株式会社Sprocketの資本政策_20181014更新

この記事は?

- 非上場企業の資本政策をサクッとまとめコメントしてます
- 私の勝手な意見には、"comment"とタグ付けしています
- アップデートがあれば都度更新します
- 謄本・官報・web記事から情報を取得しています
- 私は経営管理の人間であってビジネスに興味はありません
- 元々、私の個人メモです

ポイント

- 資金調達後10年間、受託開発とOEMを続けた後新設分割により会社を3つに分けたうちの1社
- 計算株数に優先株式を含まないナローベースラチェット条項
- 優先株式発行後に同株価にて普通株式を発行
- A種株式x1.5がB種株式と同順位優先分配
- D4V、アコード・ベンチャーズから調達
- 未だSeiresB前

資金調達一覧

20140401_新設分割により創業

概要
- 2000年より受託開発事業を営んできた株式会社ゆめみから、新設分割により設立される。同一タイミングで、ゆめみ社から別スタートアップ、スピカ社も新設分割により設立され、結果としてゆめみ社は3社に分割された。
- 設立された各社の株主構成は全て同一だった。

comment:
- 発行済株数17,672株。設立の事情が特殊なので、中途半端な数だが、十分量と言える。上場直前に株価を調整するために実施するまで株式分割は不要。効率的だ。
- 発行可能株数100,000株。多くて困ることはなく、この量は正しい選択(もっと多くてもいいけれど)。事実、その後現在に至るまで増やしていない。
- 2005年、事業会社とVCからエクイティにより資金調達をしてから10年経過後、この決断をしている。途中で抜けようとした投資家はいるのか、圧力はなかったのか、ファンド期限はどうなったのか、そもそも当時の投資契約書に何か誓約事項を入れる文化はあったのか、気になった。分割後2社はValuationを上げ資金調達を繰り返すスタートアップゲームにこれまでは成功しているように見える。(Valuationの上がった非上場株式は、Exitまで絵に描いた餅だが)このように、資金調達後10年間の受託開発及びOEM事業の後に...というパターンもあるのだなと素直に勉強になった。

2000年創業で15年ほど走ってきました。2013年で年商10億円程度と、それなりにビジネスは安定してましたが、受託ビジネスはスケールしない。このまま行くのか? ホントは自分は何がやりたかったんだっけ? そういうことで悩んでいたとき、投資家から会社を3社に分けてはどうだとアイデアをもらった。(techcrunch記事)
事業会社やVCから資本を入れて、2005年にまた受託に業態を転換した(techcrunch記事)
Sprocketは「人的分割型新設分割」と呼ばれる方法で、ゆめみから分離独立した。実はネイル写真共有アプリの「ネイルブック」を提供するスタートアップ企業のスピカも、ゆめみからスピンアウトしていて、外部から2014年4月に5000万円の資金を調達し(その後、追加で1億円を調達)ている。だから、ゆめみは3社に分裂した形になる。「人的」とある通り、3グループに社員を分けた形だ。面白いのは、3つの会社の資本構成は全く同じで、既存投資家に影響はない(techcrunch記事)

20141208_Seed1

概要
- 新設分割から8ヶ月後、初の資金調達
- A種類株(x1.5)、Pre-val 450mil、60mil調達、11.77%分発行
- B Dash Ventures

状況

当社が提供するSprocketはすでに大手企業での導入実績が多数。....事業開始当初は米国Badgeville社のプラットフォームのOEM提供を受けておりましたが、昨年度中に自社プラットフォームの開発を進め、切り替えを完了させています  (調達時プレスリリース)

種類株_残余財産分配権


- 順位1_A種株主優先分配権: 1.5倍
- 順位2_参加分: A種:普通=1:1にて分配される
comment:
- 参加分に関する記載について。この謄本では、"A種類株主...に対して"と、A種類株主についてのみ言及している。通常、"A種類株主..及び普通株主に対して"と並列で記述されることの方が多いため、国語の問題として少し考えてしまった。(まさかA種類株主の総取りか?、と初読では捉えてしまった)

種類株_取得請求権

- 一定の事象が生じた場合、A種株主は、償還(金銭の返還)と転換(普通株式への転換)ができる。一定の事象とは、A種類株主総会の決議なしに、会社が株式発行や合併等を行った場合。
- この時の償還額は払込価格の1.5倍転換される普通株数も1.5倍。なお、上場時の種類株から普通株への転換は、1倍(以下条項参照)。

種類株_ラチェット条項

- 既存株式に、潜在株式は含まない、ナローベース。

comment: 
- 種類株を普通株へ転換する際に勘案するべきラチェット(希薄化)条項について、定められている。過去の発行価格より割安(ダウンラウンド)で株式発行が行われたとき、既存種類株主をある程度保護するもの。具体的には、普通株式への転換価格を下げることで、彼らが受け取る普通株式を増加させる。
- 潜在株式を含まないナローベースゆえ、投資家有利(普通株主に対して)である。また、計算式において、"発行済普通株式"と種類株式を含まない記述をしている。別途、種類株式を普通株式へ転換したと仮定し株式数を調整する条項もない。しかし、"1株当り払込金額"の調整に限定する取り決めがあることから、断定はできない。種類株式を含まないとなると、より投資家有利だ。(取得請求権の定めを別途置いているのもまた投資家有利だ)
- 残余財産の記述もそうだが、当社の謄本は、不明瞭で読みづらい。実現したい経済的実態のパターンは、世の中にそれほど多くはないのだから、誰かが音頭をとって会社横断的に記述を統一するべきではないか。会社ごとに著しく異なる。

20150202-0424_Seed2-Seed3

概要
- 前回のA種類株による調達から3ヶ月後、同株価
- 普通株、Pre-val 450mil、62mil調達、10.95%分発行
- エンジェル投資家

状況

B Dash Ventures株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:渡邊 洋行)が運営するファンドなどを割当先とする第三者割当増資を実施し、1.2億円の資金調達を実施しました。割当先には、DACの創業者である横山隆治氏をはじめとする、デジタルマーケティング領域・B2B領域に強みを持つエンジェル投資家数名も含まれています。  (調達時プレスリリース)

comment: 
- A種株式を発行した後に、5ヶ月をかけて、同株価にて、普通株式により資金調達をしている。プレスリリースを見ると、会社は、A種発行からはじまる3回の資金調達を合わせ、120milのラウンドと定義している。次回調達時のリリースにその将来時点のラウンドをSeriesAと会社が定義していることから、本ラウンドはSeedとした。
- A種株式は優先分配x1.5の参加型なので、同時点の普通株式より、理論valuationは確実に高い。ゆえに、今回の普通株式は割高に発行されたことになる(時の経過も、SaaS事業の理論valuationを高める)。リリースを見ると、投資家は、VCと個人。VCが普通株式へ投資することは想定されないので、Seed1(A種株式への投資)はVC、Seed2-Seed3(普通株式への投資)は個人であると想像した。VCにとってはグッドディール、個人はもう少し交渉をしても良かったのかもしれない。

20170131-0210_SeriesA1-A2

概要
- 前回の普通株による調達から1.5年後、株価1.5倍
- B種類株(x1)、Pre-val 853mil、160mil調達、16.44%分発行
- D4V、アコード・ベンチャーズ

状況

現在Sprocketの顧客は約100社。年商は2〜3億円のレンジで成長している (調達時リリース)

- ARR300mil
- サービスリリースから2年経過

種類株_残余財産分配権

- 順位1_A種株主優先分配権: 1.5倍 & B種株主優先分配権: 1倍
- 順位2_参加分: B種:A種:普通=1:1:1にて分配される
- A種とB種の優先分配は、同順位にて行われる

種類株_その他
- A種と同様の償還・転換事項の定め、ラチェット条項はナローベース(投資家有利)

comment: 
- 謄本におけるB種のラチェット計算式が、A種のままで修正されていない。"新たに発行する普通株式の数"ではなく"新たに発行する普通株式又はA種優先株式の数"が正しい(ような気がする)。

- A種とB種は同順位にて優先分配を受ける。A種は引き続き1.5倍であって(B種が現れた段階で1倍に修正するケースもある)、かなり強い権利を与えている。
- ARR300mil、Pre-val/Post-valが853mil/1,013milなので、PSR2.84/3.38倍フロムスクラッチが同じくARR300imlのラウンドでPre-val 1,416mil、PSR4.72倍。プレイドはβプロダクトをクローズリリースした段階でPre-val 600milにて調達している。もう少し高め目指しても良かったんじゃないかと少し考えた。


- D4V、アコード・ベンチャーズからの調達。銀行系、商社系、NVCC等、MAツール事業者へのお馴染みの顔ぶれがまだ出てこない。横並び思想が強い彼らは、他社valuation事例を持ってくれば比較的そのvaluationに寄せてくれるので交渉はしやすいのだが。(その分、割安発行事例があるとやりづらくはなる)
- 10日の間隔で、2度、B種株式を発行している。同一株価なので管理実務上の大きな問題にはならないが、1円でも株価が異なれば、別の種類株となって、定款や謄本の定めは当然に別個のものになり、種類株主総会もまたそれぞれ開催しなければならなくなる。謄本を眺めていて、少しずつ株価を変えながら、種類株式の名称を、”A1種、A2種、A3種...”として資金調達をしている会社が稀にある。管理実務は煩雑極まりないだろうな、と想像する。

20180713_その他

概要
- 前回のB種類株による調達から1.5年後、同株価
- 普通株、Pre-val 1,013mil、18mil調達、1.74%分発行
- 不明(創業社長?)

comment: 
- SeriesAから1.5年、そろそろSeiresBとしてPost-val 4,000mil程で資金調達かな、と思ったが、前回のB種株式と同価格で、普通株式を発行して18milを調達した。優先株式ではなく普通株式であることを勘案しても、valuation的には割安。
- この直前に、ゆめみ社(分割元会社)が、第三者割当増資により上場企業の子会社化されている。その際のリリースに、子会社化される直前の株主構成の記載があった。


(7) 大株主及び持株比率:
   ・株式会社セレス   35.2%
   ・深田 浩嗣     21.4%
   ・片岡 俊行     17.2%  (子会社化リリース)

4年前に分社した際のリリースに、資本構成は全社同じとの記載があった。片岡氏はゆめみの創業者(のひとり?)で、現在も社長。深田氏はSprocketの社長。セレスの希薄化が35.2%なので、Sprocketを創業した際の深田氏の持ち分は約33%ぐらい。その後Sprocketは約40%程希薄化したので、いまの持ち分は約20%強かな。となると、若干少ない気もするので、持ち分を増す取引をしたのかもしれない。ただ、あまりに仮定が多いし、数字が合わない部分もあるので、あくまで空想。ゆめみの謄本取れば解るのだけれど今日は日曜日(謄本取得サービスは平日の昼だけ)。
- 創業者の持ち分を増やす策は、新株予約権を使うのが一般的。

(どうでもいいけど株式会社ゆめみの過去推移が素晴らしい)

- 当社(Sprocket)、決算公告をしていないので、決算書を見ることができなかった。決算公告は、全ての株式会社に義務付けられていて、罰則もあるのだが、実際にやる会社の方が遥かに少ない。これに限らず、マジメな正直者がバカを見る全てのルールは、正しくない。

決算公告を怠った場合の罰則は、100万円以下の科料処分(罰金、976条)となる。しかし適用された例は極めて少ない。法務省や経済産業省では罰が科された前例について統計をとっておらず、法務省民事局の担当者は「実際に罰せられた例は聞いたことがない」という。(産経新聞記事)

- ちなみに、それでもやる会社があるのは、減資に際しての債権者保護手続で必要なため。

ーーー

当社、クライアントから調べてくれと言われて調べた。資本政策以外では、以下の特徴点があって、好きな会社だと感じた(これは珍しいこと)。
- 創業の経緯: 受託開発やOEMを続けながら粘り続けて新設分割により創業
- 複数事業: ゆめみ社、スピカ社も引き続き拡大している
- プレス姿勢: 記事情報やインタビューが少なく、調達リリースも殆ど出していない
- 資本政策: まだSOを発行していない


以上

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