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これまでの管理、これからの管理、昔話

管理業務の将来を考えていたら、逆に昔のことを思い出したので、書いてみます。 *ハウツーは最後まででてきません

要約

①以下に関する私の感想
 -windowsインストール型app時代の記帳代行
 -SaaS型ツール時代
 -AI支援型ツール時代
②変化に対応できない恐怖

「ジリ貧になるから、記帳代行はやっちゃダメだよ」

独立開業した2011年頃、仲良くしていた開業会計士や税理士の先輩たちに何度も言われました。記帳代行とは、顧客企業の取引を複式簿記化する仕事です。windowsのインストール型Appである弥生会計、同excel、outlookメール、ローカル保存、全て帳票は紙ベース。このような仕事環境下では、工数がかかる割にフィーを貰えない、儲からない仕事でした。

人脈や戦略のない若年者として発作的に開業してしまった私はすぐに食えなくなって、貰えた仕事はなんでもやりました。その中にはもちろん、記帳代行がありました。リビングに大量の領収書と請求書を並べ整理し、通帳とクレカデータを全件打ち込む。そんな作業を必死にこなしました。

SaaS型ツールの登場

2年ほど経って、コミュニケーションはメールからチャットに移行され(当時はhipchatを中心に、FBのDMルームを補助利用)、googleがgoogleDriveやspreadsheetの正式版を、そして、freeeとマネーフォワードが、ブラウザで駆動する会計ソフトをローンチしました。windows専用Appを使う必要がなくなったことで、私はやっとmacを主たる端末として仕事で使えるようになりました。

全データをgoogleDriveにPDF化し整理保存、spreadsheetで情報加工。預金やクレカは会計ソフトがアグリゲーションして全件取得し、摘要とのマッチングにより勘定科目を充ててくれる。私の実感では、コニュニケーション方法と端末の変化も合わせて、10倍ほど効率が改善されました。時給では10倍になった感覚です。また、googleDriveに全情報を集約した結果、記帳前の請求書や売上管理表、経費精算周りのデータ整理や業務フロー設計も依頼されるようになり、そこから法務や労務、資本政策や予実管理を含む経営管理全般の仕事を請けるようになりました。

ツールによって効率化されたことで、当時儲からないと言われていた記帳代行で私はこの数年、同業他社比較でかなり稼ぐことができました。私が優秀だったからというわけではなく、業界が著しくテクノロジに疎く、かつ、管理全部をまるっとテクノロジを使い効率化し、そして実務対応もするというプレイヤが全くいなかったことが要因であると考えています。

振り返って考えてみて、ポイントだったのはクラウド会計ソフトの登場です。食うために仕方がなくイライラしながら弥生会計を使っていたので、freeeがこれをリリースした時は嬉しくて、全ユーザの中で一番最初に飛びつきました。そこで早速、解説ブログを執筆。用法だけでなく、クラウド会計、さらにはクラウドベースで完結する管理業務の未来について様々語りました。

幸運だったのは、まだ規模の小さかったマネーフォワード社に、親しくしていた先輩が勤務していて、私のブログ記事を読み、会計ソフト開発プロジェクトにアサインしてもらったことです。当時家計簿サービスだけを展開していた同社にとっての新商品でした。懸命に機能やデザインを考えつつ、開発者の方々の話を聞いたことで、同プロダクトの理解が深まったし、将来の拡張性を信じて、全ての管理業務をMF会計ありきで設計していきました(弥生等を切り捨てて)。MF会計は発展し続けたので、それは正解でした。

その後請求書発行や給与計算、労務管理などがSaaS化される都度、業務設計を再考し続けました。未だツール化されない部分や、クライアント独自の業務は、特別にGASコーディングして対応しています。「SaaS型ツールをフル活用した経営管理の効率的設計と運用」というサービスベンダとしては、しばらくの間、最も有能だったと想像しています(誰もやらないから)。ただし、最近では似たようなサービスを提供する方々もいるような気がするので(見たことはないですが流石にいないとおかしい)、この業態はもう特殊ではないかもしれません。私にとってはPPMでいうところの"金のなる木"状態であって、ここから更なる発展を求めるのならば、そろそろ新しい取り組みをしないとな、と思っています。まぁ、機械学習・ディープラーニング・AIでしょうか(以下、AIと表記)。

今後のこと

AIに支援された管理業務、この実装に向けて研究しています。ツール側に実装されたモノをどう使うのか、こちらが用意したモノによりどう既存作業を支援するのか。ツール側のAI実装プロジェクトにどのように関わるか。私の仕事が効率化されたり、質が上がって報酬が上がるモノから逆算をして、順次取り入れます。具体的な仕様は、実装して運用が開始されてしばらく経ってから、どこかで書くかもしれませんが、「実はAIでやってましたー」と後々つたえた方が面白いので、当面黙っておきます。「今更やってるの?遅くない?」という指摘はその通りですが、しかし、私はスタートアップ起業家ではなく実務担当者なので、いま使えていま役に立つものにしか経済価値を見出しません。テクノロジがその状況に至るまで、仕事として工数を投下しません。

変化に対応できない恐怖

googleAppsやクラウド会計ソフトをはじめとする、2010年代前半の一連のSaaS型ツールが広まった際、私は効率性が10倍上がったと実感しました。そのひとつ前の変化を経験していませんが、excelや弥生会計などのインストールwinApp型ツールがローンチされた時も、著しく効率が上がったものと想像します。一方で、その時点で新ツールに乗り移れなかった人々は、未だ相対的非効率に残って仕事をしている、私はこのことに恐怖を覚えます。人は一度その状況で最適を実装してしまうと、変化を拒絶するようになります。若者より年寄りの方が変化を嫌がりますし、能力的にも対応ができなくなります。私もいよいよ、学習能力や思考スピード、体力や精神力の低下を実感していますが、SaaS型ツールからAI支援型ツールへの過渡期にはなんとかフロンティアでついていきたいなと、がんばっている次第です。

ありがたいことに、このAI支援型管理ツールへの移行タイミングでも、クラウド会計ソフトがローンチされたときのように、再び私は幸運な状況にあります。ツールは、"作る側"と"使う側"とに分類されます。私はできるだけ、"作る側に限りなく近い使う側"にいるように心がけています。そのポジションが、最もリスクが低くリターンが大きいように観察されるためです。

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