セレッソ広島配置の変化

セレッソ対広島の感想

Jリーグ第3節。ルヴァン杯含めて2連敗中のセレッソ(リーグ戦第2節は名古屋に0−2)と、昨季から含めて11試合未勝利の広島(リーグ戦は磐田と0−0)の試合。互いにここで勝って、悪い流れを断ち切りたいところか。

セレッソの 基本布陣は3−4−2−1とベースは変わらない。メンバーは前節と変更点があり、まず、レアンドロ・デサバトが先発で、ソウザがシャドーに、都倉ではなく柿谷が1トップとなる。広島は、前節からの変更は、パトリックに代わりD・ヴィエイラが出ているくらい。広島も基本布陣は3−4−2−1で、互いのシステムは噛み合う。噛み合いを受け入れるのか、それとも噛み合わせをズラしていくのかは、一つの注目ポイントかな。

噛み合わせを利用する広島と、ズラすセレッソ

システムは同じだが、両者は志向が異なる。まず、広島はボール非保持時は、人に強く意識を持ったプレッシングを行う。この試合では、上記の様にシステムの噛み合わせを利用して、セレッソのビルドアップを阻害しようとした。ちなみにセレッソは、スペースを埋める意識が強く、5−4−1でブロックを作る(ソウザは前に出がちだったが)。立ち上がりの段階では、広島は以上の様に人を強く意識したプレスをかけて、セレッソのビルドアップを阻害する。この様な広島のやり方に対して、セレッソはあらかじめ準備をしていた。それが以下の図の様になる。

セレッソは、広島がマンマーク気味にプレッシングをかけてくると想定して、ビルドアップ時に奥埜を1列落とし、4枚でボール保持の安定を測ろうとした。5分ぐらいして試合が落ち着いてくると、このようににセレッソがボールを保持する形が目立ち、両WGを出口とした前進、また後方から2ライン間への縦パスを狙いながら、攻撃を仕掛けるセレッソ。プレスが上手くはまらなくなった広島は、2シャドーを落として、5−4−1のブロックを形成する。セレッソの両WBに対してはそのまま広島の両WBが、2ライン間への縦パスはDFラインの選手による迎撃で、セレッソに前進のチャンスを作らせない。

以上のような展開でセレッソがボールを保持していたが、セレッソのDFラインとキーパーの連携ミスにより、17分にサロモンソンに先制を許す。非常に痛い失点だったが、そもそも広島の右サイドに簡単に前進を許しすぎたのかもしれない。普段セレッソはシャドーを落とした5−4−1のブロックを敷いて相手のボール保持に対抗するが、この日左のシャドーを任されたソウザは、ブロック形成のためにボランチ脇のスペースをあまり埋めていなかった。失点前の14分ごろにもセレッソの右サイドから、サロモンソンに単独でボールを運ばれ、フリーでミドルシュートを打たれていた。

先制後、広島は・・・

おそらく広島にとっては思いがけなく早いタイミングでの先制だったと思う。どうしても勝ちが欲しい広島は、割り切ってこの状況をキープすべく、積極的なプレスを控えるようになる。広島がとった方法によって、セレッソがボールを保持する状況がさらに増えていく。しかし、2ライン間へのボールに対して準備している広島。それを嫌がってか、清武とソウザはサイドに流れてプレーするようになる。おそらくロティーナはこの形は本意でなかった筈だ。2ライン間でのプレーを想定してソウザを一列前にあげたから。ソウザはライン間でスペースを得ると、その能力を発揮し、ゴールを直接狙うミドルという武器も持っている。しかし、なかなか前を向かせてくれない広島に対して、その能力を発揮できたとは言えなかった。時間が進むにつれて、少しずつセレッソが前進に成功するシーンが増えてきたが、ほんのわずか。ボールを保持するセレッソと、ボールは明け渡しても、大事なスペースは簡単に明け渡さない広島という構図で試合が進み、前半が終了する。

後半、セレッソの微調整

点を取るしかないセレッソ、ただ、ボールは保持できているので、変えすぎて大きくバランスは崩したくない。ということで、セレッソは上の図のように両WBの位置を調整する。(セレッソのボール保持時の主な配置)それは、両WBに高い位置を取らせることによる広島両WBのピン留めである。またセレッソはその両WB自ら裏へのスペースへの飛び出しも増えてくる。セレッソの両WBによるピン留め&裏への飛び出しにより、広島はDFラインを下げられ、また2ライン間への迎撃も消極的になる。また、両WBが空けたスペースを片山&木本が使えるようになり、横からライン間にパスを入れられるようになる。

56分、ソウザに代わって都倉が入り、都倉1トップで柿谷がシャドーに。ソウザよりは狭いスペースでも息ができる柿谷&清武を残すセレッソの論理的な采配。できればソウザの能力も生かしたいところだけど。また都倉の裏への飛び出しと高さにより広島DFラインを動かすこともできる。都倉が入ると、広島は60分に野津田→荒木またセレッソも62分に松田→高木を投入する。一度選手の配置を整理してみよう。

セレッソは高木を投入してから4−4−2に。ボール保持時の形そのままで、3バックからの可変式を止め本職DFを置くことで、広島のカウンターに対するリスクマネジメントといったところか。対する広島は都倉の高さ対策(荒木)と中盤の守備強度を回復するため、より守備的な編成となる。後半になってから2ライン間にボールがうまく入るようになってきたセレッソ。裏抜けできる高木を置くことにより、左側からも攻めることができ、特にボール保持時、丸橋が時間を得るようになってくる。広島は71分に森島を投入する。セレッソも73分に奥埜→水沼に代え、清武を中央に、水沼を右に配置する。水沼も裏抜けができる選手である。選手の配置の調整と駒の変化によって、広島をほとんど広島の陣地に閉じ込めることに成功したセレッソ。後はゴールだけ!といった状況である。特に高木が裏のスペースへのランニングによってできたスペースを、丸橋が使えている時は、丸橋からのクロスやセットプレー等によって広島のゴールを脅かすシーンが増えてくる。81分にはサロモンソンを清水に代えた広島。とにかく耐えて逃げ切りたい。前節はヨニッチをあげてパワープレー!のセレッソだったが、丸橋からチャンスを作れていることもあり、丸橋を高い位置に押し上げることを選択する。最後までチャンスを作り続けるセレッソだったが、得点はならず、1−0広島の勝利で試合は終了する。終了間際の広島GKの大迫のキャッチは、キーパーにとって勇気のいる決断だが、時間を進めることのできる素晴らしいプレーだった。

終わりに

選手の配置によってボール保持を安定させたセレッソ。相手によって対応を代えられる柔軟さを見せてくれた。負けはしたが、これをネガティブに捉えすぎる必要はない。確かに、失点は痛かったし、0−0が続けば状況は代わっていたかもしれない。細かいビルドアップのミスもあるが、向上は見られる。今後もさらなる向上に期待したい。

※白背景の方が好きだけど、ピンクと紫は分かりずらい&広島のユニは白ということで、背景を緑にした!

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