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17日目:たび【旅】→エッセイ

たび 【旅】
住んでいる所を離れてよその土地へ出かけること。名所旧跡を訪ねたり、未知の場所にあこがれて、また遠方への所用のため、居所を離れること。旅行。

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ナイアガラの滝を、ひとりで見に行った。
現地ツアーバスのおじさんに、「君はひとりか?ナイアガラの滝は、ひとりで見に行くんもんじゃない!寂しいじゃないか」と怒られた。
そうかなぁと思いながら、でへへと笑ったら、おじさんは「良い旅を!」と心配そうな顔で見送ってくれた。

ナイアガラの滝は、ドコドコと地響きのような音をたてて、水の分厚い壁を作っていた。
「滝=風流、荘厳」という私がそれまで持っていたイメージをぶち壊す、とても野蛮で無慈悲な、地球の裂け目という感じだった。
近づくのが怖くて、柵を握りながらじゃないと前に進むことができなかった。

大自然をみて、ちっぽけな自分を実感するという、ありがちな感慨を抱えて帰路についた。
留学先の大学へ帰る17時間の長距離バスで、夜の街を眺めながら、「寂しいじゃないか」という、おじさんの言葉を何度か思い出した。

数か月後、ナイアガラの滝に日本人留学生が落ちて亡くなったというニュースが流れてきた。年齢も私とそう変わらなかった。
明るい女の子だったそうで、記念写真を撮ってもらおうと柵にまたがってしまったらしい。

それから何年もの時間がたったのに、顔も知らないその女の子のことを、忘れることができない。
ひとりで滝を見にいく寂しい私が、生き残ってしまった。
私の旅の写真は、いつも風景しか写ってない。

やっぱり寂しいかなぁ。寂しいかもな。
でも、誰だって最後はひとりだよ。
心の中で反論してみるけど、そんなことはきっと、おじさんも分かってたよね。


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