株式会社フロムスクラッチの資本政策_20180831更新

この記事は?

- 非上場企業の資本政策をサクッとまとめコメントしてます
- 私の勝手な意見には、"comment"とタグ付けしています
- アップデートがあれば都度更新します
- 謄本・官報・web記事から情報を取得しています
- 私は経営管理の人間であってビジネスに興味はありません
- 元々、私の個人メモです

ポイント

- 匿名法人株主へ16.67%発行後、株価を4ヶ月後に49.1倍、10ヶ月後に169.5倍にして調達
- SeriesC、プレスリリースの32億円と謄本・官報記載の25億円との差分が私には不明
- 会計監査人の設置がバックデート
- ソフトウェア資産減損の話

資金調達一覧

20100406-20111230_創業1st-2nd

概要
- 2010~20111230にかけて、10milにて創業
- 以降、201509期まで外部調達なし

comment:
- 発行済株数200株は少ない。近い将来分割が必要になる恐れあり。
- 発行可能株数600株は少ない。多くて困ることはないのだから、会社設立時に何も考えず1億株にしておくべき。定款及び登記変更事項であって、その後の手間とコストになる。当社は201809期までに3度追加で発行可能株数を増加させている(うち1度は株式分割に伴い自動増加したもの)。

2010年に設立した会社ですが、2011年から新卒採用を行っています。(社長談)
2008年4月、新卒にて組織人事コンサルティングファームであるリンクアンドモチベーションに入社。ナショナルクライアントを中心に、HR領域の組織開発、人材採用、人事制度構築コンサルティングのプロジェクトマネジメントを経験。その後、2011年にフロムスクラッチに入社。デジタルマーケティングコンサルティング部門のMGR...(社員経歴)
リンクアンドモチベーション出身の安部泰洋氏が代表取締役として同社を創業したのは2010年4月のこと。創業当時は企業コンサルやデジタルマーケティング支援などを請け負い、現在50名(営業やコンサルタントより開発の方が多め)ほどの陣容で事業を運営する中堅企業に成長している。(リリース)

- 創業時から新卒を入れていたようだ。中途でも採用していたようだ。5年間は、コンサルティングやデジタルマーケをしていた、とのこと。そしてその中での課題感からプロダクト開発に至ったもの。資本政策上、このケースでは、借入等がしやすく、銀行取引(手数料など)も有利に進められる。しかし、エンジェル税制Aが使えない。
(当社のプレスリリース、社長の経歴も含めて、リンクアンドモチベーション社を”経営コンサルティング会社”と記載しがちなのだが、上記wantedlyブログのこの方の経歴では”組織人事コンサルティングファーム”となっていて、それは妥当だと思った) 

20150130_Seed

概要
- 初の外部調達(資本構成調整に限りなく近い)
- 普通株、Pre-val 24mil、4.8mil調達、16.67%分発行
- リンクアンドモチベーション(推測)

状況
- 5年間のコンサル期間を経て、プロダクトローンチ後、それを加速するための本格的外部資金調達(SeriesA)直前

comment: 
- この4ヶ月後に49.1倍、10ヶ月後に169.5倍の株価にて資金調達をしている。将来長く事業にコミットさせるために、キーパーソンをほぼ創業メンバーとみなし、圧倒的有利な条件で付与するエクイティインセンティブ、このための資本構成調整かなと当初考えた(そうであってもSOで対応するべきだが)。しかし、その後のSeriesAプレスリリースに、

Draper Nexus Venture Partners、伊藤忠テクノロジーベンチャーズおよび既存株主(計4社)

との記載。”既存株主”が入るタイミングは、本Seedラウンドしかない。また、20140509当社リリースの

平成26年3月14日開催の取締役会にて締結した基本合意書に基づき、経営コンサルティング会社、株式会社リンクアンドモチベーション(代表取締役会長小笹芳央 本社:東京都中央区銀座)を割当先とする第三者割当増資を実施致しました。(会社HP)

という記載以降、初めての増資登記が本Seedなので、恐らく引受先はリンクアンドモチベーションであると推測している。(また、リンクアンドモチベーション社の20140315付株主総会資料でも当社への投資について言及されている。(公表資料))
- この"第三者割当増資を実施しました"という発表から8ヶ月間、それは実際に行われなかった。
- 本Seedに割安で入りSeriesAに匿名で乗ったもう一社はわからなかった

20150401_分割2000倍

概要
- 2000倍分割

comment:
- 分割は上場時の公開価格が2500-5000円のレンジに収まるように実行するべき。ゆえに上場直前に一度だけ実行するのが合理的。
- しかし発行済株数600株は少なすぎ、仔細な割合を勘案した資本政策を実行できない。将来端株が生じて事務コストが上がる可能性がある。
- したがって、ここで分割している。コストは、登録免許税が3万円と株主総会実施工数(官報公告避けるために少し面倒な手続きあり)。
- どんな会社であっても、創業時、発行済株数を1mil株とすべき。

20150605_SeriesA

概要
- 前回の普通株による調達から4ヶ月後、株価49.1倍
- A種類株(x1)、Pre-val 1,416mil、290mil調達、17.00%分発行
- Draper Nexus Venture Partners、伊藤忠テクノロジーベンチャーズおよび既存株主(計4社)

状況

運用実績もあり、最低月額料金は50万円(12カ月契約でその他PV等の従量課金が加算)からという価格にも関わらず、既に50社ほどが導入をしているという。(調達時thebridge記事)

- 最低50万円/月が50社、最低MRR25mil、最低ARR300mil

種類株_残余財産分配権


- 順位1_A種株主優先分配権: 1倍
- 順位2_参加分: A種:普通=1:1にて分配される
- "払込金額の1倍相当額"と、優先倍率が直接記載されている(直接、というのは、通常、ここには金額が記載れており、優先倍率は当該金額を払込金額で割ることで算定するため)

種類株_種類株主総会決議事項

- 会社法で求められる種類株主総会決議事項を、別途拡大している

comment: 
- 既存株主2社が、名前を公表していない。直前のSeedラウンドにおいて割安で引き受けたためか。DraperはUNCOVER TRUTHにも入れていたが、当社と競合はしないのだろうか。
- 種類株の内容はほぼ雛形通りのシンプルなもの。
- 推測ARRが最低でも300mil、Pre-valが1,416milなので、最大PSRが4.72倍。ただし、コンサル売上がかなりあると思うので、ARRは更に高くPSRは更に低い。ちょうど同時期(20150728)に、同業種のプレイドがサービスローンチ後6ヶ月という状況において、SeriesBでPre-val 2,439milで調達している。
- 種類株主総会決議事項を拡大すると、管理としては工数とコストが上がる(通常の総会と別途議事録等書類を作成しなければならない)。投資家が事前に把握したい、ないしは協議したい事項については、一般に投資契約書で定められているし、種類株主の権利に関するものは会社法でそもそも種類株主総会決議を要求しているため、別途このように定める必要はないのではと考える。

20151204_SeriesB

概要
- 前回の普通株による調達から4ヶ月後、株価4倍
- B種類株(x1)、Pre-val 5,881mil、1,000mil調達、14.53%分発行
- グローバル・ブレイン、電通デジタル・ホールディングス、日本ベンチャーキャピタル

状況

今回の調達はマーケティング・オートメーション市場の活況が後押しとなって実現したという。また、同社が提供するマーケティングプラットフォーム「B→Dash」の導入社数が100社を超えたことも教えてくれた。(調達時thebridge記事)
「今年の5月に調達を実施した際、次の(調達)ステップは来年ぐらいに計画していたんです。ただ、この分野のビジネスが活況になっていることと、何より自分たちが予想以上に伸びていたんですね。こうなると誰が天下統一するかということになりますから早めにやろうということになったわけです」(安部氏)。
(調達時thebridge記事)

- 最低50万円/月が100社、最低MRR50mil、最低ARR600mil

種類株_残余財産分配権


- 順位1_B種株主優先分配権: 1倍
- 順位2_A種株主優先分配権: 1倍
- 順位3_参加分: B種:A種:普通=1:1:1にて分配される
(その他、引き続きB種種類株主にも別途決議事項の定めあり)

comment: 
- 謄本における種類株式の定め、当社は、種類株式ごとにパラグラフを分けて記述している。一般には、権利の内容ごとに(例えば"残余財産の分配"など)A、B、普通の取扱を書く。当社のこの記法だと内容重複が多く長くなり、順番に読み進めることができない。
- 推測ARRが最低でも600mil、Pre-valが5,881milなので、最大PSRが9.8倍。ただし、コンサル売上がかなりあると思うので、ARRは更に高くPSRは更に低い。前ラウンド時50社だった導入先が、半年後に100社。MoM12%、YoY390%。この実績を引っさげて、5,881milで1,000milの調達は素早さ・希薄化率・valuation、いずれも素晴らしいと思いました(投資家に金融系VCが入っておらず、もっと調達しようと思えばできたはず。調達担当者はメガバン出身らしいし。)。
- 2018年現在のマーケット状況及びtoB SaaSへの理解度向上を踏まえると、より高いvaluationを目指せるかもしれない。

20170515_SeriesC

概要
- 前回の普通株による調達から1.5年後、株価1.5倍
- C種類株(x1)、Pre-val 10,149mil、2,425mil調達、19.29%分発行
- 株式会社産業革新機構、Rakuten Ventures Japan fund、既存株主

状況
- 調達のリリースを確認したが、SeriesA・B時に公開されていた導入社数の情報は、発見できなかった。
- 界隈の有識者に話を聞くと、年商は概ね1,000milぐらいではないか、とのことだった。2015年中の勢いを持続させるのは難しいか。伸びていたら公表するだろう。

種類株_残余財産分配権


- 順位1_C種株主優先分配権: 1倍
- 順位2_B種株主優先分配権: 1倍
- 順位3_A種株主優先分配権: 1倍
- 順位4_参加分: C種:B種:A種:普通=1:1:1にて分配される
(その他、引き続きC種種類株主にも別途決議事項の定めあり)

comment: 
- 今回も既存株主は匿名。産業再生機構が入っている。機構への資金拠出者は国であって、原資は税金。(私は親族に官僚が多く、納税を否定するものでは全く無いが)なぜ私の納税したお金がこのベンチャー企業の成長原資になっているのかが、全く理解できない。
- リリースに基づくと、当社は、32億円の調達をしたようだ。その後の広報文でも常に、「総額45億円調達でおなじみの〜」等の言葉が記載されている。

第三者割当増資等により、総額約32億円の資金調達を完了しましたことをお知らせいたします。(会社HP


- ただし、謄本に基づくと、資本金の増加は1,212milで、同額を資本準備金に計上しているとしたら、25億円ほどになる。リリースに、第三者割当増資”等”とあることから、自己株式処分か、借入・私募債発行などの可能性もある。前後のBSを確認するべく官報を見ると、

- 流動負債・固定負債ともに増えていない。ゆえに借入や私募債ではない。資本金と資本準備金の当初差額、14milは創業1stと2ndの合計と一致するため、恐らく自己株式はない。
- 201709年度は減資をしているため少しトレースし辛い。減資額は、資本剰余金から1,116mil、利益剰余金から656mil。201709末BSを減資前のものに直すと、資本金1,872mil、資本準備金1,858milとなる。これはつまり冒頭の調達額が25億円だった場合と同値となり、リリースにあった32億円と差分がある。
- 子会社での調達でもなかった。固定資産が564mil減少していて、これの売却分を調達とした可能性は、、無いと思う。この減少は以下と推測されるし、さすがにそんなリリースはしないだろう。
- 利益剰余金の動きが、少し興味深い。前期末が△656mil、減資で同額を填補したので0になり、当期純損失が△1,244milなので期末利益剰余金は△1,244milになるべきところ、△1,794milと550milのズレ。これは後述のソフトウェア資産減損ではないかと妄想。
- 結論、リリースの調達32億円と登記・官報上の調達25億円、この差分は私にはわからなかった。

201709_減資

comment: 
- ここで創業以来はじめての減資をしている。しかし、20151204のSeiresB調達直後の段階で、資本金の額は659milと、100milを超えている。資本準備金を加えた資本金等の額に資本割税率を掛けた納税額が3年間で約7mil生じている。201609期でやっても良かったかもしれない(資本割税率が毎期動いているのは増税のため)

20161216-20171215_会計監査人設置関係

状況: 
- 会社法上、最終事業年度の期末資本金が5億円を超えていた場合、その事業報告がなされる定時株主総会において会計監査人を設置し、翌年度から会計監査を受ける必要がある。
- 当社は20151204に資本金が5億円を超えたので、201612頃に行われる定時株主総会において会計監査人を設置し、201709期は会計監査を受ける必要うがあった。
- 謄本を見ると、201612に会計監査人設置会社に移行とあるが、登記はおよそ一年後の201710。会計監査人の就任は同じタイミング。
- 201709期中に減資したため、期末資本金が5億円を下回ったことにより会計監査人の設置は義務ではなくなり、当社は会計監査人を廃止した。

comment: 
- 会計監査人の設置を忘れていたのか?社内管理担当者や顧問税理士、VC等も見逃していたのか。もしくは定時株主総会で設置しなかった場合、このように1年間バックデートして登記するのだろうか。
- 監査人を急いで探すデメリットはかなり多い。①値段交渉が厳しくなる、②決算タイミングを理由にBig4系が受諾してくれない、③会社の意図と異なった会計処理を求められる。①・②はいずれ記載するとして、今回は③について。

- 前述の官報に、固定資産が564mil減少している事実があった。これは完全に妄想の世界だが、ソフトウェア資産の減損ではないかと思う。

ソフトウェア資産計上について 

- 201609期末において、固定負債が327milあって、これは銀行借入だと推測する。コンサル事業により会社運営をしていた時期も長く、安定CFがあって、借入は一般的なスタートアップと比べれば容易だろう。
- 一般に、借入にはコベナンツが付与されていて、債務超過になると会社側が不利になる。従って、財務担当者は、この点留意する。当社、期末純資産は649mil、そして固定資産が621miだった。
- ソフトウェア資産は、費用を減らしながら資産を計上するものであり、監査法人の指導が無ければ、財務会計でなければ、つまり税務会計の世界では、殆ど自由に計上することができる。税務上は納税者不利になるためだ。
- 一方で、財務会計上のソフトウェア資産計上は、SaaS型企業においては、あまり論理的ではない。将来CFを前提とするその要件では、営業費用もまたCFマイナス要因だ。「粗利ベースでは黒字ながら、拡大し続けるために営業費用を投下する。結果として収支はマイナスであり続ける」という一般的モデルにおいて、財務会計上のソフトウェア資産は計上要件を満たすことができない。
- 当社の状況を私が妄想したものをまとめると、会計監査人設置のバタバタを見るに、当社は監査を201709期から受けている。201609期は借入のコベナンツを意識してソフトウェア資産を550mil程計上した。税務会計なので誰も文句は言わない。201709期に入り監査法人をアサインし、事業計画を提出したところ、営業費用投下による将来CFマイナスの状況ではソフトウェア資産計上を認めないと言われ、これを減損した。ではないか。

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以上_ SOはまた今度書こう(最終更新_20180831)

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