見出し画像

VUCA時代に必要な『インプロヴィゼーション力(即興力)』

音楽用語で『ギグ(Gig)』という言葉がある


Gig(ギグ)は 小さなライブハウスやクラブで’’その場その時限り’’の即興的な演奏をすることのスラングで ジャズ・ミュージシャンから広がったと言われている

このギグに参加できるミュージシャンは 音楽理論はもちろんのこと 演奏スキル・テクニック 他メンバーとの“間”の取り方 といった 原理原則を把握して理解した上でないと 一流のアドリブが繰り出すことも出来なくて オーディエンスを魅了することなどできない

従来から同じバンドメンバーではない 外部の人との即興的な演奏なので 数多くの経験を積んだミュージシャン 卓越したテクニックを持っているミュージシャンでなければ簡単に出来るものではない

年齢も有名無名も関係ない 真の実力の世界だ



『アドリブ』の明確な定義はない


演劇・放送においては 脚本に書いてあることと違う演技や進行を行うこと
音楽演奏においては コード進行 モード(旋律)スケール(音階)といった一定のルール内で 全体の流れやメロディを崩ずに ヴァリエーションを加え 更に魅力的なモノにする自由演奏

※ 『アドリブ』は ラテン語の”ad libitum(アドリビトゥム)”を由来とする外来語

『アドリブ』と同じ意味で『インプロヴィゼーション(improvisation)』が使われることがあるが 微妙な違いがある 


『インプロヴィゼーション(improvisation)』
(「インプロバイズ(improvise)」という動詞の名詞系)


あらかじめ準備することなく その場で思いのままにつくりだすこと(引用:日本大百科全書)

元になるもの自体が無く アドリブよりも創造性が高い 完全な即興


「インプロバイズ(improvise)」という動詞の意味を調べていると

● 準備なしに話しをしたり パフォーマンスをしたりする事

● 使えるものは何でも使って 何かを作り出す事

という 二つが紹介されているのを見つけた


VUCA時代で ビジネスに携わる人には 

一定のルール内での アドリブ“力”も必要であるが 

イノベーションを起す能力という意味合いも含めて 

『インプロヴィゼーション“力”= 即興力』 

と表現するのが適切だと考える



Don't think, Feel


不測の事態や状況の変化への臨機応変対応能力は マニュアルや指示に頼らず リアルタイムで判断を下しアクションを取るのは その場の当事者である 現場のマネジャーと従業員だ

「考えてから動く」のでは手遅れになり 「感じて動く」 で 危機状態を乗り越えていかなければならない


PDCAサイクル【Plan(計画)- Do(実行)- Check(評価)- Action(改善)】では 全てのステップを踏むので時間がかかり過ぎる


OODAループ【Observe(見る)- Orient(わかる)- Decide(きめる)- Act(動く)】の考え方で 状況によってはループの途中でショートカットしていく方がリーズナブル

正に 『インプロヴィゼーション“力”』が重要だ 




3.11 未曾有の危機状態において 正解のない問題に取り組む緊急事態



優秀な大学を優秀な成績で卒業して大企業に入社して 出世してきたエリートと呼ばれてきたリーダー職陣が フリーズしてしまった現場を 目のあたりにしたことがある

知識豊富で 頭脳明晰なリーダーが なぜ 思考停止してしまったのか?

今 何が求められているのかを分析する力はあるが どうしても 従来の枠組みの中でしか考えことができなかった

無理やりでも 従来のルール・システム・やり方に当てはめようとして 問題の解決どころか 現場は混乱していった


ルールを「ウルトラC」とも思えるほどの解釈する思考スタイルでなく リスクを大胆にとろうという性格ではなかった

● 失敗にしてはいけない
● 上司の指示には逆らえない 
● 指示が無い限り自ら動かない 動けない

自己保身 プライド といったリーダー個人のメンタルやマインド面


● 役職 縦割組織による越権行為禁止
● リーダーの間違った方向性を 部下が進言できない組織体制

といった目に見えない 暗黙の掟 が大きな阻害要因となったのだろう

このエリートは 従来の考え方 既存のフレームに当てはめる考え方で

『インプロヴィゼーション“力”』が欠如している と言わざるを得ない



ビジネスの現場では 学校で学んだ知識が生きていない という事実も否めない



この 学びと仕事の隔絶は 時代の変化に向き合ってこなかった日本の学校教育の弊害だとも言える


MITやスタンフォードなどの 世界の名門ビジネススクールで重視されているのが『インプロヴィゼーション』と言われている

そして『インプロヴィゼーション』の教育プログラムも用意されているようだが このプログラムに参加するできるのは ごく限られた人だ


まず 日本型経営大企業においては『インプロヴィゼーション』に関する研修会やマニュアルは まず存在していないだろう

そもそも知識を習得すれば 身に着くという能力ではなく 能力を学ぶために危機状況下に何度も身に置くことは不可能だ



2013年オバマ前大統領が アメリカの重要な国家戦略として 理数系を強めることによって 科学分野で競争していける人材を担うため推進策としての「STEM教育」を支援すると演説した

技術的な面やモノづくりビジネスを IT社会とグローバル社会に適応するために

Science(科学)Technology(技術)Engineering(ものづくり)Mathematics(数学)の4つの分野を合わせた教育方針


この「STEM教育」の概念に AI時代には 想像力や表現力など芸術的な感性は欠かせないという観点から Art(芸術)を加えて進化した教育方針が
「STEAM教育」に進化した


さらに昨今は Sports(スポーツ)を加えて6つの分野から多角的視点からの教育する「STEAMS教育」という概念が生まれてきた


文系・理系の類型に関わらずバランスよく学ぶ「STEAM教育」の考え方が 社会人のリカレント教育のヒントと思う



ジャズ・ミュージシャンが Gigに参加することで 『アドリブ』スキル・テクニック を学んでいったように



ビジネス・パーソンも 所属企業に頼ることなく 経験豊富なベテラン 中堅 若手 といった垣根を取っ払った Gigが出来るコミュニティがあれば『インプロヴィゼーション“力”』向上のプラスになるだろう


『インプロヴィゼーション“力”』は 簡単にマスターできるものではないが この能力に長けたマネジャーや従業員こそ さまざまな危機を乗り越えて牽引できる人材であることは間違いない




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?