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書評: AI をビジネスに実装する方法 - 「ディープラーニング」 が利益を創出する (岡田陽介)

AI をビジネスに実装する方法 - 「ディープラーニング」が利益を創出する という本をご紹介します。

本書の内容

本書が指摘するのは、人工知能 (AI) がインフラのように当たり前に使われる世の中になるということです。

これを前提に、本書を興味深く読めたのは以下の3つの観点から、AI をビジネスにどうやって活かすかです。

この本を興味深く読めた視点
・考え方
・実装するプロセス
・導入した企業の事例 (ABEJA 顧客企業の具体例) 

3つの視点で AI 実装を考える

本書で書かれていて印象的だったのは、AI を実装するにあたり技術的なこと以上に大事なのは、ビジネス発想の観点だということです。

以下は本書からの引用です。

技術的な観点以上に大事なことがあります。それは、その人たちが「ビジネス発想の観点」をもっているかどうか、です。

いくら数学ができても、自社の経営課題が何かを見つけ、それにどう AI を適応させればよいか、その問題解決策、ソリューションを考えられるかどうかは、技術的な観点とは別の次元だからです。その意味では、業務プロセスの理解と、その業務の利益構造をきちんと理解している人が求められます。

 (引用: AI をビジネスに実装する方法 - 「ディープラーニング」が利益を創出する

思ったのは、AI をビジネスで使うにあたっては3つの視点から考えるとよいです。

AI をビジネスで使う3つの視点
・技術
・ビジネス
・顧客やユーザー

3つめの顧客やユーザーとは、いかに AI によって自分たちの顧客やプロダクトの利用者に価値を提供できるかです。ユーザー体験をより良くし顧客満足度を高められるかです。

AI 導入というと技術的な視点に偏りがちになります。しかし、技術以上にビジネスの観点と顧客視点に立ち、目的に立ち返って手段として AI をどう使うかを考えるとよいです。

重要なのは、そもそもの目的 (Why) 、AI で何をしたいか (What) 、これらを明確にした上での AI をどうするか (How) の順番です。

AI 実装のプロセス

本書が提示する AI 実装のプロセスは、大きくは5つです。

AI 実装のプロセス
・取得
・蓄積
・学習
・デプロイ
・運用

なお、4つめのデプロイとは、準備段階のテスト環境下にある AI のシステムを本番の使用可能な状態にすることです。

5つのプロセスは、さらに分けると以下のようになります (全部で9つ) 。

AI 実装のプロセス (細分化) 
取得:データの取得
蓄積:データの蓄積、データの確認、教師データの作成
学習:モデルの設計、学習
デプロイ
運用:推論、再学習

それぞれのプロセスには、ポイントや注意点があります。本書では、わかりやすく解説されています。

以下、ポイントの抜粋です。

データの取得と蓄積
・重要なのは 「どんなデータを取るか」 
・「データの確認」 で引っかかる企業が多い。データフォーマットでお互いに認識のズレはないか
・欠損データの確認を行なう。欠損があれば補う。異常値は必要に応じて取り除く
・取得したデータを教師データにする。人力でタグ付け (アノテーション) をする
学習
・モデルの作成では、実運用まで見据えること。想定するネットワーク特性や運用時の要件とのトレードオフを考える必要がある
・教師データからの学習には、取得した全てのデータは使わない。70~80% のデータを学習用に使い、残りは検証用に残す。100 の全てのデータを使わないのは、データに特化しすぎる過学習を防ぐため
・検証にあたってモデルの精度 (正解) をどのくらいであれば実用ができるのかをあらかじめ確認しておく
デプロイと運用
・テストが終われば本番環境へ移行する (デプロイ) 。次の 「推論」 のために、システム運用の監視など最低限の仕組みを事前に入れておく
・実装された後も継続的な再学習が必要。実運用が始まった後に環境が変われば得られるデータも変化する。最初に学習したデータと現状データに乖離が起これば、モデルの精度が落ちる
・再学習では教師データをもう一度用意する。状況によってはモデル自体を思い切って変える

最後に

本書からの学びは、AI を技術的な観点だけで捉えるのではなく、ビジネスの現場で実装するためにどうすればよいかです。

考え方や具体的なプロセス、見落としたり陥りがちなことが具体的な注意点で1つ1つわかりやすく解説されています。


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