見出し画像

苦手なことを克服した話

私は苦手なことがおそらく人より多い。
感覚が過敏なこともあって、些細なことでも不快に感じることが多いからだ。
でも、これはもう仕方がない。だって、それが私だから。

俗に言う「癒し」でさえ私には苦痛になることもある。
例えば、自然の中にあるオアシス。
私は自然がとても好きだし、なんなら一体化していると言っても過言ではない。だけど、太陽アレルギーだから長時間そこにいることはできない。

例えば、コーヒー。
カフェインアレルギーの私は、みんながコーヒーを飲んではリラックスしているのを見ると心底羨ましい。本当はいろんな味とか楽しんでみたい。

例えば、旅行。
枕が変わると寝られないタイプの私には苦行。
しかも、旅行はイレギュラーなことの連続だから終始ドキドキオロオロしがちだ。

例えば、温泉。
いまいちよく理解出来ないけど、みんなが口を揃えて言うのだ。
『温泉って最高よね』と。

そんな流れから告白すると、私は子どもの頃から「水回り潔癖性」だ。
だから、水回りは特に苦手だ。
トイレや洗面所やお風呂やプールはもちろんのこと、何もない時の電車には乗れても雨の日の電車は苦痛で仕方ない。
雨の日の外出もストレスがすごい。
濡れた傘を触ることも、靴が濡れることも発狂するレベルだから、温泉なんて子ども時代の家族旅行(もしくは高校の修学旅行)以来、入っていない。
せっかく、旅行に行ったとしても絶対にお風呂には入らない。
よくある、いわゆる「身体を拭くシート」がお風呂代わり。
あ、自宅のお風呂は入れるよ、あくまで不特定多数の人が使う場所が苦手ってことね。
ちなみに、公衆トイレは「自らが今からまさに使うぞ」っていうトイレを掃除するようになってから使えるようになった。

話は変わって、アトリエのある菊池は温泉がとても有名だ。
コンビニを探すより温泉を探す方が容易な気がする(つん調べ)
温泉には一生入ることはないだろうと、これっぽっちも疑わなかったある日のこと。
汗をたくさんかいて、どうしてもお風呂に入らないといけない状況になった。
汗をかいたまま寝るのは、それはそれで耐えられないからだ。

またまた話は変わって、私には「究極にゆるく生きる天才」みたいな友人がいる。
「常にフルスイングで生きている人間」の私からしたらその友人の生き方からは常に刺激と学びをもらっている。
その友人が「生きていく上で苦手なことが1つでも減るなら、それに越したことはないよね」と温泉に入ることの背中を押してくれたのだ。
「最初に入った温泉がトラウマものだったら今後絶対に温泉に入れなくなるから、せめて水回り潔癖症のつんさんでもギリギリ入れるとこを教えるね」と、清潔さ、料金、混み具合、泉質まで事細かく分析した結果の温泉を指定してくれた。
ここまで手取り足取り教えてもらえるなんてラッキーそのものなので「これはチャンスかも」と心を「無」にして挑戦してみることにした。
アレコレ考えちゃうと絶対にいろんなものが目に入ってきてお風呂に入れなくなるので(なんなら、館内にも入れない)とにかく「無」を貫くことを心に決めた。
脱衣所にて、システムが全くわからなくてあまりにオドオドキョロキョロしている私を不審に思ったマダムが怪訝そうな顔でこちらを見ている。
勇気を出して「すみません、身体ってどこで拭くんですか?だってほら、脱衣所の床、全然濡れてないし、でもタオルを中に持って入ったら濡れちゃうし…」と消えそうな声で尋ねると「皆さん、中で拭いてるよ。中にタオル掛けがあるからそこにタオルを掛けておくといいよ」と教えてくれた。
「そ、そうなんですね…私、実は今日が温泉に入るの初めてで…」と言うとそこにいたマダムたちが一斉に表情が明るくなって「そうなの!それはすごい!ゆっくり癒されていってね!」と拍手喝采の中、送り出してくれた。
お互いに裸だから、すごい恥ずかしい状況だけど、すごく心が温かくなった。温泉だけにね。なんつって。

メガネを外して浴室のドアを開けると、湯気と裸眼のおかげでほとんど何も見えない。
これは好都合だ。
だけど、感覚過敏が邪魔をする。そう、足裏の感覚が「不快」をキャッチするのだ。
だけど「無」を貫くって決めたから、何が何でも「無」でいるのだ(決意)

隣にいた2歳くらいの子がずっと私のやることを実況中継していて心を乱されそうになったが「無」を貫いた。
露天の浴槽の中に虫が泳いでいたが「無」を貫いた。
温泉から上がって身体を拭いて、服を着て、髪を乾かして待合室に行くまでとにかく「無」を貫いた。
結果、『あんなに苦手でしかなかった温泉に入れた』
なんなら、ちょっと心地良かった。
これは、すごい自信になったし、この歳になっても価値観を変えることが出来るんだという学びにもなった。
これで私を構成している「生きにくさ」がひとつ減ったし、同時に「癒し」がひとつ増えた。
人生まだまだこれから。
背中を押してくれた友人に心からの感謝を。

写真は、苦手なことを克服した日の夕焼け。
私はきっとこの日のことを一生忘れないだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?