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【近くて遠いカナリア色】グループG 第2節 ブラジルvsスイス【カタールW杯アーカイブ化計画】

サッカーを愛するみなさま、こんにちは。
ワールドカップアーカイブ化計画としてブラジルvsスイスを担当することになりましたくろだです。

第2節であるブラジルvsスイスですが、この試合を迎える前にどんな試合を見せていたのか、前段としてのお話も書いてみましたので一度目を通していただけるとこの記事の受け取り方も少しは変わるのかもしれないな、と思います。

スタメン

ブラジルはネイマールが負傷の影響でメンバー外。フレッジが入り、パケタが左のIHに入る事でおそらく前節でもやっていた相手ディフェンスラインに対して人数を合わせたアタックを狙っていきそうな雰囲気。
対してスイスはシャチリではなく右にリーダーが入る形。陣形の骨格としては前節と大きく変わりませんが、リーダーの振る舞いでどの局面で力を発揮したいのかが見えてくるかもしれません。

試合雑感

キックオフはスイスボールから。
早々にソウが一列上がり4枚でブラジルのディフェンスラインにつくところから。ブラジルは前節見せたサイドに追い込む形のプレスルートを選択するものの、ラフィーニャが中央へのパスルートを意識したポジショニングからのプレスだったことからバルガスへのパスルートを閉めきれず。ただ、これはエンボロへついていたマルキーニョスが対応しファイナルサードへの侵入は許さず。
返す刀でヴィニシウスが中央でボールを受けて前進を試みますがフロイラーがアタックし、リーダーが素早くプレスバックすることでファウル判定となったものの前進を阻むことに成功。
直後の2:30頃もリーダーはヴィドマーとヴィニシウスを挟むようにアタックしている事からサイドでの守備強度を担保することを期待されている様子がうかがえる。
前半4分ごろにはスイスのゴールキックに対してブラジルのビルドアップ阻害を見る事が出来ましたが、後ろから繋ごうという志向を見せるスイスに対して前節と同じようなプレスルートでロングキックを強いる事に成功していた。

前節でも同様でしたが、リシャルリソンがターゲットのボールアングルに応じてパスコースを切れるタイミングでコースを取ることでハフィーニャもサイドへのアタックがしやすく、ターゲットが開いた局面で詰まらせることが出来ていたように見えた。
リシャルリソンのプレスルートに対してはスイスも果敢にチャレンジしており、リシャルリソンのコース取りを先回りできるような配球を意識していた。13:40にはスイスがビルドアップをやり直した場面でリシャルリソンが絞った2CBの間に入る形で阻害を狙ったもののゾマーへのバックパス→ロドリゲスへ即配球という形でビルドアップ時に大きなスペースを得ることに成功。ロドリゲスに対して並行の位置で待っていたジャカがボールを受けて斜め後ろのアカンジへ受け渡した段階でブラジルの陣形の中央にパスルートを生むことに成功。ブラジルの中央守備陣に阻まれはしたが、配置をずらしてパスルートを創出、バイタルエリアへの配球、という一連を狙い続ける志向を切らさない事で戦う姿勢を見せた。

ビルドアップ時の前進の例

スイスはこのプレーが出たあたりからビルドアップ時、リシャルリソンにファーストプレスの基準を絞らせない事で前進のルートを確保。ブラジルの陣形を伸ばしてスペースを確保しながら崩しの局面を迎えようとするものの、一手が間に合わない、という状況が続きます。
特に、チアゴ・シウバに楔のパスを受ける選手(主にエンボロ)をことごとく迎撃されたことでスイスはファイナルサードでの余裕を得る事が出来なかった。
スイスにはもう一つ惜しい局面があったが、一度ボールを前進させてからやり直した場面でミドルサードでジャカが2CBのところまで下りてプレスの基準点をずらした場面。スイスとしては、前線の基準点をずらしさえすれば一定の確度で前進できる状況を上手く利用したいところ。

スイスのプレスの基準点を絞らせない前進

返してブラジルの方はビルドアップ局面では特に枚数を合わせてはこないスイスに対してフレッジやパケタがライン間に顔を出すことでボールを引き出しながらスイスの4-2-3-1の配置の隙間を縫っていく。最終目的地はたいていの場合はパケタが起点になってのヴィニシウスになるが、スイスの陣形が崩れていない局面では深くまで侵入できず。パケタがライン間に顔を出す一方フレッジが最終ラインを押し下げる動きを見せるようになった局面ではカゼミーロまでがスイスのブロック前まで顔を出してミドルシュートを打つなど、選手個々での工夫はあるものの局地的であった。一瞬だけパケタがセルビア戦のネイマールのように相手守備ブロックの外側でボールを受け、つっかけながら陣形に影響を与えようと意図したらしきプレーがあったが、これもヴィニシウスを覗けてすぐにパスを出して合わないなど相手を見ているのか味方を見ているのか分からなくなるプレーがあったりとゲームメイクに難儀しそうな予感がするシーンとなってしまった。
そんなこんなで、スイスはブラジルのプレスの基準点をずらせば前進できて、ブラジルはパケタ含めて左サイドを崩そうと画策するもスイスのブロックが余計な動きを見せないことから活路があるとすれば、押し込んでからのプラスワン、もしくはカウンターの局面か、という雰囲気を残して前半終了。

後半に入るとブラジルはパケタ⇆ロドリゴと交代策を打ってくる。ロドリゴはビルドアップ局面でパケタよりも幅広いエリアを移動しながら出口となったりドリブルでスイス陣形を切り開き始める。その前段として眺めの距離であってもヴィニシウスにダイレクトに配球するなど攻めの姿勢を強めていく。特に、ロドリゴが後半11分直前に見せたターンなどはネイマールの代わりとなれるインサイドの狭いスペースで仕事を出来る存在を求めてのモノだったのかもしれない、と想像させるに十分なムーヴだったように思う。

対してスイスもブラジルのプレスの基準点をずらしながらボールの前進を試みる動きは変わりなく、ゴールキックの初手にアカンジに渡すなど前半とは少し違う姿を見せ始める。

後半13分にはブラジルがフレッジ⇆ギマランイス、スイスがバルガス⇆フェルナンデス、リーダー⇆シュテフェンと交代し、ブラジルは中盤の圧力を、スイスは両翼の活動量を維持しようと働きかけますが、その後はロドリゴがスイス陣形を切り裂くことがあるものの、最後のところは割らせず、ブラジルもスイスのボールの前進に対してディフェンス陣が堅く鍵を閉める形で双方ともに決定打は見いだせない瞬間が続きます。

後半28分にブラジルはリシャルリソン⇆ジェズス、ラフィーニャ⇆アントニーと交代し、どうにか前への圧力を高めようと画策しますが、ここにきてロドリゴが動きすぎる事によって圧力を高める意図も力押し以上の雰囲気は見いだせない状況に。

スイスは後半30分にエンボロ⇆セフェロビッチ、ソウ⇆アエビシェールと前線での活動量が落ちてきた二人を交代し、攻めの姿勢を維持します。
徐々にお互いの意図がかみ合いだしてピッチにスペースが出来始めた事でブラジルのボール回しが意図せずともスペースを得ながら動くことが出来るようになり、スイスにとって苦しい時間が続くことになります。
そうして、ブラジルの猛攻が実ったのが後半38分、これまで徹底的に配球していたヴィニシウスからハーフスペースで待ち構えていたロドリゴへのパス、そこにプラスワンとして入り込んだカゼミーロがスーパーボレーで念願の先制点を迎えました。

失点後も、スイスは諦めることなく攻めの姿勢を強めますが丁寧にプレスを剥がしてよりよい前進を見せるだけの余裕はすでになく、加速するタイミングが早すぎる事から大きなチャンスを迎えることなく試合終了の笛を聞くことになってしまいました。

まとめ

ふたを開けてみれば、ネイマールの不在をどのように解消するか、という小さくない命題にチャレンジをしつつ堅いスイス守備陣を攻略するか、というミッションに取り組むことになったブラジルは一定の成果を得たもののチーム内の共通理解として共有できたかどうかはイマイチ微妙なところかもしれない、という結果になった。
むしろ、footballistaの山口遼くんの記事でも触れられていたが、今のブラジル代表にネイマールほどインサイドで影響力を発揮できるプレイヤーはいないのだろう、という事がスイス戦で露わになった格好だ。

決勝点をアシストしたロドリゴが所属のレアルマドリッドでゼロトップらしきものをやっている、という話は耳にしたことがあるが、今節での振る舞いを見ているとどの局面で力を発揮すべきか、という部分はまだまだ調整の余地がある部分なんだろうと思わされる。
パケタに関しても同様で、ポジショニングに関してはロドリゴほど放漫ではないものの、いざボールを持った際に要求される仕事からすると全部を背負うにはネイマールが果たしている仕事は過大だったのかもしれない。
今後、ネイマールが戻るにせよ戻るタイミングが遅くなるにせよ、戻るまでにどのような解を得るかで今回のワールドカップのみならず、次回以降のブラジル代表の指針が決まってくるであろう大きなトピックである。

スイス代表に関しては、ボール保持における安定感はもちろんの事プレスをかけられた際の調整に関して非常に見どころがあった試合だったと思う。
試合をリアルタイムで視聴している時は知らなかったが、オカフォーがこの試合に出場できる状況だったら後半に見れた景色は少し変わったものだったのかもしれない、と思う程度にはブラジルに対して勝利が近づいていたように思える。しかし、それでも最後の牙城を崩すには何かがもう一枚足りないのかもしれないという思いを抱える試合でもあった。
それも、チアゴ・シルバが鎮座するディフェンスラインの強度の問題がある。基本的に中央をケアされている状態で中盤をスライドさせてもディフェンスラインがほぼ動かず、場合によってはラフィーニャがディフェンスラインの高さまで下りて守備をすることからハーランドやレヴァンドフスキのようなディフェンスとの駆け引きやアタックを駆使して「意識させる」フォワードが必要な場面で枚数も影響力の度合いも足りない状況を作り出されてしまう。
スイスからすれば、惜しい場面があったものの、まだまだ厚い皮を感じた試合だったのではないだろうか。

試合結果

カタールワールドカップ グループステージ グループG
ブラジルvsスイス(FT 1-0)
BRA:83' カゼミーロ

スタジアム974(ラス・アブー・アブード)

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