消防庁主催の「消防団員の処遇等に関する検討会」へ意見陳情

2021年7月1日、消防団員の処遇等に関する検討会第6回までの議事録を読み、このままでは団員減少の原因に手が当たらない状態で終わってしまう事を危惧し意見をメールした。以下がその本文原文である。

消防庁地域防災室担当者様

消防団員の処遇等検討会について意見させていただきたくメールいたします。
意見陳情のほかに本意見をどこへ展開しどのようなお立場の方に見ていただけるのかについて回答をいただきたくお願いいたします。

消防団員の処遇等検討会第5回より処遇検討内容が報酬から具体的な消防団の活動内容に焦点が当てられ、とりわけポンプ操法大会についての議論が紛糾・発散しているように思えるが、一部委員において、機械器具取り扱い操作である「操法」と、基本動作の早さと見栄えを点数化し競技化した「操法大会」を未だ同列に考えているかのような発言が見られ、このままの議論でまとめられ最終報告となった場合、各地で減少が続く現状への効果的な対策に果たしてなるのか大変に疑問であり意見させていただくものです。

消防団員の減少を少しでも抑える為には消防団自身が現在よりも飛躍的に魅力的な組織になり、自分にできる地域貢献の手段として入団し活動したいと思える組織になるより他ありません。
魅力的な組織とはどんなものかについては十人十色様々なイメージがあろうかと思いますが、私見を述べさせていただければ、「地域住民の為になる正当な活動内容に適正な報酬が支払われ、住民から評価される状態」であり、少なくとも消防団活動が自身の生活の上の負担であったり、必要性が感じられない訓練で招集拘束される、家族の理解が得られないといった状態では魅力的な状態とは到底言えません。

検討会第5回の資料3、訓練や操法大会に対する団員からの意見(P7~)にある岐阜県高山市の1500人超の団員のアンケートを実際に見てみれば、59%の団員が操法大会の改革が必要だと訴え、負担に感じている消防団活動は何かという問いでは1位が消防操法だと答えていますし、消防団の行事に関する意見という項では、操法大会というパフォーマンスに掛ける時間が無駄であり負担だとする意見が多数を占めています。似たようなアンケートはいくつかの自治体でも行われており、概ね同じ割合で操法や操法大会が問題であると出ているようです。これら団員アンケートでは操法と操法大会の違いなどは切り分けて論じられておりませんが、具体的な処遇改善を議論していただく検討会委員に於かれましては「操法」と「操法大会」を切り分けた上で負担となっている要因をしっかり認識し、改善に向けそれぞれの立場でご議論いただきたいと思います。

上述のアンケート結果にも通ずる多くの団員が負担に感じている操法大会に関して、東伊豆町竹内課長(太田委員)や、山内委員が実務的な立場から重要なご発言が複数出ておりますが、これについて本質的な議論がなされていないように思います。より丁寧に深堀してご議論いただきたく指摘いたします。具体的には下記の発言です。
『今の操法大会については、これでいいのかなという思いがある。2か月くらい練習をするのは大変であろうし、タイムを重視する練習で怪我も多く、団員の負担が大きい。操法大会はある程度重要性はあるが、時代にあった大会をやるべきである。』
『大会が団員確保のネックになっていることから、今年から操法大会への参加を中止した』
『操法大会に参加せず、(操法大会に特化した)指導員を出さない団体は、支部から脱会させられることとなった。そのように操法大会が全てという考え方がまだ先行している』
『操法については、全国消防操法大会を運営している日本消防協会と消防庁から要綱が来ており、それに基づいて各消防団が訓練をしている。まずは日本消防協会と消防庁において全国消防操法大会の在り方というものをきちんと検討していただき、大会の必要性や運営の在り方を議論していただきたい。』
『操法が必要でないという意見は、全くこの検討会の中では出ていないと思う。要は、大会の在り方が今の消防団の主要事業になってしまっているというところが問題だと思っている』
『消防団は色々なところで重要性が増している。色々なものが要求される中、消防団に何が必要なのか、どういうことをやったらいいかということを、もう少し消防庁なり日本消防協会も含めて市町村へ明確な指針を出していただければと思う。』
『消防団が操法を通じて基本を学ぶ鍛える部分と、大会に出ることによって結束力や団結力、達成感、人を成長させるという競技の目的もあるからだろう。操法を命懸けでやっておられる意見もあるが、しっかり協議目的を踏まえて見直しをしてほしい。』
『国が改めて操法大会の意義等を周知徹底するということだが、それだけで本当に各自治体が改善できるのか。』
『根本的な問題も含め検討していただき、本当にそれが改善できたかということを、2、3年後に必ず見直すということを検討していただく必要がある。』

特に東伊豆町竹内課長のご発言にある「大会こそが全て。操法大会に参加しない決断により支部から脱退をせまられる圧力」については大変な問題であり、自治体消防の原則の根幹を揺るがすような大問題であります。操法大会については完全任意参加制、つまり出たい団体・チームからの自主エントリーで大会を行うべきであり、大会が負担に感じる、或いは数年に一度だけ参加したい事情などを考慮し、参加しない決断がしやすい任意参加の状態にして頂きたい。消防庁と協会がタッグを組み要綱を出すことで県消防協会へさらにその下の自治体の消防団へと大会参加の強制性が生まれているのではないでしょうか。

また、第5回および第6回議事録において一部委員から発出された下記の発言については団員減少要因、あるいは負担活動要因の分析を行っていない認識においての発言であるように思え、全国80万人の消防団員の代表者として処遇検討会に参加する委員としての資質を疑うものであり、大変遺憾に思います。
『現場活動の役に立つと思えないポンプ操法の訓練の負担が重いということが団員確保の最大のネックであるという印象を与えているが、そのまま受け止めて本当によいのか』(竹内課長がそのように指摘している)
『操法大会に努力を積み重ねてきた方々の受け止めが気になる』(団員減少に歯止めを掛けるための施策に反映すべき事項なのか)
『操法の話ばかりというような感じになってしまうと、消防団、あるいは、消防全体のこれからの展望がどこかに逃げてしまう』(団員減少の原因はどこにあるのか具体的に挙げてご議論を)
『操法の見直しの中で、競技用の操法と実戦用の操法を分ければ、加入促進がしやすくなるのではないかと思っている。』(加入者の視点で考えてください)
『操法については、技術の習得以外に、各消防団の情報交換の場としての意義もあると思っている』(何のための操法なのか意味を考え直してください)

団員の急激な減少がなぜ止まらないのか、参考に紹介された団員アンケートは元より東伊豆町竹内課長(太田委員)や、山内委員においても操法大会に原因がありそうだと具体的に指摘されています。消防庁と消防協会の立場にある委員はこの現実から逃げずに真正面からご議論していただくようお願いするとともに本検討会室﨑座長に於いては闊達なご議論の場を創出していただき団員減少に歯止めがかかる結果となるようなアプローチをお願いしたいと思います。

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