浦和 対 湘南 レビュー(パス分析を交えて)

polestarさんの呼びかけに思わず反応してしまい、パス分析、始めてみますw
皆さま初めまして、黒田泰孝って言います。

こんな記事を書いた事もあります。
ご覧になった事が無い様であれば、お目通しいただけるととても嬉しいです。
ちなみに、初レビューです。
ツイッターではボヤボヤ呟いていますが、ちゃんと形にするのは初めてなので指摘や感想頂ければとても喜びます。

さて、すでに浦和レッズはサンフレッチェ広島とのリーグ戦を終えて、0-4と粉砕されてしまった訳ですが、遅ればせながら例の問題になった湘南ベルマーレとの試合について触れてみたいと思います。
今、あえてこの試合に触れようと思ったその理由はざっくり3点、以下の通りとなります。

1.守備の基準の再設定が必要である事が明白であった事
2.
ACLを控えたタイミングでターンオーバーを敷いた事
3.相手が湘南だった事

開幕戦となった仙台戦では個人的には新戦力である杉本・山中・エヴェルトンの動きに関してとても期待の持てるものであったと思っていました。
山中は高いキック精度と想像以上の運動量を見せてくれました。
杉本は自分の出来る事をいかにチームに還元できるか、還元しようと様々なタスクをこなそうと自分の能力をしっかりと示す事が出来ていたと思います。
エヴェルトンに関してはその後の試合を見ても明白ですが、高いポテンシャルを感じさせる仕事ぶりで、能力を存分に発揮できた時にチームにどれ程のモノがもたらされるか期待感が高まったものです。

しかし、横浜FMと名古屋グランパスに粉砕されたことにより、改めてボールを握る事を志向するチームへの耐性の低さを露呈し、前線からのプレスが機能しなかった場合のリスクに対していささか消極的になっていったのではないか、と思っています。
それが傍目には「運動量」や「インテンシティ」という言葉で物足りなさを感じさせる原因だったのではないかと。

そして、そのインテンシティを担保する為に浦和レッズとして(最初からあったのかどうかは不明ですが)前線とDFラインの適切な距離感を見失っていた事による悪循環、というのは間違いなくあったのではと思っていて、その再設定のタイミングがどこに来るのか、という事に注目していました。
そこで、ACLのグループステージ突破がかかる試合に向けて主力を温存、そして運動量とインテンシティを半端にしてしまえばたちまち圧倒的な運動量に飲み込まれかねない湘南ベルマーレ戦というのはうってつけではないかと。
ここをうまく乗り切れれば、求められる強度というものを提示した上で仕切り直しを図れるのでは、と。

そこで、今回パス分析を含めて少しばかりこの試合を振り返ってみたいと思います。
対象選手は柴戸選手と長澤選手。
というのも、立ち上がりからハイテンションな展開が続いたこの試合ですが前線とDFライン、そして両サイドの攻防も勿論見所の一つでしたが、広いスペースでの攻防、または密集地でのボール奪取、そしてパスの展開を追っていく事でハイテンションな試合展開におけるキープレイヤーとしてどうだったのか、という部分に注目して書いていこうと思います。

また、今回パス分析フォーマット作成に当たり、レイヤーというエリア分けの考え方を適用しております。
(詳細についてはせんだいしろーさんの記事を参照ください)

両チームスターティングメンバ―

(参考:https://www.sofascore.com)
(多少の位置ずれはご容赦を・・・w)
浦和の基本配置は3-1-4-2、柴戸をアンカーに置いて柏木と長澤が両サイドやFW陣と流動的に動く配置。
湘南の初期配置は3-4-2-1、左右に大きなポジションチェンジは行いませんが激しい上下度とサイド同士である程度の流動性を見せます。

湘南戦における浦和レッズの狙い

立ち上がりから両者積極的に前線から果敢なプレスを行い、主導権を握ろうと鍔迫り合いを繰り広げていましたが、オープンな展開が続きます。
その中でオフェンス時の優先順位を想像してみると、こんな感じかな、と思います。

1.杉岡の裏を狙う
2.ダメなら前のスペースを狙う
3-1.湘南プレスが集まり、密集状態になった場合、空いたスペースを使う
3-2.ナバウトとマルティノスで前線の起点になる
4.押し込んだ状態では長澤、柴戸の優先順で前に出ていく
 (鈴木大輔の上りと合わせて前線でレーンを埋める)

翻って、守備時の優先順位はこんな感じかな、と思います。

1.押し込んだ時のネガトラ時、左サイドは萩原・鈴木大輔でレーンを埋めて、マルティノスのプレスバックと合わせて対応
2.右サイドは杉岡・梅崎の動きに注意しながら中盤に出来たスペースのケア
 (実際には杉岡には宇賀神がマッチアップ、柏木がDFへアタック、スペースのケアが柴戸)
3.陣形を整えた守備時、ロングボールに対しては鈴木・岩波が前進して対応、中盤ではマルティノス・ナバウトがコースを制限しながら可能であれば前プレ、中盤では萩原・長澤・柏木でフィルター形成
4.柴戸は選手へのアタックは長澤や柏木に任せて、中盤に出来たスペースのケアに注力

多分に不足しているとは思いますが、気になる所は指摘ください。

この中で、柴戸と長澤のタスクとしては長澤が左サイドから右ハーフスペース辺りまでのエリアを主戦場にしながら守備時はバイタルエリアまで下がり守備に参加、柴戸は中盤でのスペースのケア、可能であれば前線に顔を出す、というものでした。
次の項ではそのタスクの成否、そしてパスマップでどんな事が読み取れるかを考えてみます。

柴戸選手のパスマップ

今回、polestarさんから提供を受けた画像は上の3つ。レイヤーごのパス本数の矢印はパスを出した箇所と横幅でのつながりはなく、選手の配置も試合とは関係ありません。
大きい数字が試行回数、カッコ内は失敗した数となります。

柴戸選手のパスを出した場所は、ほぼ自陣中央を主として幅広いポジションでパスアクションを行っている事が分かります。
比較的右サイドの数字も多くなっているのは、浦和左サイドが密集するケースが多く、湘南が浦和右サイドへのスペースを狙って展開した場面に対して柴戸が積極的に対応している事が要因として挙げられると思います。
試合展開の中で柴戸選手がパスを出した距離自体はそれほど長くなく、守備のアタックやこぼれ球を確保、またはプレス回避の為にボールホルダーへ近づき、近くの選手、またはスペースへボールを散らすケースが多かったのですが、レイヤーを大きく飛ばすパスが少なく、第2→第3レイヤーへのパスが比較的多くなるに留まりました。
ここら辺は前線への大きな展開は長澤や阿部に任せていた部分が大きかったのでは、と想像しています。
ちなみに、柴戸がパスを出した回数が一番多かったのは長澤でした。(29本中9本)
中盤での守備時、長澤が柴戸のフォローにどれだけ動いていたか、が分かる数字だと思います。

長澤選手のパスマップ

長澤はパスアクションの回数こそ少ないですが、自陣PA前や相手陣内の右サイド深くでのパスアクションが比率として大きいことが分かります。
柴戸の項でも触れましたが、中盤より後ろで(または挟み込む形で)柴戸の守備のフォローに入るケースであったり、攻撃時にも柴戸からのパスを受けやすい位置取りを取っていたことから柴戸のポジション前後でのパスアクションが増えたものと思われます。
事実、長澤からのパスは阿部(3本)、マルティノス(3本)、ファブリシオ(4本)とはっきりと分かれています。
また、出場時間が少ないながらも長澤選手からのパスを2本受けていた山田直輝のスタッツを見るとマルティノスのタスクを引き継いでいる事が伺えます。

ハイテンションサッカーに柴戸と長澤は対応できたか

湘南戦を見る限りで言うと、柴戸と長澤のセットは非常に良かったのではないかと思います。
柴戸が積極的に動き、長澤は前でも仕事が出来る様に動き、かつ柴戸のフォローにも回り、と良い関係性を感じさせるスタッツが見られましたし、ハイテンションな展開の中で中盤での主導権を渡さなかった主要因はこの二人のお陰があってこそと思います。
こういうの、個人的には好みでしたが、気になる点がいくつか。
DAZNが出したスタッツで柴戸の走行距離が12.6km(スプリント20回)、萩原の走行距離が11.8km(スプリント30回)、後半途中で交代したマルティノスのスプリント回数が42回(走行距離9.2km)と非常に高い強度を要求するサッカーである事。
毎節でこの様なサッカーが可能かどうか、という所に不安はありますが現在の浦和レッズはラインを飛び越えて積極的な動きを要求するタスクが散見されますのでキッチリ成立させるには必然的に走行距離が増えるのは仕方のない事とも言えます。
メカニズムとしてより効率的な振る舞いを導入できるかどうか、という所も持続可能性という面で今後の注目にしたいと思います。

最後に

最後に、と言いますが少し試合展開について。

鈴木大輔が積極的に前線へ駆け上がっていたのは意外でした。
浦和へ加入する前のプレイスタイルについては知識がありませんでしたが、これが槙野が果たしていたタスクを引き継いだだけなのか、鈴木大輔も同様のタスクを好む選手なのかは気になります。
そして、ファブリシオのコンディションについて。
湘南戦はナバウトの不幸なケガによって突然の出場となりましたが(もしかしたら後半どこかで投入するプランだったのかもしれませんが)、ランのフォームがどことなく不安を感じるものがありました。
ニューカッスルの武藤選手の復帰後のフォームと似た雰囲気を感じたので、フィットしてくれば解消されるものと思いますが、まだ強度の高いアクションを避ける様な動きが見られるのではないかと思っています。
広島戦でも出場していたみたいなので、心臓に気を付けながら見返してみようかな、と思います。

これで本当に最後ですが、杉本・・・見たいなぁと思うのです。
出来る事が多い(はず)の選手なので、しっかり仕込んで使い倒せるようになればきっと浦和レッズに良いものをもたらしてくれるような気もするのですけどね・・・広島戦はベンチ外でしたし、とても気になる存在です。

次は、広島戦で浦和レッズがどの様な要因が重なって粉砕されるに至ったか、歯ぎしりしながら書けるように頑張ります。

ではでは。

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