略歴4_監査法人時代②_干された

部署配属から3日間で期待が消え、それからの仕事は、無感情に時間を提供し対価を得るだけの活動となった。できるだけ職場の交流を避けて、自分の勉強に時間を充てた。一方で、半年に1回のペースで行われた評価面談では(これは仕事で直接関わらないパートナーと)、かなり準備をして現状の問題点と改善案を指摘しつつ、他部門ないしは関連会社への異動を希望した。面談パートナーの顔も名前も忘れてしまったけれど、その引きつった苦笑いは記憶している。残念であり、虚脱感に包まれた。入社直後から辞めたかったのだけれど、公認会計士資格を得るための実務経験という人質を取られていたので、仕方なく勤務を続けた。働き始めて1.5年経って、若干経済社会への理解が進み、公認会計士資格を取得する必要はないかもなと考えていた。もし監査法人での取扱がこのままだったら、実務期間や終了考査(実務期間終了後に受ける資格取得前最後の試験、合格率70%ぐらい)を待たず転職しようかなと色々調べていた頃、突然状況が変わった。

監査法人のスタッフ(管理職以外の会計士と定義)は、数百名規模の部門に属している。部門に案件(クライアント)が紐付き、案件ごとにパートナーがいて、その下にチームが組成される。スタッフは複数の案件を担当するので、複数のチームに所属する。もちろん新陳代謝はあるけれど、チームは概ね毎会計年度固定されている。担当する案件の選択権はスタッフにはない。パートナー直下のマネージャがアサインしたいスタッフを選択する。そうなると、優秀ないしは人気なスタッフのアサインは多くなる。逆もまたしかり、アサインのないスタッフはクライアントオフィスではなく(監査は基本的に客先にて行われる)、監査法人事務所内のフリーアドレスデスクに座って定時を待つ。そのような仕事のないスタッフは、人手不足の2018年現在はあまりいないらしいが、私が在籍していた当時は若干いた。

スタッフは、複数のチームに横断的に所属し様々な場所で仕事をするので、半日次ベースで作成されたどのチームで何をやるか記載された表(配員表)を見て、自分のスケジュールを把握する。向こう3ヶ月分まで閲覧可能だった。

入社から1.5年ほど経過した頃、自分の配員表から、突然、一切のアサインが無くなった。入社以来、1日もアサインの無い日はなかったので、最初は何かのエラーかなと思ったが、数日経っても解消されない。少なくとも明らかなのは、それまで所属していたチームはクビになったこと、その後どこにもアサインされなかったこと。他の人とうまくやれないのはいつも通りで、間違った言動をしたとも考えておらず、能力は社会全体の水準からみると著しく低いながら少なくとも実際に観察した社内の誰よりも高いと感じていたので、特になんの感情も持たなかった。仕事をしなくてもお金がもらえるのはラッキーだなと思いつつ、一方でどう行動したらよいかわからず、とりあえず家で本を読んでいた。

当時は、いわゆるロジカルシンキング!仕事の生産性!マッキンゼー!という類のだからどうってほどでもないビジネスポルノ最盛期。20代前半、やる気◎、それでいてローキャリア真っ只中のコンプレックス抱えたサラリーマンはターゲットそのもので、発売されていた殆ど全ての仕事術系の本を買って読み込んでいった。思考法、文章術、タスク管理、時間管理、チャートやプレゼン資料の作り方などなど、200冊以上をこなした。日経アソシエやThink!もバックナンバーから買い込んだ。昔から勉強スタイルは覚える一辺倒で、とにかくそこに書かれている内容を暗記していった。試験勉強からまだあまり時間が経っていないので、長時間続くその作業は、全く苦ではなかった。

このアサインがなく家でずっと読書していた期間は、3ヶ月続いた。どこかのチームに呼ばれ案件にアサインされることはなかった。最初2週間ぐらい経った頃、一度誰か偉い人に相談した方が良いのかなとも少し考えたりもしたけれど、もはや会社への期待は無かったので、やめておいた。給料は払われていた。

自宅図書館司書の仕事3ヶ月目のある日、評価面談があって久々に出社した。その場でクビと言われるのかなと少し期待していた。この半期どうでした?と聞かれたので正直に状況を伝えると、面談担当パートナーは非常に驚いたようだった。直後に同監査法人で最大の案件にアサインされた。

今思えば。どんなマネジメントしてるんだと思いつつも、(繰り返しだが)監査法人であれば特に違和感はない。ただ、ごめん忘れてた以外に何か背景にあったのかは聞いてみたい。退職勧告だったとしたら空気読まなくてすいませんだけれど、事態発覚後に優良案件にアサインして頂いた点を考慮すると、とにかく直前の上司陣に嫌がらせを受けただけだったのかな。不思議。23歳の終わり頃の話で、一般にはなかなかに酷な状況だがしかし、それまで触れてこなかった領域の勉強をゆっくりできたので、ホント良かったと当時も今も捉えている。現在(2018年)の趣味嗜好を鑑みると、ビジネス書を丸暗記するなど想像できないけれど、職場でまともな職業訓練を受けられない孤立若手サラリーマンにとっては、ありがたかった。何かの役に立ったかどうかはわからないが、少なくともその世界の方々との共通プロトコルができたこと、微少ながら知識ベースで内容を把握した安心感、この2つのメリットは確実にあった(本当はOJTで学びたかったけど)。自分に取り入れるか取り入れないかは別として、知ってやらないのとただの無知はちょっと違う。オトナになってから手に取るのは恥ずかしい当該領域本をこの時期に網羅できたのは、ラッキーだったな。

次回、引き続き監査法人編。新しいチームでの話。



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ナガボット1号

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nagabot

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どんな略歴だったのか知ってもらえると仕事進める上で何らか効率的かなと /24歳まで記述済
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