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今だから考えて欲しいニュース(アフリカ諸国のファッション廃物汚染)

「要らなくなった洋服や靴、サイズが合わなくなった子供服があるので貧しいコンゴなどのアフリカ諸国に寄付したい」
先進国として貧しい国の人に寄付することは正しいことだと信じておられるかもしれません。

この善意によって行われる行為が、誰かを苦しめることになったり、自分の行為が迷惑になったりしているという考えに行きつかないのでしょう。
 
冷静になって考えてください。
貴方は他人が着なくなった「使い古された服や靴」を身に着けたいですか?

ニーズの無い寄付は、迷惑でしかないゴミの不法投棄と同じなのです。


心のどこかに「サポートしないと発展できないだろう」と見下しているのではないでしょうか?

誰かのためになると思って寄付した古着が、実はアフリカ諸国では環境問題や現地の産業・雇用問題を引き起こしています。

【イメージしやすい事例】
日本国内の被災地で問題になりやすいのが「自分が要らないから寄付したモノ」です。受け取った人が喜ぶモノなのか?しっかり想像することが大切。

中古衣類の最大輸入国はガーナ


2021年の輸入総額は2億14百万ドル。

一部は難民キャンプへの物資としてリサイクルされますが、多くは現地のマーケットに並ぶ商品となります。

ファストファッションの浸透によって、低品質の古着は売れません。
誰だって当然のことで汚いものは購入しません。

その結果、輸入された古着の約4割はゴミとして捨てられているのです。


ケニアの環境・健康被害


ケニアでは、輸入された中古衣類(「ミツンバ」として知られる)の流入は、地元製品と競合し、国内繊維産業を損なう可能性があります。
しかし、これらの中古衣類の多くは品質が悪く、使用不可能であり、最終的には廃棄物になっています。

ナイロビ川や埋立地周辺などの地域では、繊維廃棄物が川沿いやごみ捨て場に蓄積し、川の水がアルカリ性に変わり、農業用途や飲用に適さなくなり、これらの物質の焼却による環境汚染や健康危険を引き起こしています。

ケニアを含む多くのアフリカ諸国は、ファッション廃棄物によって引き起こされる汚染を処理するための十分な水処理システムを持っていません。

これにより、未処理の廃水が水域に放出され、さらに汚染を拡大させています。

 

アメリカは中古衣類の最大輸出国

2021年、中古衣類は世界での総取引額は51.7億ドルでした。
2020年の39.5億ドルから31%増加です。

アメリカは中古衣類の最大の輸出国で、8億3400万ドル相当の商品を輸出しました。他の主要な輸出国は、中国(7億90百万ドル)、イギリス(3億86百万ドル)、ドイツ(3億59百万ドル)、韓国(3億24百万ドル)。

2021年、アメリカは中古衣類で8億100万ドルの純貿易黒字を記録しました。



東アフリカ共同体の中古衣類段階的輸入禁止案


2016年3月、東アフリカ共同体(EAC)首脳は共同声明を発表し、地域の繊維・アパレル産業を支援する手段として「中古衣類の輸入を段階的に廃止する」意向を表明しました。

EAC地域の民間部門は、この禁止を支持し

「地元産業を保護せずに工業化した国はない」


と主張し、地元の繊維・アパレル部門の保護と成長を目指していました。

特にルワンダ、タンザニア、ウガンダは、積極的に古着の輸入を禁止して、自国の繊維産業を保護、発展させることが目的であるという姿勢示しました。

アメリカの反応


EAC諸国への中古衣類の大規模な輸出国であるアメリカは、この禁止に対して懸念を表明。「自由貿易協定違反である」と主張します。

更にアフリカ諸国からの免税輸入品目を拡大した上で、経済成長を促すアフリカ成長機会法(AGOA)の見直しを開始して、ルワンダ、タンザニア、ウガンダをAGOAの対象外にする可能性を示唆する圧力をかけたのです。

AGOA特典の潜在的な喪失は、これらの国々にとって重大な経済リスクをもたす可能性が高いのです。


東アフリカ諸国の反応

ルワンダ

ルワンダは輸入された中古衣類に対する関税をキロ当たり0.20ドルから2.50ドルに引き上げ、輸入を段階的に廃止する意図を持っていました。

アメリカからの報復を受けても、ルワンダは自国の市場での免税輸出特典を終了したにもかかわらず、その立場を維持しました。


ルワンダは、「アフリカの奇跡」と称されるほどに進歩しています。

ウガンダ

2023年ヨウェリ・ムセベニ大統領は、地元の繊維産業の発展を阻害すとして中古衣類輸入禁止としました。
「これらの衣類は西洋の故人のものである」と語りました。

タンザニア

本件に関する具体的な対応は、あまり文書化されていないので詳細は分かりかねますが、ガス、鉱業、農業などの自然資源が豊富で経済成長を続けています。中国や他のアフリカ諸国からの投資も増加して、インフラ整備にも注力しています。


ガーナ

ガーナはEACのメンバーではありませんが、AGOAの恩恵を受けています。

貿易産業省のナナ・アマ・ドクア・アシアマ=アジェイ副大臣は、ガーナとアメリカ間の貿易を強化するためのアフリカ成長機会法(AGOA)の延長推進を支持しています。

近年のガーナは、高インフレに直面しており、推定34%に達し、人々の収入と生活費に深刻な影響を与えていました。ガーナの通貨『セディ』は大幅に下落し、世界で最も悪いパフォーマンスを示す通貨の一つとなりました。

世界銀行は、2024年に2.8%の成長率で経済が回復し、2023年の1.5%からの減速を経て、その潜在的な成長に戻ると予測。
国際通貨基金(IMF)は、2024年の成長率を2.7%と予測しており、2023年の1.2%の初期予測から大幅に改善されると予測。

ケニアの反応

当初、ケニアはEACの決定に加わり、中古衣類の輸入を段階的に廃止することを計画していましたが、その決定を撤回し、関税を元の水準に戻し、中古衣類の輸入を禁止しないことにしました。

この決定が全てとは言いませんが、増え続ける繊維廃棄物のリサイクルに苦戦しているの事実です。

政府は、「Rivatex in Eldoret」や「Kicotec in Kitui」のような復活した繊維産業を支援するために、価値連鎖と綿の成長に積極的に投資しています。
地元製造業を強化し、中古衣類の輸入を減らし、雇用を創出するためのより大規模な戦略の一部です。 綿生産小規模農家に安定した市場を提供し、改善された農業技術を提供するサポートも行なっています。


ケニアは近年、先端技術を活用して、著しく進化しています。


国それぞれ、人それぞれ、考え方も違えば、思惑も違います。

しかし、共通していることは?

ニーズ無き寄付はゴミの不法投棄と同じです




以下、ご参考まで ↓ ↓ 

「ラナプラザ崩壊事故」
2013年4月24日にバングラデシュの首都ダッカ近郊で起こった大規模な建物崩壊事故です。ラナプラザとは、8階建てのビルで、その中には数つのガーメント工場が入っており、主に欧米のブランド向けに衣料品を製造していました。この事故の前日、建物に亀裂が見つかり、警戒が呼びかけられていました。しかし、工場のオーナーは労働者たちに次の日も出勤するよう命じ、結果的にこの大災害につながりました。

この事故は、ファストファッションの暗い側面を浮き彫りにし世界中に衝撃を与えました。
労働条件の悪さ、安全基準の無視、そして先進国の企業が責任を放棄する姿勢は、広く批判されました。
 
バングラデシュは、「世界の縫製工場」と呼ばれるほど世界の繊維産業の中心地です。貴方も「Made In Bangladesh」の表記の服をお持ちではありませんか?

ファストファッションは、低コストで大量生産することで利益を上げているため、安い労働力を必要としているのです。それが原因で、人権侵害にも及ぶような労働環境や条件が問題になるのです。
この事故以降、労働者の安全基準や労働条件の改善を目指す多くの活動が展開されるようになり、世界中にファッション業界の供給チェーンの問題になりました。

そして、持続可能なファッションへの関心が高まり、エシカル・ファッションやサステナブル・ファッションといった運動が広がっていっていったのです。

ファッション業界では売れ残り商品の焼却処分が一般的になっています。
日本国内だけでも約40億着も捨てられているのです。世界中で毎年約9200万トンの繊維廃棄物が生産されており、この廃棄物の多くが焼却されたり、埋め立てられたり、発展途上国に輸出されたりしています。

これはファストファッションによって奨励される過剰生産と過剰消費の結果です。


「バーバリーのブランド棄損回避のための大量廃棄
2018年7月、高級ブランドのバーバリーが、ブランド保護のために衣料品やアクセサリー、香水など2860万ポンド(約41億8000万円)相当の売れ残り商品を破壊・処分していたことが明るみになりました。

バーバリーは大バッシングを受けました。過去5年に処分された製品は9000万ポンドに上るということです。
廃棄の理由は「よくわからぬ市場で、安値で販売されることによる『ブランド棄損』を回避するため」と回答しました。

先進国における大量の衣類廃棄問題は、重要なグローバルな課題となっています。


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