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「第2回農業DX共創会」参加人数90人!盛り上がる現場をレポート

今年度「愛媛県デジタル実装加速化プロジェクト」の重要なキーワードとなっている「共創会」。「共創会」とは、各産業のモデル事業者がそれぞれのプロジェクトで得たデータをもとに勉強会を行い、地域に定着した持続可能な有償サービス提供のために、徹底したユーザー目線(生産者/利用者)でのデータ活用とプロダクト改善、横展開を行うことを目的としている。

10月19日(木)、愛媛大学農学部にて「第2回農業DX共創会」が実施された。
この日、初めて一般大衆も参加できる「オープンデイ」として、現地参加55名、オンライン参加35名、計90名もの参加者が集まった。

共創会開会にあたり、愛媛大学理事副学長・愛媛大学社会連携推進機構長である若林 良和氏が挨拶。

愛媛大学理事副学長 愛媛大学社会連携推進機構長・若林 良和(わかばやし よしかず)氏

各事業者のデジタル技術を活用し、これまで生産者が経験や感覚で行っていたものを数値(データ)で表すという「暗黙知の形式化」をすることで、作業効率をあげるだけではなく、この共創会の場で数値をもとに異業種間交流を行うことで、新たな産業創出の可能性も期待できる。

愛媛県をはじめ地方では、産業の規模や地域の特性などにより、十分なデジタル化ができていない。そのことが地方の衰退を相対的に加速化する可能性があると考えている。
今回のデジタル実装加速化プロジェクト、そして共創会が、地域の課題を解決するための、大きな原動力になると考える。

とのお話があった。

新規事業者も参画!共創会メンバー9事業者を紹介

第2回共創会に参加したのは、農業分野で実装を進める採択事業者の中から9事業者。それぞれの代表が登壇し、事業内容についてプレゼンを行った。各事業者が実装している内容は以下の通り。

【1】株式会社アクト・ノード
真穴エリアを中心に、名人と呼ばれる生産者の栽培ノウハウを、一次産業のデータを活用できるクラウドアプリ「アクト・アップ」を用いてデジタルデータ化し、持続的に進化する真穴栽培モデルを実現させる。

【2】PLANT DATA株式会社
光合成蒸散リアルタイムモニタリングや画像診断をすすめ、ウェブアプリを使い生産現場のデータを見える化し、ノウハウの暗黙知化、新規参入のハードルの高止まりなどを解決する。昨年度は西予市の高糖度トマトの生産現場で実装。今年度は伊方町の柑橘や西条市のイチゴの生産現場に対象を広げ実装中。

【3】有人宇宙システム株式会社
愛媛のブランド米「ひめの凜」を中心に、県内優良農家の経験や栽培方法を、宇宙技術(地球観測衛星)を用いた生育監視ツール「リモファーム」を用いて見える化。今年度は中山間で大きな課題となる圃場の水管理の課題解決のため、自動水管理システムloT機器を導入。愛媛モデルを構築し、県内全域で安定した高品質の作物収穫を実現することでトップブランド化し、全国展開を狙う。

【4】テラスマイル株式会社
農業経営に関するデータを統合・可視化することができる「RightARM(ライトアーム)」を自社開発。さらに、伴走支援を通じ、最適な栽培計画策定と予実管理を行うことで、データ駆動型農業の実装により持続的で高収益な農業経営を実現する。

【5】サグリ株式会社
これまで人が目視で行っていた農地調査と、紙で管理していた農地データを、衛星データとAIを活用した「アクタバ」を使いデジタル化することで、耕作放棄地の早期発見と、何の作物が育っているかの判定を行い業務効率化。今年度は、この判別技術を活かし、農地を借りたい担い手・新規就農者と、農地を貸したい人を繋げる農地マッチングサービスを西条市にて展開する。AIによる衛生解析から土壌分析を行い、肥料削減・脱炭素への取り組みにもチャレンジ。

【6】株式会社セラク
地上部の環境や土壌水分を計測し、灌水のタイミングなど栽培に適した行動をAIが提案する環境モニタリングシステムで生産管理を行う。今年度は主に、伊予美人(サトイモ)とイチゴを対象として、収量向上を図る。取得データは、県内のサトイモ生産者及びJAみらい・周桑・おちいまばり等との勉強会を行い、データ活用によって収穫量増にチャレンジする農家を支援する。

【7】株式会社インターネットイニシアティブ
真穴エリアを舞台に、低コストかつ長距離通信が可能な無線通信技術(LPWA)のひとつ、「LoRaWAN®(ローラワン)」をネットワークインフラとして、土壌水分センサーを100本設置。センサーで得たデータは、株式会社アクト・ノードが提供する「アクト・アップ」にて可視化。これまで経験と勘にもとづいて行っていた灌水を、土壌水分データをもとに適切なタイミングで行うことで品質を保ちつつ収量増、隔年結果による減産リスクを回避することを目指す。

【8】ユナイテッドシルク株式会社
農業の川上から川下までのバリューチェーンを見える化するために、食品トレーサビリティシステムを構築。偽装表示、違法香料、無登録農薬など事故やフードロスをなくし、生産現場から消費者の手に行き届くまでの過程を透明化する。
 
【9】株式会社Furahi
農業サプライチェーンの事務部門において、IT利活用が急務となっている現実に対し、西予市の6次化農業法人を中心に、その周辺の多様な1次産業従事者を巻き込んだIT活用・データ化・業務改善を行う。安価で簡易、実装検証後も関係者全体が納得感をもって活用し続けられるソリューションの見極めと、関係者展開における課題洗い出しおよび解決策の定型化を目指す。
 
各プロジェクトで得られたデータをもとに、共創会を通して大学や専門機関と意見交換し、検討・拡大していく。

よりよい共創会にするためのディスカッション

これから共創会をよりよい場にするために、ユーザー(生産者)発信型の意見交換会を実施するなど、今後の展開について軸に、ディスカッションされた。生産者からは「生産者同士意見を交換することも重要だと思うので、ぜひそのような交換会の場があれば積極的に参加したい」との前向きな回答も。

コミュニケーションを円滑にとるための工夫についても意見が出され、ある事業者からは「ベテラン生産者と若手生産者を交えた場合、若手が発言しにくいのでは?」という課題に関して、「以前はベテラン生産者の技術が優れているため、若手生産者が委縮してしまい発言できないという場面が見受けられたが、デジタル・ITという点においては若手生産者の方が知識豊富で、事業を進める中でパワーバランスがとれてきた」との話も。たとえば、デジタル技術を使うためのITリテラシーをサポートする人、そしてデジタル技術を使って農業を発展させる人、というように役割分担をしてみるの良いかもしれない、というところまで広がった。

共創会メンバーの集合写真

参加者たちによって活発に意見交換が行われたこの日の共創会。
終了後、共創会のコーディネーターを務める愛媛大学 大学院農学研究科の髙山弘太郎教授にお話を伺った。

共創会のコーディネーターを務める髙山教授にインタビュー

愛媛大学 大学院農学研究科 髙山弘太郎(たかやまこうたろう)教授

―第2回共創会を終えて、新たな気づきや、今後の課題などが見つかりましたか?
「技術の良さの伝え方」を、事業者のみなさんが工夫してらっしゃると思いました。もちろん、みなさん素晴らしい技術を持たれていますから、その技術をうまく使っていただければ、生産効率や収益率が上がることは明確です。それをどう生産者さんに伝えるのか、これが目に見えないノウハウなんだなということが分かりました。その伝え方のノウハウを共有することによって、より効率よく技術の良さを生産者に伝えられると思ったので、そういった勉強会を企画したいと思いました。

―農業DX加速化のために、髙山先生が必要だと思うことを教えていただけますか?
「デジタイゼーション」というのはデータ化すること、そしてその次のステップとして「デジタライゼーション」データに基づいて行動を決めることがあります。行動を決めることは、生産者しか決断できません。事業者は、継続して使っていただけるために仕事の中に組み込むことができる「デジタライゼーション」を提案する必要があります。やはり、事業者と生産者がコミュニケーションをたくさんとって事業者が提案する「デジタライゼーション」と、生産者ができる「デジタライゼーション」をマッチングさせる、これを現場でやり続ける必要があります。そこをうまく探っていくことができれば、確実に地域実装されていくと私は思います。

※髙山教授プレゼン資料より抜粋

―今後、農業に限らず様々な分野で共創会が開催される予定ですが、その中で大学がどのような役割を果たせるとお考えですか?
大学が持っているのは「知(知識)」です。事業者とユーザー(生産者)の間に入り、科学的に合理的な方向性で行動変容を起こさせようとしているのか?十分なデータがあるのか?そういったところも学術や知識でサポートすることができます。その延長上にあるものを予測したり、知識の中で提案したりすることができるので、無理な「デジタライゼーション」を回避することができると思います。また、農業だけではなく、防災や観光など様々な分野での提案が可能です。デジタル実装加速化プロジェクトの現場で提案させていただけるようなプラットフォームを共創会で作っていただけると、大学が地域貢献できると思います。

※髙山教授プレゼン資料より抜粋

―本日も大学生が複数参加されていましたが、学生にとっても新たな学びの場になるのでは?
そうですね。やはりデジタルは、学生が理解しやすいんですよ。たとえば農学部の学生の場合、光合成や蒸散、成長などを数字(データ)で扱うことに慣れています。大学での学びをそのまま現場で話すことができるので、将来自分も農業生産に携わることができるかもしれないというように、希望を持つ学生も増えるのではと思います。同じことが他の分野を学ぶ学生にも起きると思いますし、デジタルで産業と学生を繋ぐことできると期待しています。

―共創会で得られた成果が、将来的にどのような影響を及ぼすと期待しますか?
共創会の中で、大学、生産者、事業者がうまくコラボレーションし、みなさんで同じ方向を向いて進んだ後ろには、道ができます。この道をたくさんの人が一緒に歩んでくれたら嬉しいなと思います。

以上、
この日も有意義な意見交換がなされた「農業DX共創会」。今後必要なキーワードごとに勉強会が企画される予定だ。農業に関心がある方は、一般公開で実施されるオープンデイにぜひ参加してみてほしい。

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