Bizerteamの上手な使い方_20190313ユーザー会

“引継ぎ”はなくせるか〜Bizer teamの活用法〜

Bizer teamの第3回ユーザー会で「“引継ぎ”はなくせるか」というテーマでお話しをさせていただきました。

私も新卒で入ったのが金融で、その後、会計事務所で勤務したりもしたので「引継ぎは必要だ」という意識がすり込まれて生きてきたのですが、「アメリカでは引継ぎなんか存在しないよ」という記事を読んだり、この異動の多い季節に“引継ぎ”で疲弊している人をたくさんみたり、“引継ぎ”されたはずの後任者に本当に重要なことが全然伝わっていない、ということを経験して、逆に「”引継ぎ”をなくするという観点で考えられないか」という風に思うようになりました。

そういう問題意識もあって、今回は“引継ぎ”というテーマを掘り下げてみました。Bizer teamというのは実に不思議なツールでして、タスク管理やプロジェクト管理という観点では決して高機能ではなく、むしろ発展途上の要素が多いのですが、もう少しスコープを広げて個人ではなくチームや組織としてタスクをどうやって管理し、共有していくかという局面においてはもの凄く効果を発揮するツールです。そういう意味で「“引継ぎ”をなくす」という文脈においては、現時点においてもっともいいソリューションを提供できるのではないか、と考えています。

日本という社会は、組織で対応しているように見えて、実はめちゃくちゃ個人の能力に依存した事例が横行しています。『下町ロケット』しかり、『プロジェクトX』しかり、日本企業のサクセスストーリーは「1人の天才とそのフォロワー」という構図が当たり前に語られています。組織として問題解決をするのではなく、1人の天才の閃きで解決策を見出し、それを粛々と実行するために組織があるという関係性です。

一方で、アメリカに代表される多民族国家においては、そもそも阿吽の呼吸や共通の認識という伝家の宝刀が一切使えないので、特にバックオフィスのオペレーションに関しては、徹底的に組織として問題を解決していくというアプローチがとられています(実はそこには現場の創意工夫の余地がないケースも多いのですが・・・)。サービスが突然クローズになってチーム全員がクビになる、なんていうのも日常茶飯事です。そういう環境なので「“引継ぎ”をちゃんとやる」などいうスピード感では業務は回っていかないし、別の人に変わったとして同じアウトプットが出るという観点で業務が構築されています。

SFDCの“the model“などがその集大成だと思いますが、業務フローやオペレーションの設計において、いかに①再現性、②代替性、③改善性という観点を組み込んでいくかが今後は非常に重要になっていくはずです。

昨年あたりから日本においても各業界で「人不足」が深刻な問題になりつつあります。いまだに高度経済成長期の幻影を引きずった「問題はとにかくリソースを投下することで解決策を見出す」というアプローチがどれだけ現場を疲弊させていることか。そして、更にステージが上がり、企業の存続すらも業務構築の再現性や代替性が握っているという局面に入りつつあります。変化しなければいけないと分かっているのに、今までと同じアプローチをとり続けると後で大きなしっぺ返しをくらいます。

業務設計やオペレーション構築において、「属人化は悪」ということを口を酸っぱくして言い続けていますが、とにかく「属人化させない」ことが重要です。属人化させなければ、“引継ぎ”は不要もしくは最小限で済むのです。

タスクをこなすことは目的ではありません。管理することが目的ではありません。精緻なマニュアルを作ることはゴールではありません。人間は機械ではないので、仕事のやりがいや創意工夫まで考えて業務を組み立てられない企業は近いうちに人が集まらなくなるでしょう。逆に、考える必要がない業務はどんどん“自動化”や”システム化“の中に取り込まれていくはずです。

“引継ぎ”というテーマからずいぶんと広がってしまいましたが、結局は「問題をどこに設定するか」ということでしかありません。“引継ぎ”で疲弊している企業は、きっと業務も属人化しているし、今何が起こっているか、何が問題かを誰も把握していないことでしょう。

“引継ぎ”という局面になってドタバタするのではなく、業務を可視化し、状況を共有し、改善するために振り返り、各人の創意工夫によってブラッシュアップしていく、ということが日常的にできるかどうか、ということに尽きます。

Bizer teamのような「型のないシンプルなシステム」はうまく活用するのがある意味難しいですが、「チームで業務を回していく」という思想を理解し、それを日々のオペレーションまで落とし込むことができれば、業務を型に落とし込み、再現性や代替性を高め、そこから改善につなげることは難しくありません。

退職した、異動したという場面での“引継ぎ”は業務を棚卸して整理するチャンスでもあります。繰り返しますが「属人化は悪」です。発明や開発なら話は別ですが、特にバックオフィス業務においては「あの人にしかできない業務」は存在してはいけません。まずはタスクを見える化し、進捗状況を共有し、タスクが進んでいる感じがチームとして醸成されるかどうか。そのためのツールとしてBizer teamは非常にいいアプローチができますので、この辺の問題解決の1つの手段として頭の片隅にでも入れておいていただけるといいのではないかと思います。

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