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学生や社会人が任意団体に入る際、調べるべき点

学生や社会人のサークル、研究会、吹奏楽団など、法人格のない団体は「任意団体」と呼ばれ、法律上は「権利能力なき社団」と呼ばれています。

学生、社会人いずれが運営主体の団体かの種を問わず、どの任意団体においてもルールを定め、ガバナンス体制を整備することは、その団体の安定的な運営と会員利益を保障するために重要です。ルールが定められ、ルールに従って運営される団体は社会性が高く、会員が不利益を被る確率が低いからです。つまり会員はその団体に安心して帰属できることを意味します。

ここでは、政治学を学んだ人間の観点から、あなたが所属したいと考える任意団体が、社会的に成熟し、安定した団体かどうかを見定める重要な点を、簡単にいくつか挙げておきます。

1. 会則が定められているか

任意団体の会則は、国家の憲法になぞらえられます。憲法は国家の理念を定めるものです。その国をどのような国にしていくかの大原則が示されています。ですから団体にとって会則は、団体の理念を示すものが望ましいです。団体の運営者は、会則で「何の活動をし」「活動を通して何を実現するのか」「団員や関係者にどのような利益を享受することを目指すのか」等を明確に定めておくのが理想と言えます。

会則に団体の理念が示されていない、あるいはそもそも会則そのものが存在しない団体は、団体の方向性が、発言力の高い特定個人によって方向づけられる確率が高いことを意味します。そのような団体は「入った時にはこんなことをやるとは想像もしていなかった」という不利益を後から被る確率が高いということです。

2. 会則の制定や改訂にかかる正当な手続きが明文化されているか

会則の改定も、その手続きや方法についてあらかじめ定められている必要があります。日本国憲法の場合、第96条により、憲法を改正する場合どのような方法や手続きを取るかについて示されています。団体の理念や方針を変えるなら、あらかじめ定められた民主的な方法で変えるのが理想的です。そうでなければ発言力の高い特定個人が会則を勝手に変えたり、あるいは会則を無視して団体を運営することができることになります。そのような団体に入ると、あなたは「入った時にはこんなことをやるとは想像もしていなかった」という不利益を後から被る確率が高いということです。

3. 意思決定機関が存在し、その各職位を選ぶための正当な手続きが存在しているか、また各職位の分限が明文化されているか

団体の所属人数が増えたり、活動規模が大きくなると、活動に関係する話し合いを毎回全員で実施することが難しくなります。そのため団体の中核となるメンバーが、団体運営に関する意思決定を担うことになります。団体を代表する人間やその補佐を担う人間、それぞれの部署ごとの代表者などの集団がそれに当たると言えます。これを「意思決定機関」と呼ぶことにしましょう。

意思決定機関の選出方法は、予め会則で定められていることが望ましいと言えます。そうでなければ発言力の高い特定個人が恣意的に人選を行い、団体運営を行える状態になるからです。そのような団体は発言力の強い特定個人が自分に都合の良い人物を意思決定機関に選べるので、幹部に気に入られなければ会員が冷遇される非民主的な団体である確率が高いということです。

また、意思決定機関に関わる職位の分限が明確にされていることも重要です。団体規模にもより難しい場合もありますが、「この役職はこの仕事をする」と明確に定められている方が会員は自分の仕事を進めやすいでしょう。そうでなければ会員が職位に就いた際、あれもこれも無限に業務や責任を負わされ、不利益を被ります。そのような団体に入ると、あなたは「入った時にはこんなことをやるとは想像もしていなかった」という不利益を後から被る確率が高いということです。

4. 会計に透明性があり、その使途は、毎回正当な手続きを経て会員に承認されているか

団体運営にかかる費用は会員からの会費徴収によってまかなわれるのが一般的ですが、会費の増減、臨時会費の徴収などについても、予め会則によって定められた手続方法に基づき、毎回意思決定を図る必要があります。

会費の増減や会費の用途については制度的に透明化されていなければなりません。会費の支払いや会費の用途決定、会費の臨時徴収など、金銭にかかる問題は、会員全員が関与するところなので、全員が意思決定に関与できるシステムを整えておく必要があります。具体的には総会を開催するなどが挙げられます。当然、いつ、どのような場合に、どうやって総会を開催するかについても会則に明記しておく必要があります。

このような制度が整えられていない団体の場合、会員は当初想定していなかった活動費について、知らないうちに負担しなければならなくなる確率が高いと言えます。

5. これらのルールや手続きが、所属する会員にもれなく周知されているか

最も重要なこと、それは定められたルールが会員に周知・理解され、そのルールに基づいて団体を運営できる状態になっていることです。

会員が団体の民主的な合意によって定められたルールを周知し、共有して入れば、万が一会員が何らかの不利益を被るような事態が生じたとき、定められたルールを根拠に不利益を避けるよう、相手に主張できるからです。

例えば、あなたが所属する団体で、会則に定められていない活動費を徴収されそうになった場合「それは会則に定められていない」「それは会則に定められた手続きで会員に承諾されたものではない」ことを理由に、拒否することができます。また、団体幹部の好き嫌いなどによってあなたが団体活動において冷遇されたり、突然出入り禁止などを言い渡された場合も「それは会則に定められた手続きを踏まえていない」ことを理由に、合理的正当性を欠いた決定であると主張することができます。団体のルールが定められ、ルールに従って運営されていれば、会員は不合理な処遇を受けにくい仕組みが整っていると言えます。

任意団体において権力の不均衡や、それに起因する会員の不利益などが生じないようにするためには、ルールが整備されており、ルールに沿って運用されていることが必要です。

そしてルールの整備に必要なのが「会則」です。そして会則が高度化され、会員おのおのが会則の内容を理解していれば、発言力の強い特定個人による恣意的な運営や権力の集中、あるいは暴走を防ぐことにつながり、会員が団体活動の中で不利益を被りにくい、民主的な状態を作ることができます。

任意団体においても、団体の運営に関するルールや手続きが会則で明文化されていることが望ましく、これらが十分整備されていなかったり、会員が周知していない団体は、発言力の高い特定個人による恣意的な運用に陥る蓋然性が格段に跳ね上がるので、会員は不利益を被る確率が高くなります。

繰り返しになりますが、そのような団体に入ると、あなたは「入った時にはこんなことをやるとは想像もしていなかった」という不利益を後から被る確率が高いということです。

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