コマンダンテのこと

あれだけ舞台に出ていたコマンダンテの、私は本当にほんのわずかしか見ていないので、何も言うことはできないのですが。

「シリーズ大宮セブン」の取材でインタビューしたときに、「ここまで話通じるのうれしいです」と安田さんが言ってくれて。
実際は大宮セブンを見ていたら当然知っているくらいのことなんですよ。でもこうやって周りの人たちの気持ちをゆるめて距離を縮めてらっしゃるんだなあ、と思いました。
私が雑談的に最寄駅を言ったら「◯◯コーヒーがあるとこですよね」と即座にカフェの名前を挙げた石井さんにはさすが! とうれしくなりました。

でもこういうのは、それぞれピンで活動することになってもきっと現れるお二人の魅力であって。

で、そんときにね、「劇場とかライブの状況って人事異動によって支配人が変わることで簡単に変わりますよね」という話になって(いま考えるとなんてニッチな質問なんだ)。
でも安田さんは幅広い世代の社員さんと仲いいから劇場の世代交代があっても強い、と。
「そこで誰が出るかって言ったら安田さんなんですよ」と説明した石井さんに「一緒にやろ?」と安田さんが笑って言ったんですよね。

それがいま思い出すとつらいです。
ずっとふたりの漫才があり続けると思っていたので。

たとえばなるべく1ステージももらすまい、と熱心に追っていた芸人さんが解散するのももちろんショックだけれども、コマンダンテに関してはもっと違った落ち込みがあります。

たぶん(とくに東京の)吉本のだれかのファンで、寄席まで見に行くようになったら、そこには必ずコマンダンテがいたはずです。
「空に星が綺麗」が流れて、ローなトーンで長身の二人が出てきて、ボソボソとしゃべるのに面白い。
東京吉本の中でも異端な、でも非吉本とはまた違った、だれにも似ていないあの独特の漫才。

そういえばコロナになって、コンビであってもアクリル板を挟んでいた時期、それを活かした漫才をすかさずやってるのを見て本当にこの人たちはすごいな、と思った記憶があります。
いろんなかたちの漫才を日々発明し続けてた。それをまるでなんでもないことのようにやるから、そのすごさを正当に認識できなかったくらいに、さらりとやってのけてた。

毎日たくさんのライブに出て、自分たち目当てじゃない人も笑わせてきた、あのかっこいい2人がサンパチマイクを挟んで並んでいるところはもう見られない。

彼らが私たちの気持ちに空けた穴は、つまり年間1000ステージ分の大きさであって、なかなか受け入れがたいのが正直なところですが。

そんなにもステージを重ねたからこそ、もうこれ以上は、となったのかもしれないし、本当のことはわからないけれど、もちろんおふたりの輝ける未来を祈っていますけど、いまはただただ喪失感を抱えています。



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