不確かな波に乗る、みたいな話。

お店が忙しいときの私の仕事って、交通整理みたいなものだ。
優先順位をつけて、あちらを先に通してそちらを次に、終わったらこちら。

満席、お会計する人が立ち上がり、入り口から新規のお客さんが「席あります?」とやってくる、オーダーがまだの人が手を上げて呼んだ、「すみませーん、水ください」と声がかかる、まだとりかかってないオーダーがある。電話が鳴り始めた....

新規のお客さんに声をかけて外で待っていてもらう、そのままお会計をして、入っているオーダーに着手する、
オーダーを受けに行って、その行くすがら水を注ぎ、バッシングしてお客さんを迎えにいく。
電話は手が空いたら出るし、切れたらごめんって感じだ。

待つならと帰っちゃう人もいるけど、まあそれは仕方ない。
知りあいが来ても、話すことはほとんどない。

それよりもっと忙しいときは、
合間に洗い物や片付けが差し込まれるからより複雑でそれどころじゃーない。

優先順位のつけ方は経験年数というより、そのお店のありかた、立ち位置によって変わる。
ゆっくり時間をかけて飲み食いするお店ならお会計を後に回して違うことをするはずだし、ホールを待たせても電話に出るかもしれない。

自分のなかでは順位が決まっているので、動くのにあんまり迷うことがない。

だけどそれは、私が決めて私が動いているから成り立つことで....
これが人に動いてもらうとか複数人でやる仕事だとしたら、そううまくはいかない。
うまく意思疎通できるできないという前に、
私はこう思う、なんでこうなの、そうしたくない、そうするけど不満が溜まる。
不満がたまるとオペレーションに不具合が出る。そうするとお店がうまく動かない。

なんだかんだ言って、最終的には人間関係がものをいうんだよなぁ。

ずーっと同じメンバーで、長時間、毎日毎日。そりゃあ健全な空気を保つことは難しいだろう、と思うでしょう。それは飲食業じゃなくたっておんなしだ...

誰かと共同で立ち上げて、1年しないうちに仲違いしてどちらかがやめる、あるいは分割する、または、お店がなくなる。
開業するずっと前からたくさん聞いていて、いまでもちらほら聞く話。

(もうすぐ8年経つうちの店だって、ほんとーにいろんなことがあった。
来月からラーメンはメニューから消える、そういうことは実際ありえたし、ひとりで営業することも何度となく頭の中でシュミレートした。

「何年前の話してるのよー」と、某氏は言うけど....)

人間関係っていうものほど不確かで頼りないものはない。スタッフと関係も、お客さんとの関係も、ご近所さんや、友人知人。
お店を安定したかたちで続けていくには確かな足場を見つけて、作って、それを踏んでいくしかないのに、確かなものだけで固めることはできない。
まーそれがおもしろいとこなんだろう。

自分の力の及ばない、不確かな波にのる。っていうとこが。


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