サプライズ

 「またパーティーをやっている…」
 思わず愚痴がこぼれてしまった。まったく、あいつはどこに行ったんだ。同行している相棒がどうもお祭り屋台に釣られて行方不明になってしまったようだと悟った私は、一旦村を離れようと決めた。この時間帯にここにやってきたのはどうやら間違いだったようだ。フードを被っているせいか、私が何者かを知っていたとしても誰も気づかないだろう。そそくさととんぼ返りしようとした私を、誰かがつついた。
 「参加者にはこのイノシシの鼻をプレゼントする決まりになっているわ」
 灰色の身体の無表情なアースポニーはそういうと、愛想笑いの1つもなくブタの鼻を渡してきた。言われてみれば村の中にいるポニーたちのほとんどはブタの鼻を着けてお祭りを楽しんでいる。呑気なものだ。
 「赤白歌バトルの会場はあっちだよ、さっさと行きな!」
 「!!」
 気の強そうなポニーと内気そうなよく似たポニーが村のポニーたちの列を誘導している。黙って景気悪そうに誘導しているのは彼らの親族ではないかという感じの壮年の夫婦だった。パーティー嫌いなポニーもいるのか、と少し驚く。
 「さあーて、赤白歌バトルも終わったところで、ここで本日のオオミソカパーティーを監督してくれた2頭に盛大な拍蹄を!」
 陽気な男性の声が聞こえてくる。ポニーの流れに半ば無理矢理流されて行くと、ステージの上で跳ね回る黄色いポニーの姿がわずかに見えた。どうも声の主らしい。蹄が鳴らされる中、空いている場所を探していると、ゲストと思われる2頭のスピーチが始まった。
 「遠いジャポニーから私たちをお招きいただいてありがとうございます、優しい村の方々に出会えてとて」
 「あのねーあのねー、ザップアップルのジャム、すっごく美味しかったよ、ありがとね!2頭でぺろって平らげちゃったよ!それでね」
 スピーチがてんやわんやで進む間に、なんとか開けた場所に出た、と思った。
 「おっと、これはサプライズゲストの登場かな?んじゃ、このジョヤのベルを鳴らす最初のポニーは彼女に決定しよう!」
 どうやら壇上に間違えて上がってしまったようだ。間違えましたと小声で言って駆け出した瞬間、フードが脱げた。
 「そんなところで何やってるんだよ!」
 ポニーの群れの向こうで相棒がお菓子をいっぱいに抱えたまま叫んだ。どうやらこの、私にとっては恥ずかしい、他のポニーたちにとっては複雑な心境を抱くであろうステージに彼も来ていたらしい。慎んでこの場を辞退させていただこう。彼らにとっては思い出したくない記憶に違いない。そう思った矢先だった。
 「久しぶりね!戻ってきてたの!」
 ピンク色のポニーは現れるとほぼ同時に私に抱き着いてきた。そのままフードを脱がされ、鼻にブタの、イノシシの鼻を着けられる。
 「皆さん、私たちの親友である、特別ゲストを紹介します、フィズルポップ・ベリーツイストです!」
 スポットライトが当たる。私のことを怖がっていたポニーたちは、一斉に私を祝福するように蹄を鳴らしだした。それを合図にするかのように、かつて出会った友達が次々壇上に登ってくる。
 「ね、パーティーって、とってもいいものでしょう?」
 彼女の耳打ちに、私は恥ずかしさ半分、嬉しさ半分の苦笑いを返した。

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