地方自治体の収入概論

最近はとにかく、地方自治体の収入について考えている。一度日記で書いたことだけれど、自分のために再び少しまとめる。

F町。

町の収入のうち、税収は30%程度である。税収の50%は固定資産税。固定資産税は固定資産税評価額を算定要素とするため、建物を建てるか、リノベするかによって向上する。税収の33%は町民税。住民票を移し住民税を納税することで向上する。

同じく主要な収入は地方交付税28%。人口などを基準に算定された自治体に必要とみなされるお金のうち、不足分を国から配分されるもの。不足分の算定式は、基準額 - 税収*75%。したがって、税収の増加のうち75%分は、交付税の減少により打ち消される。ゆえに、税収向上が町の収益全体への与える影響は、その25%程度なのである。

ただし、ふるさと納税は、前述の税収を構成しない。ふるさと納税による寄附受領額が増えたからといって、国からの地方交付税は削減されない。町の受領金額から諸経費を差し引いた金額がそのまま町の収益となる。さらに、詳しい仕組みの説明は省くが、ふるさと納税には、国税・県税から町税への納税先振替効果もある。したがって、①F町に住みそのまま町税を納税、②F町外に住み上限までF町へふるさと納税、③F町に住み上限までF町へふるさと納税かつ町税を納税では、③-②-①の順序でF町にとっては収益が大きい。住民税10%の内訳が町税6%・県税4%であること、総合課税所得の3-5%程度がふるさと納税上限値であること、そして前述のとおり交付税の減額により町税納付の貢献効果はその25%程度であることを背景にある。所得を100としたとき、前述のケース①ではF町の税収は100*6%*25%= 1.5。②では100*5%=5。③では(100*6% - 100*5%*60%)*25% + 100*5% = 5.75。②と③の差は15%程度である。

消費活動について。法人住民税は、組織全体の所得を拠点ごとの従業員数により按分して算定される。したがって、全体に占める拠点規模が小さいと思われる店舗で買い物をしても寄与度は小さい。自治体への貢献という観点からは、小規模組織・個人商店での購買活動に合理性がある。なお、地方消費税は、一度県に集められた上で、各市町村へ人口により分配されるため、同自治体の直接的な収入とはならない。また、前述のとおり、町税が増加するほど交付税は減少するため、消費による住民税向上の貢献効果は、その25%程度にとどまる。

自治体の収入に重要な影響力を持つ地方交付税における「必要とみなされる価額」は、人口を主な算定係数とする。したがって、「住民票を移して人口を構成すること」が、所得・消費・固定資産投資といった活動にかかわらず、当該自治体の収入増加につながる。F町の地方交付税は約21億円、人口は15,000人。乱暴な計算をすれば、140,000円/人の地方交付税増加効果が、住民票を移動するだけで生じる。

しかし調べるほど、ふるさと納税という制度の欠陥が目につく。そもそも、納税の対価として30%ほどの価値を受け取る、という制度設計が間違っている。納税の対価は、行政サービスとして受け取るべきだ。仮に自治体間で課税の不平等があるのなら、それは国が例えば前述の地方交付税のような機能を使って調整すれば良い。欠陥への言及を続ける。ふるさと納税は、地方交付税算定における自治体収入を構成しない。したがって、どれほどふるさと納税を受領しても、地方交付税は減額されない。「不足している」とはみなされない。ゆえに、居住民は、住民税として払えば地方交付税が75%減額されるところ、これを寄附金(ふるさと納税)として居住する自治体に払うことで、同自治体は地方交付税の減額を免れられる。住民税を減らし寄附金を増やすことに、制度上の欠陥をつくインセンティブが生じている。第3の欠陥は、県から市町村への税収移転である。住民税は、それが総合所得の場合、市町村税6%・県税4%にて課税される。この点、ふるさと納税を実施した場合、ふるさと納税額が差し引かれた後の納税義務を、6:4で按分するような計算になる。市区町村税だけからふるさと納税額を控除するわけではない。

とりあえず、ここまでを一旦のまとめとする。本記事は保存版として、思いつくつど追加・更新していく。

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