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きみの背中が、見えなくなっても。【ショートストーリー】

さっきまで何度も保安検査の手順を確認していたきみは、一度もこちらをふり返らずにゲートをくぐって行った。

きみは、リュックを背負いなおして前を向く。
12歳。まだ細く頼りない背中だけど、ずいぶんと大きな荷物を背負えるようになったものだ。

出発ゲートの場所を教えようと携帯を鳴らしても、応答はない。

大丈夫。きっと、大丈夫。

デッキへ行きたい気持ちを抑え、駐車場へ向かった。

さて、今日はなにをしよう。
きみがいない2週間、わたしは十数年ぶりの一人暮らし。

「定刻通りの予定です。お迎えよろしく」きみの父親へ、メールを入れる。

いつか今日のように、きみは前だけを見てわたしの元を旅立つだろう。
その背中を、きちんと見送ることができるだろうか。


車のエンジンを入れると、きみの聴いていたアニメソングが流れはじめる。

わたしのお気に入りの曲に変えて、窓をあけアクセルを踏む。

晴れた空に、いくつもの飛行機がとびたっていった。



お読み頂き、ありがとうございました。 読んでくれる方がいるだけで、めっちゃ嬉しいです!