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SWOT 分析の功罪から考える 「顧客視点での競合分析と対策」

今回は、ビジネスでの競合分析についてです。

SWOT 分析をあらためて取り上げ、私がよく使う競合分析の方法をご紹介します。

SWOT 分析の功罪

競合分析のオーソドックスなやり方は、SWOT 分析です。

SWOT 分析とは、頭文字の4つの要素である、Strength (強み) 、Weakness (弱み) 、Opportunity (機会) 、Threat (脅威) を分析します。強みと弱みは内部環境、機会と脅威は外部環境です。

4つの要素はわかりやすく、使われやすい分析フレームワークです。

ただし、SWOT 分析には注意すべきことがあります。注意点に気をつけないと、SWOT 分析は有用ではなく競合の評価を見誤る可能性があります。

一言で言えば、前提を明確にせずに SWOT 分析に入る危うさです。

前提
・ビジネスの目的
・戦略
・想定顧客
・競合設定

SWOT の強み・弱み・機会・脅威は、これら前提によって変わります。

誰の視点で見るか、何と比較するかによって、同じものが強みにも弱みにも、外部環境も機会にもなれば脅威とも見なせます。強みや弱みは相対的なものです。比較する相手や、文脈によって変わります。

では、競合分析はどのような方法が良いのでしょうか?

顧客視点の競合分析 (6つのステップ) 

SWOT 分析の注意点に書いたように、前提を明確にすることが重要です。

私がやっている方法は、自分たちの顧客を具体的にした後に、競合分析をします。具体的には、競合分析は以下の流れです。6つのステップがあります。

前提の明確化
1. 自分たちの顧客を定義する
2. 競合の範囲を決める (顧客の視点で選択肢に入る範囲が競合) 

現状把握
3. 自分たちではなく競合が選ばれる理由 (競合の強み) 、選ばれない理由 (競合の弱み) は何か
4. 選ばれる理由の源泉は何か

今後の見通しと対策
5. 今後、選ばれる理由・選ばれない理由が変わる可能性はあるか (機会と脅威) 
6. 自分たちは、それらへの対策や打ち手をどうするか

1 と 2 で前提をそろえます。3 と 4 で強みと弱みの現状把握をし、5 と 6 から今後の見通しと対策を考えます。

以下、それぞれについて解説します。

[ステップ 1 と 2] 前提の明確化 (顧客と競合設定) 

SWOT 分析の注意点で述べたように、強みや弱みは、比べる相手や誰の立場で考えるかの前提によって変わります。

大事なのは、前提を明確にすることです。競合分析では、顧客を定義することを最初にやります。

顧客が決まれば、競合も決まります。なぜなら、競合かどうかを判断するのは顧客だからです。

顧客が問題を解決するにあたって、顧客の頭の中に浮かんだ選択肢で、自社以外の候補が競合です。競合は、自分たちが決めるものではありません。あくまで顧客の頭の中に持っている自社以外の選択肢です。

[ステップ 3 と 4] 現状把握 (選ばれる理由と源泉) 

顧客から見た競合の 「強み」 と 「弱み」 を見極めます。

顧客が、競合と自分たちを検討した際に、自分たちではなく競合が選ばれる理由が 「競合の強み」 です。一方、その競合ではなく、自分たちや他の競合他社が選ばれる、つまり分析対象の競合が選ばれない理由が 「競合の弱み」 になります。

ポイントは、選ぶ理由を顧客視点で考えることです。

このためには、前のステップで顧客を明確にするという前提をそろえている必要があります。顧客が変われば、自社か競合かを選ぶ理由も変わります。

選ばれる理由 (強み) 、選ばれない理由 (弱み) が整理できたら、それぞれの理由はなぜ実現できているかの 「源泉」 を分析します。

源泉とは例えば、技術力なのか、営業力、豊富な資金、研究設備の充実、あるいは、企業カルチャーなのかです。源泉によっては、競合の中の非公開情報にもなるので、可能な限りで源泉は何かを探ります。

[ステップ 5 と 6] 今後の見通しと対策 (機会と脅威への対応) 

上記で分析した 「選ばれる理由」 と 「源泉」 は、今現在のことです。競合分析として深掘りしたいのは、今後の見通しと自分たちができる対策です。

具体的には、現時点の競合の選ばれる理由がさらに強くなる可能性、あるいは他の要因が新たに選ばれる理由になるかです。SWOT 分析で言えば 「機会」 です。

今は選ばれる理由になっていても、今後は選ばれる理由ではなくなってしまう、または新しく選ばれない理由になるものは何かを見極めます。SWOT 分析の 「脅威」 です。

これらの見通しが整理できたら、競合に対して、自分たちが優位になるためにはどうすればよいかの対策を考えます。競合にとっての機会を減らし、脅威となるような自分たちの打ち手は何かです。

ここでもポイントは、顧客視点です。機会も脅威も、この先の選ぶ・選ばない理由なので、選ぶかどうかを判断するのはあくまで顧客です。自分たちではありません。

まとめ

今回ご紹介した競合分析のやり方を一言で表現すると、「顧客視点での競合分析と対策」 です。3C という市場 (顧客) 、競合、自社の視点で競合分析をします。

顧客視点とは、競合かどうかを決めるのはあくまで顧客であるということです。競合と自社を比べ強みか弱みか、顧客の言葉で言えば競合を選ぶのか自社を選ぶかも、顧客が判断することなのです。

最後にまとめとして、顧客視点での競合分析の全体像です。

前提の明確化
1. 自分たちの顧客を定義する
2. 競合の範囲を決める (顧客の視点で選択肢に入る範囲が競合) 

現状把握
3. 自分たちではなく競合が選ばれる理由 (競合の強み) 、選ばれない理由 (競合の弱み) は何か
4. 選ばれる理由の源泉は何か

今後の見通しと対策
5. 今後、選ばれる理由・選ばれない理由が変わる可能性はあるか (機会と脅威) 
6. 自分たちは、それらへの対策や打ち手をどうするか

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