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どうせなら、発光する言葉をつかいたい。

苦手な人と話すとき、嫌味なほど明るく振るまってしまう癖がある。


苦手な上司「ねぇ、なんでこれやってないの!?」
わたし「失礼しました! すぐに取り掛かりますね。教えて頂いて、ありがとうございます!(ニッコリ)」

…みたいな調子だ。
この時、心のなかでは「お前が他の業務優先しろって言ったんだろうがよ!!バカかよ!!」と、めちゃくちゃに悪態をついている。


小さないじわるで、他人を支配したり、自分のストレスを他者に塗りつける人は結構いる。

最近、言霊を「呪い」と表現するのをよく見かけるようになったけれど、小さないじわるで発せられた言葉はまさしく、他者の心を弱らせる黒い呪いだ。

本人が無意識にやっている分、こちらも相手に怒りをぶつけづらく、余計にたちが悪い。


わたしの「ありがとうございました!(ニッコリ)」は、その程度のいじわるに負けるわたしじゃねぇからな、という宣言だ。
明るい呪いをかけ返すイメージで、言葉を発している。

相手に良心が残っている場合、いじわるを封じ込めるのに割と効果がある。

◇◇◇

ここまで書いてきたけれど、わたしは「みんな処世術を体得して、人間関係うまくやってこうね♡」とは思っていない。

むしろ、いじわるな呪いをぶつけられて、「お前が他の業務優先しろって言ったんだろうがよ!!バカかよ!!」とそのまま言葉にできる人のことを、めちゃくちゃ尊敬している。

わたしの「ありがとうございました」がただの盾であるなら、この文脈での「バカかよ!!」は、相手の呪いの根源まで突き刺しにいく剣のようなイメージだろうか。
言葉の強さで分かりにくいけど、それはとてもポジティブな言霊だと思う。

いつかその技を使えるくらい、強く優しくなれたらいい。

◇◇◇

「呪い」というなら、名前も一種の呪いだ。

わたしの本名は、「幸」の一字でサチという。

「幸せな人生を歩むように」ではなく、「周囲の人を幸せにできるように」という意味で名づけられた。

これが、わたしが人生で一番初めにかけられた呪い。

若いときは両親のその願いを窮屈に感じて、「人のことを幸せにできると思うこと自体、傲慢じゃないか」と反発していた。

時間が経ち、大切な人が愛おしそうに「サチ」と呼ぶのを何度も聞いたお陰で、今はこの名前をとても気に入っている。

わたしの名前を口にするとき、一瞬でも相手の頭に「幸」の一文字がよぎるなんて、なんて素敵な呪いだろう。

どんな言葉も呪いとなり得るなら、なるべくこんな呪いを使いたい。

発光して、暗い言葉の呪縛を解くような、そんな言葉を持っていたい。


お読み頂き、ありがとうございました。 読んでくれる方がいるだけで、めっちゃ嬉しいです!