【ドラゴンクエスト YOUR STORY雑感 ネタバレ有〼追記アリ〼】

はじめに

 さて、公開後賛否両論入り乱れ、なかなかに熱い状況にある「映画ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」ですが、見てきました。

 自分はネタバレなど気にしない質なので、そこまで憎悪渦巻く感想が出るには何かあるだろう、と思いながら、観測できる範囲で感想記事も目を通しました。

 読んでいて「あぁ、そういう事ね」ってなったんですよね。

 2年前に、とあるゲーム作品でも同じ様に賛否両論入り乱れていましたが・・・アレな、アレ。
 その時も結構な言われようだったのを思い出しました。
 やれ、クリエイターの偉そうな説教を食らった気分上から目線で何様だ?今まで作品を愛していた気持ちが裏切られた・・・などなどなどなど。
 なんか、ドラゴンクエストと反応が似てるぞ・・・?

 んでもな、うるせぇ、上から目線って制作者様だろうがよ!?って一言で終わりですよ。堀井雄二さんも絶賛だったろうが、馬鹿野郎、ですよ。
 愛していた気持ちが裏切られたって、公式が解釈違いだって?

 公式が神様だFxxkin' Godだ馬鹿野郎!!

 とりあえず、落ち着いて制作者インタビュー読もうぜ。

 山崎監督はインタビュー内でも「副読本のようにならず、ゲームというメディアと戦える方法はないだろうか」と語っています。
 八木監督も花房監督も、ゲーム内のシナリオの取捨選択は非常に悩んだ事を告白しています。
 これを踏まえた上で、自分はこの作品を肯定します。

 決して、公式が神様なんだから従うべきと言うつもりはありません。
 むしろ、神様が悪神であれ善神であれ、公式が出したモノを最大限に尊重して受け止めるべき、という部分を外してしまったら、受け止める事を諦めてしまったら、昔ドラクエで感じた感情をどう処理したら良いの?と思うからです。
 映画内の演出、ドット絵だったり、ファミコン風の文字だったりに「それ、この映画でやる必要ある?」って思う人の感想を割と目にしたの、逆にビックリしたんですけど、これって単純な3D映画、新しいドラクエ映画だよってフックだけでこの映画を捉えて欲しくないというメッセージと受け取りました。
 ドラクエVに対しての懐古をくすぐるのに、とても良い演出だったと思うのですよ。
 まぁ、それもこれも・・・

(以下、強めにネタバレに踏み込みますので、未見の方でネタバレ死すべしな方は回れ右推奨です)



























【ネタバレ込み】大肯定だ馬鹿野郎!!

 まぁ、それもこれもラストの演出で観客の感情をグワングワンに振り回す為だって、最後になって気付いたんですけどね。

 確かに、ドラクエⅤの物語の筋を追っていくのに駆け足でした。
 どちらと結婚するか決めるシーンは堀井雄二さんの要望もあり、分厚く作られていました。なんなら、原作に無い演出も挟まれて。
 ヘンリーの扱いが割と軽めになっている事も残念ではあります。
 フローラの恋慕、ビアンカとの関係性の蓄積の演出も薄いです。
 シナリオも原作と比較して改編があった事も確かです。
 それでも、その端折り方が自分としては心地よく、「あぁ、ここはこんなだったよな」「あそこであのシーンあったよな?」「あれ?ここどうだったっけ?」と色々と思い出しながら観る事が出来たんですよね。
 ファミコン風のドット演出も、その思い出を思い出す為の呼び水だったと思うんです。
 オーブのすり替えの時のシーンなんか、原作で「あぁっ!!」となった衝撃を追体験して、ニヤニヤして、パパスを見て幼少期の頃の自分とやり取りした内容なんてブワってなりました。
 家庭を持ったからこそなのかもしれませんが、自分が親に対して持っている感情と、自分の子供に対する感情、その両方をタイムリーに共感できる形で提示される事で映画への感情移入の度合いは跳ね上がりました。
 当時の自分を思い出しながら、今の自分とも共鳴して、当時のドラクエVへの想いを最大限に再現しながら、最後のメタ展開。
 こんな感情のジェットコースターある!?
 なかなか無いでしょ!!
  
 まぁ、このメタ展開がヘイトを呼んで、アラとも言えないアラも、その感情で増幅されて貶される要因にもなった事は理解できます。
 冒頭にお話しした、とあるゲーム(公式の方針により名前は出しませんが)も、そのゲームを愛する人たちに、最後に大きな試練を突きつけました。
 それこそ、今回のユア・ストーリーと同じ様な。
 ゲームを否定する存在に対して、果たして自分たちがどの様なスタンスを取るのか、取るべきなのか、取ろうとするのか。
 自分のゲームに対する思いを無理やり引き出される様な。

 それを、踏み絵と呼ぶ人もいるでしょう。

 一時的にでも思いを否定される様な描写を突きつけられ、それを上から目線の説教と呼ぶ人もいるでしょう。

 その説教()の果てに提示された、劇中の主人公が選択した答えに向かって、これで良いんだ、と無用な誘導を受けたと感じた人もいるでしょう。

 コンテンツに対する楽しみ方は俺が決めるんだ、勝手な事をするな、と憤る人もいるでしょう。

 でもですよ?
 でもでもですよ?
 その提示の果てに観た人の心の中には人それぞれ、様々な感情、思い出、そのコンテンツの何が好きで、何を心に残す事になって、何を得たのか。
 その色々が思いっきりブワッと出てきませんでしたか?
 その感情を否定する事は出来ますか?
 その感情を否定する様な結末でしたか?

 違うでしょう!!?

 プレイヤーそれぞれの物語、「Your Story」を公式が否定するような幕引きではなかったでしょう。
 ドラクエⅤという物語を愛する人に向けて作られた映画ですよ、これは。

 これは、ドラクエⅤという作品を違うアプローチで味わい尽くす為の映画では無いです。
 コンテンツを「消費する」という行為を目的としたならば、この映画をお勧めする事は出来ないでしょう。
 ドラクエⅤに心動かされ、良い思い出を胸に刻まれた人が、コンテンツの形態を変えた、新しい「ドラクエⅤ」に新しい感動を上書きして貰う事を求めてこの映画を観に行ったとしたらガッカリするでしょう。

 幸い、プロモーションを一切見ていなかったのでこの映画に対しては「へぇ、ドラクエⅤやるんだ・・・FFⅦみたいにコンテンツ量産するつもりなのかな」くらいにしか見ていませんでしたが、そうではなかった。
 公式が(というか堀井雄二さんが)、自身のこれからを指して「このコンテンツを浪費する事はない」と宣言したのだと思っています。

 この映画を指して「感動の押し売り」や「これが欲しいんだろ?」くらいの見方しかできないとしたら、これほど悲しい事は無いです。
 だって、彼らは僕らのドラクエⅤの経験の原風景に対して否定する事は無かったからです。
 自身の感動体験に自負を持っている人たちが、この映画を否定する事によって結果として自身の感動体験を否定する事になるからです。
 コンテンツの形をなぞるだけなら、アプリでもソフトでも、いくらでもドラクエⅤをプレイする事は出来ます。
 そうじゃない体験を、それこそ山崎監督が語った「副読本のようにならず、ゲームというメディアと戦える方法はないだろうか」という言葉が体現されたような体験を、この映画が提供してくれている事は間違いが無いのですから。

 コンテンツを消費して、爽やかだった!!満足!!で終わらせるには勿体ないです。
 この映画を経て、思い出した、改めて気が付いた感動、コンテンツへの愛に対してどう向き合うか、そこまで考えてこその「Your Story」だと思います。
 ここで目を背けてしまったら、あなたのこのコンテンツでの物語は終わってしまうのです。
 それは・・・本当に、悲しい事です。
 映画は、ゲームじゃないんですから。
 インタビュー記事でも書かれている内容をちゃんと咀嚼すれば、ゲームというコンテンツを映像化する事、主人公に言葉を与えて人格を外部から付与する事のリスクは十分理解している事は分かるはずです。
 願わくば、ドラクエⅤにおける色々な人の物語が少しでも終わらない事を祈ります。

【追記】ロトの剣のこと

 そういえば、最後のロトの剣のところ、なんでロトの剣だったんだろうなぁ、って少し考えてみたんですよ。

 最後の局面、ミルドラースに擬態したウイルスがドラクエ世界を解体していきます。
 「もう少し軽くするか」とか言いながら、それまで没入していた世界が色を失い、テクスチャを失い、悉く最小単位のキューブとして霧散していきます。
 そんな中、ずっと見守る様に寄り添っていたスライム、スラりんが防衛プログラム(cv.山寺宏一)として主人公を守ります。
 そしてロトの剣を主人公に託すのです。

 ロトの剣と言えば、ドラクエの始まりの象徴、天空シリーズとは全く違う世界線のアイテムです。
 おそらく、この局面まで来て精神的にグワングワンやられた観客からしたら「はぁ!?」ってなったんだろう事は容易に想像がつきます。

 でも、冷静になって考えてみてください。

 ドラゴンクエストシリーズの象徴として輝き続けているロトの紋章ですが・・・
 ドラゴンクエストの象徴として語られるモノが他にもあるではないですか。
 ・・・そう、堀井雄二さんです。

 ちょっと、これは考え過ぎだろう、とも思うのですが、ロトの剣をドラクエ世界を崩壊させていく存在を打ち倒す為のアイテムとして堀井雄二さんのメタファーとして配置していたとしたら・・・?

 まぁ、ちょっと与太話な感じが強いので、文字通り与太話として流して頂いた方が無難かな、とは思いますが(笑)

 これ大いに支持するとしたら、どれだけスクエニのイメージ悪いんだよ、って話ですが・・・・・・まぁ、悪いわなww


【以下、映画を観てええぞ、ええぞ、と思った事羅列】

(すでに蛇足感が半端ないですが・・・)

・ヒロイン候補、2人とも可愛く造形されてて、ええぞ!と思った。
・吉田鋼太郎さんが、とても吉田鋼太郎さんだった。演劇での発声を見ている人からすると、とても良い、となったんじゃないでしょうか。
・安田顕さんも、とても安田顕さんでしたw造形は無天老師でしたけど。
・BGMの使い方、そんな変な感じはしなかったんだよな。天空の剣を抜くシーンは、ちゃうやろ、とは思ったけど。
・しかし、俳優さんが声優としてキャスティングされるケースが増えたけど、ここ最近、著しく技術が上がったような気もするのよね。誰かコーチングしてる?それともレコーディングの技術が上がっただけ?
・良く見てもらえれば分かると思うんですが、仕草とか凄い練られていますよ。3Dモデルに入った時、表情がとても良い、と思ったんですよね。それで懸念のほとんどは消し飛んじゃってました。
・デボラなんておらんかったんや。
・フローラが波留さんが声を当てている事を知った時は、フローラでええやん・・・!!って思ったんだけど、ビアンカの顔が出てきた時に「あぁ、やっぱりこっちだよね!!」って一瞬で「じぶん の ほんしん」が出てきちゃって、なんだかなぁ、もう、って感じでしたwww
・吉田鋼太郎さんは本当に吉田鋼太郎さんだったんだけど、同時にこれ以上ないくらいにゲマでした。
・あと、ゲームの初期設定の時に出ていた追加プログラムの他に「ついかキャラクター」って表記があったのは見逃しませんでした。これこそ、スラりんだった、という事でよろしいか?

(思い出し次第、追記していきます)

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