高井たかし議員宛 #消防団の課題 2

■はじめに

先日、令和3年2月19日の総務委員会での質問に先立ちまして、「ポンプ操法大会の廃止」と「形式的な訓練や不要な式典の見直し」を提言させていただきました。主張に変更有りませんが、質問して頂きましたポンプ操法大会の問題点を客観的かつ具体的に示た資料を紹介しながら問題点を明らかにしていきたいと思います。また、現在開催中の「消防団員の処遇等に関する検討会」の公開された議事録を読み感じた問題点も指摘したく下記に記します。
余談ですが、ネットの中継で実際にポンプ操法大会の廃止について高井議員から大臣に質問され回答を引き出している姿を目にしますと、大げさですが将来の国造りの議論に関わっているように思えました。またあらためて自分が住む地域の安全について考えようと思いました。


■操法実施要領に従い操法し、操法審査要領によって採点される競技化されたポンプ操法大会

消防団の課題解決には消防団員へアンケートを取るなどして先ずは問題点を洗い出し深堀りする必要がありますが、自治体レベルで行われたアンケートがあり、公表されている結果が大変に興味深い内容でありますのでぜひ一読され質問の参考にしていただきたいと思います。

甲賀市消防団員意識調査報告書


特筆すべき回答がいくつかあり抜粋すると、

15.あなたが消防団活動で不満に思うこと (P18)
『ポンプ操法訓練の負担が大きい』が36%で第一位
21.消防団員の減少が全国的な傾向にある中で、新入団員を確保するためにあなたが良策と思われるものは 何ですか
『ポンプ操法訓練を軽減する』が33%で第一位

次にポンプ操法のどの点について団員が負担と感じているのか分析しなければなりません。
Twitterで多くの団員が指摘している問題点は下記の2点です。

1.練習中のケガの多さ
2.放水よりも規律や所作の習熟練習に時間を掛ける

1のケガについては消防団員に発生した公務災害の殆どが操法訓練中のケガであることから、操法は安全で無い事が伺えます。
2については操法審査要領において、消化時間の他に規律、節度、士気、チームワークといった抽象的な事象に対しても採点を行うことになっており、必要無い所作(ロボットダンス、シンクロした動き)を練習する必要があります。
また同時に多くの団員は『ポンプを操作し放水作業に習熟する事は必要である』と言っており、ポンプ操法全体を否定している訳ではありません。

先日の武田総務大臣の答弁の通り、地域の実情に合わせて訓練することが重要と言うのであれば、ポンプ操法大会を廃止、次にポンプ操法要領と審査要領を全面的に見直して地域の実情に合わせた訓練を指導伝達するよう改革して欲しいと思います。

第26回全国消防操法大会 操法実施要領 操法審査要領

例えば下の画像(操法実施要領より抜粋)のように、集合線に踵が出ないように合わせる練習を全員が揃うまで延々と繰返し練習しているのです。地域の防災や消火と何の関係があるのでしょうか。


■検討会について

現在開催中の「消防団員の処遇等に関する検討会」ではタイトルの通り処遇について、つまりは金銭面の待遇改善の検討を主にされているように思いますが、消防団員の実情を酌んだものではなく、次の理由により、全く無意味な待遇改善策となる可能性が高いように思います。

理由1
消防団を設置する自治体が出動手当を支払うかどうか条例で定義しているため、出動命令や集合命令を受け活動したとしても出動費が支払われない例が殆どであり、待遇改善にならない。
一例ですが、3時間以内の活動は出動としないとする自治体や、出動の定義自体が無く、感覚的に拘束時間が長いか短いかで手当を出す出さないを決めている自治体も有る。また、式典への出席率向上を図る為に式典出席にのみ出動手当を支払うとする自治体もある。もちろんポンプ操法大会の練習に対しても一切支払われていない。

理由2
現状出動1回あたり7000円の基準額だか、多くの自治体は条例で団員に支払う出動手当を1000円から2000円程度などと減額し規定しており、各自治体の条例を改正しなければ待遇改善とはならない。

理由3
自治体は団員個人へ出動手当や年間報酬を支払っておらず、分団や部、班といった組織に対し纏めて支払っている自治体が多い。消防庁からは報酬は個人へ適正に分配すること、と通達を出しているが、自治体側は業務多忙等を理由に報酬の個人振り込みに移行しない現状が続いており、待遇改善に繋がらない。

西日本新聞 団員報酬「受け取ったことない」


■終わりに

私を含め多くの消防団員が高井議員へ操法大会廃止を訴えているのは、消防庁と日本消防協会が協力して操法大会を主催し、日本一の操法チームを決めるトーナメントを行うことが、その影響の大きさから公益性を著しく損ねているという実感があるからに他なりません。ここで言う公益性とは、必要な消防団員数が確保され、地域の防災需要に応える事ができる能力を備えている事を意味します。単にやりたくないといった類の我儘で操法大会廃止を訴えているのではありません。

『消防団による公益性を増進させよ』

国が考えるべきなのは、大きくこの一点と考えます。公益性を増進させること、その為には団員数の確保も必要かもしれませんし、当然活動内容も地域需要に見合ったものとなる必要があるかもしれませんし、報酬額や支給方法も適正かつ公平に正す必要があるかもしれません。

火災件数が減り自然災害が増えているなど、消防団発足当時から比べると災害の内容も変化していますが、消防団はポンプ操法所作の見栄え向上の訓練に多くの時間を割いており、地域防災需要に答えられていないのが実情です。

以上、参考にしていただけたら幸いです。



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