今日あったことをただ綴る。

今日は真冬に戻ったかのような寒さで、今朝早くからの雨は、いつの間にか霙に変わっていた。

寒い日はラーメン、そば、うどん、熱々のスープものを出しているお店はどこもいっぱいになるんだよ、と誰かが言っていたのを思い出す。

暦の上では春、だけど、しばらくは晩冬という言葉がふさわしい、寒い日がつづくのだろうし、それはお店にとってはいいことなのかもしれないな、などという考えが頭の中に浮かぶ。

何かがよければ、何かが悪くなる、
あっちが都合よく行けば、こっちは停滞ぎみ、
大抵の場合、そういう風に物事は成り立っている。

そう思えば、よいこともそうでないことも、前向きに捉えることができるわけなのだけど、

実際にそういうふうになっているのか、それとも脳の働きがそういうふうに認識させているのか、本当のところはわからない。

霙はまだ絶え間なく降り続けていたけれど、勢いはそれほどでなく、天気予報どおりにそのうち止むのだろうと思われた。

お店について、自転車の鍵を外し、いつものように鍵をリュックのポケットに放りこみ、店に入る。

厨房の掃き掃除をして、消毒した台拭きやまな板を洗い、お米を計量して研ぎ、鉄鍋にあける。寸胴鍋にはにんにく、玉ねぎ、油。
材料を入れた鍋を次々火にかけていく。
こっちは弱火、こっちは沸くまで強火、これは中弱火のまま炊くと決めている。

熱した鍋のなかで、油の膜を纏った玉ねぎが、じりじり音を立てながら透き通っていくさまを眺めながら、木べらでそれらをやさしく混ぜあわす。

頃合いを見て、ホールトマトを注ぎ入れると、鍋がおおきく じゅわっと声をあげる。

水蒸気と油の粒がぶわりと舞いあがり、ダクトに吸い込まれていく。

同じような順番で、同じように、それぞれの作業を並行して行う、というのが毎日の儀式だ。

違う順番でも良いし、やり方を変えてみてもいいのだけど、いまの設定は、ものを置く場所をふくめ
つぎ、それらを更新するタイミングまでは守るようにする。

手順をひとつ忘れてしまったり、ものがどこにあるか分からなくなったり、次に控えている作業の順番にも影響したりするからだ。

「これはあとでやろう」というやつが、「しまった、忘れてた!」となる、そういうことはよくある話だし、
そしてまた、そういうことをする人間は、性懲りもなく何度でもうっかりを繰り返す。

自分はそういう種族だと知っているから、仕事に関してはなるべく儀式を設定するようにしていた。

10時半にはこれをすませて、11時にはこのスイッチを入れて、11時20分にはオープンに備える(ギリギリのこともあるけど)。

そうしていつも通り、スタートを迎えるのである。

ランチタイムは予想を越えて忙しかった。

空席を待つには凍えそうな外の空気だったから、待つ人もいたけれど、待つ人がいるのを見て足早に通り過ぎる人の方が多かった。

にもかかわらず、席が空けば次のお客さんたちがドアから顔を覗かせる、ということが延々と続いて、席を片付けたり、料理を用意して席に届けるのが間に合わなくなるタイミングもあった。

天気の力はすごい。

寒いとあったかいものが欲しくなる。
暑いと冷たいものが欲しくなる。

これはどんな販促にも敵わない力だ。

そんなことをちらりと考えながら、オーダーを受け、ひたすら料理を仕上げて、皿を洗った。

ランチタイムを終え、一息つく。

隊長は目の前で、山盛りのどんぶり飯を口に運んでいる。するすると胃の中にはいっていき、どんぶりのなかのごはんはあっという間に消えていく。

「おかわり」

本気!? と、いつも思う。
この人の胃袋はいつまでも若さに溢れている。
たぶん、胃もたれっていう言葉を知らないと思う(聞いたことないし)。

さて、八百屋さんに行かなくちゃ。

リュックのポケットを探る。

自転車の鍵が... ない。

ない?

ファスナーを大きく空けて、上から下まで探ってみる。指に思い当たるような触感が得られない。

はいっているものを取り出して、奥を覗き込む。

やっぱりない。

「ない」

口に出してみたけども、鍵が出てくるわけがなかった。

自転車の鍵をかけて、ポケットにいれる、
そこから儀式は始まっている(はず)。
だから、そこに鍵はあるはずなんだ。
それが、ないってどういうことだ。

朝の行動を、流れとともに思い出してみるけれど、鍵を取り出したり、移動したりということは思い当たらなかった。

「どうした?」と、休憩していた隊長が現れる。
事の顛末を話すと、探すのを手伝ってくれた。

隊長は私と逆で、うっかり、ということがほぼない。決まったことを決まった手順で抜けがなくやり続ける、やり通す、ということが当たり前にできる人種である。

昔からそうなのかどうなのかは知らないけど、少なくとも、一緒に働き始めた10年前からそうだった。

だから、なにか見当たらないものがあったとしても、「ここかここにあるはずだ」と言ってその辺りを探れば、かならず出てきた。

だけど、今回は私がなくしたものを探しているわけで、それは私の行動が起こしたことなのだから、分かるわけないよな、と思った。

とりあえず、八百屋さんに行くことにした。

行き詰まったらいったん忘れよう、という感じ。
頭をまっさらにして、もう一度最初から考えてみよう。それで思いつくかどうかは定かでなかったけど、このまま考えてたって仕方ない。
やらなきゃいけないことを先に済ませてからまた考えよう。

問題を先送りしているだけだと知っていたけど、そうするしか思いつかず。

八百屋さんから帰ってきて、野菜を片付けていると、隊長が興奮ぎみにやってきた。

「鍵、あったよ!」

えっ?

「自転車のカゴに落ちてた」

どうやら、自転車のカゴにいったんリュックを預けて、そのときにポケットに入れたつもりがちゃんと入っていなかったらしく、カゴに落ちてそのままだったのらしい。

「ここかなと思って」

この人はすごい、と思った。他人の行動から推理して、なくし物を見つける とは。
いや、自分の行動から推理できない自分がダメなのか?
わからなくなったので、考えるのをやめた。

以上が今日起こったお話。

特に、オチはない。笑

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お店のこと

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