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R&Bという音楽スタイルと白人による「横取りマーケティング」

1940年代後半から1950年代初頭にかけて、アフリカ系アメリカ人が中心になって『リズムやブラス・セクションの強調』『独特のベースライン』『ストロング・ビート』などの特徴的な要素を持つ新しい音楽を創造されていました。

✅ 『ホンカー』:パワフルに吹きまくるサックス奏者 
✅ 『シャウター』:パワフルなサックスに負けないヴォーカル

ジャズとブルースが融合した新しい形態の音楽が、アフリカン・アメリカンのコミュニティで人気を博し、後に白人の聴衆にも広がっていき大衆に受け入れられるようになっていきました。

この「ジャンプ・ブルース」と呼ばれた音楽が、『R&B(リズム・アンド・ブルース)』の原型と言っていいでしょう。1960年代に入り『ソウル・ミュージック』と呼ばれるようになる音楽ジャンルです。

ルイ・ジョーダンLouis Jordan)

1910年アーカンソー州ブリンドル生まれ。ビッグバンド・ジャズとブルースの要素を合わせ持つ音楽「ジャンプ・ブルース」の代表的なミュージシャン。

1940年代から1950年代初頭にかけて、多くの曲をヒットさせました。
代表曲には、 「Choo Choo Ch‘Boogie」、「Caldonia」、「Saturday Night Fish Fry」などがあり、映画にも出演し、音楽と演技の両方で活躍しました。

「キング・オブ・ジュークボックス」とも称され、黒人コミュニティで大きな人気を博しました。ジャズやブルースのみならず、ロックンロールの先駆けとなるサウンドも作り出し、その音楽的な影響力は広く認められています。

ジョー・リギンス(Joe Liggins)
1945年にリリースした「ザ・ハニードリッパー (The Honeydripper)」が200万枚以上の大ヒット。ビルボード誌「レイス・チャート 」で、1945年9月8日付から18週連続首位。

ワイノニー・ハリス(Wynonie Harris)
ジャンプ・ブルース界きってのシャウター! ヒット曲を連発。

ブル・ムース・ジャクソン(Bull Moose Jackson)
1948年「I Can‘t Go on Without You」が8週連続1位を獲得。

ロイ・ブラウン(Roy Brown)
プロ・ボクサーあがりのジャンプ・シャウター。甘さを含んだ粘着質の唱法が特徴。


【音楽業界の「横取りマーケティング」】


当時のアメリカは人種差別が横行する時代であり、黒人アーティストたちが創造する音楽は、白人の主流社会においては軽蔑される傾向にあり、白人が支配する音楽産業に参入することが非常に難しかったのです。

そこで白人主導の音楽業界は、2つの戦略を展開します。

大胆なまでの『黒人アーティストの楽曲の盗用』です。

白人アーティストたちは、黒人アーティストの楽曲を盗用して、白人のオーディエンス向けに、強固な流通チャネルとメジャーレーベルの宣伝力で、原曲よりも大きな成功を収めるケースが珍しくありませんでした。

『楽曲の盗用』がバレたり、原曲とカバーを聴き比べすることがないように、白人と黒人のマーケットを切り離す必要がありました。

メジャーレーベルは、誰がどのように白人のオーディエンスにリーチするのかを、完全にコントロールしていました。

「横取りマーケティング」が横行した一因に、当時の著作権法の音楽についての規定が曖昧だったことがあげられます。
楽曲の作曲者に対しては保護が与えられていましたが、演奏者や録音会社に対する保護は十分ではありませんでした。
そのため、白人アーティストが黒人アーティストの楽曲をカバーしてレコードを出すことが容易であり、商業的な成功を収めることができたのです。

この動きに対して、黒人音楽家たちは、権利を守るために法的手段を取り、また音楽のライブ演奏においても、オリジナルの楽曲を演奏することで、白人アーティストとの競争に立ち向かいました。

これらの反撃は、黒人音楽家たちの自立を促し、黒人音楽の発展につながったと考えられます。

白人歌手によるR&Bなどのカバーは、より強固な流通チャネルとメジャーレーベルの宣伝力によって、オリジナルの黒人よりも大ヒットするケースが珍しくありませんでした。


「The Wallflower(Dance with Me, Henry、Roll with Me, Henry)」

エタ・ジェイムスは40万枚を売り上げましたが、

白人のジョージア・ギブスによるカヴァー・バージョンは100万枚を超える大ヒットになりました。


パット・ブーンは、ファッツ・ドミノの「Ain‘t That a Shame」のカヴァー・バージョンで自身初の『ビルボード』ポップ・チャートで第1位を獲得。


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