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大正散華物語

TRISTEZA
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「召集令状が来たんだ」
差し出された小さな赤い紙を見ながら、僕は耳を疑った。
この優男が、何時もと何ら変わらぬ穏やかな顔で言うものだから。
「・・・。」
「はは、随分と冷静なものだね。親友が兵役するんだよ?もう少し動揺してくれてもいいじゃあないか」
冷静なもんか。呆けるのも大概にしろと言わんばかりに
僕は心の中で彼を罵倒しながらも、頭の中は真っ白だった。
「僕は、大日本帝国の為に戦う事を、誇りに思うよ」
何が、何が誇りだ。
「なぁ、?そうだと思わないかい」
気付いてはいた。
彼の眼に、うっすら涙がたまっていたことを。
それでも彼は尚、にこやかに。
「そうだと、いってくれよ」
「・・・なんの取り得もない君の、人生最大の栄華になるかもしれないな」
「一応、褒め言葉としてとっておこうか」
ただ今は、そんな事しか言えず。

2008

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