハイクオリティ、でぱっとみは「面白く感じて」しまうんだよ、なんか、見た目はグロテクスな深海魚みたいな素材を使ってとてもおいしい料理を出すって感じ?まぁ、こんなお仕事の仕方をしていたらそりゃ鬱になってしますのもむべなるかなって感じですね

ここで、話題をVガンが放映された92年から93年について振り返ってみる。この年はバブル景気が崩壊して戦後最悪の不況に突入した年だ。年配の人はリストラされ、若者は就職難にあえぐ、これまで信じていた世界が崩壊していった年だ。私はその当時、中学生だったのですが崩壊していく世界に対して大人たちがとても無力だったことを鮮明に覚えている。子供にとって大人は頼るべき存在じゃなくなることを、なにかTVのドラマで見ているような感覚、ふわふわしたような感じで、スローモーションを見ているような感覚で目の中に入ってきたような気持だったことを覚えているなー。Vガン、というのは当時のそういう気分を表したようなアニメで、ひたすら大人のというか男の情けなさと鬱展開がこれでもかというくらい続いていて・・・・。というか、よくこれ放映できなって感じ、今だとコンプラに引っかかって放映できないな・・・。

ちなみに、Vガンのこの話数に多大な影響を受けたのが庵野監督のエヴァといわれている。というか、エヴァはVガンから大きな影響を受けているし、庵野監督はVガン大好きだし、原画参加もしていたってことは今の若い人はわからないかもね・・・。だから初期のエヴァは結構気持ち悪い作りになっていて、自分は気持ち悪い作品が流行るよなーとか、同世代の代弁気取りしないでほしいとか思ったけど、まぁ、これも90年代初め~中旬ごろの病んだ世間を体現しているよね、とも言えなくない

ちなみにエヴァの最新作、シンエヴァは興行収入は100億円達成したらしい。私は作品の出来以前にエヴァは生理的に受け付けないので、作品自体は全く見てないけど

を見る限り、初期のVガン路線からジブリ路線に寄せたみたいですね。確かにVガン路線よりジブリ路線のほうが大衆受けするし興行収入を見込めし、今の時代にあっているともいえる(それが作品の出来に反映されるとは限らないけど)。この辺りは庵野監督は現実的、ともいえるけどそのあたりがエヴァの古参のファンの不評を買っていたりするんだろうなー

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