かかりつけ医、同じ医者に継続して診てもらうことに価値はあるのか・・・?いや、ちょっと待て。

そんなことを書いてある記事がBBCでありました。

Seeing the same doctor over time 'lowers death rates'

記事の中には直接リンクされていないですが根拠となっている論文はおそらくこれですね。

Continuity of care with doctors—a matter of life and death? A systematic review of continuity of care and mortality
Denis J Pereira Gray1, Kate Sidaway-Lee1, Eleanor White1,2, Angus Thorne1,3, Philip H Evans1,2

かなり簡単に日本語で要約すると、

・1996 to 2017年の論文を検索。論文は英語でピアレビューのあるものに限る。

・検索エンジンで726本の論文見つかりましたが、絞ってみたら 22本になりました。

・全てコホート研究・横断研究でした=RCTは1つもなかったです。

・多変量調整していました

・9個の国の研究が含まれていました

・質の高い18 (81.8%)の研究は、 ケアの継続(同じ医者にかかる事)が死亡率の低下と関連していました。3つの研究は関連無し、1つは混在。

・「かかりつけ医」は、いわゆる総合医だけではなく、専門医もいました。


って感じでしょうか。

この研究論文は、システマティックレビューといって、1つのテーマについて、これまでたくさんの研究論文がすでにあるので、それを統合してみました、というものです。

つまり、著者たちが自分で調査をしてデータを取って分析したものではないです。

なんだよそれ研究かよと思う人もいるかもしれませんが、重要な研究手法の1つです。書いてみると簡単に見えますがそんなに簡単ではないです(私もやったことありますがめんどうなこともたくさんあります)。


閑話休題。

で、日本のメディアをみていると、この研究結果をもって、「日本のかかりつけ医の意義が示された!」と書いている人もいるようですが、それはちょっと待ってねと言いたいです。

私はむしろ日本の現在のかかりつけ医の警鐘を鳴らしたいです。

まずちょっと待っての根拠は、日本の研究が含まれていないからです。

含まれている研究の多くがいわゆる欧米ですね。台湾や韓国の研究もあります。

”The studies were carried out in nine different countries; the majority were from North America (Canada 6, USA 5). Seven were from Europe (England 3, France 2, Croatia 1 and the Netherlands 1). There were two from Taiwan and one each from Israel and South Korea.”

このテーマに限らず保健政策の研究は、日本は進んでいませんね。。日本は細胞とかネズミさんの研究がお好きなようです。正直呆れます。

医療制度が国が違うと全然違います。民間がメインのアメリカを見ればわかると思いますが。

制度が違えば、「同じ医者に継続してみてもらう」ということの意味も違うでしょう。

つまり日本の制度がこれでいいのか?は日本で研究するしかないのですが日本はそれをあまりしないです。その結果、政策判断が、ノリになりますね。政治的になります。おわってます。


加えて、そもそも日本は、primary care/general practitionerとよばれるような、かかりつけ医としてのトレーニングをけている医者がほぼいません。

「家庭医療専門医」というのが日本にもありますが、これを書いている時点では775人です。

日本の医師は30万人以上います。1%もいない家庭医療専門医に出会うことは困難でしょう。地域偏在もすごいです。

(そもそも家庭医療専門医がそんなにいいの?という議論はここではしません)

ですので、日本でみなさんが受診する医者のプライマリケアの能力は、医者によるばらつきがかなり大きいでしょう。

で、すでに苦言を呈しているように思いますが、伝えたい警鐘は別にあります。

それは日本の開業医さんは、一人開業医がおおいことです。

これは「同じ医者に継続してみてもらう」という点では良いかもしれません。

そこに行けば同じ医者がきっといます(というか同じ医者しかいない)。

しかし一人の医者でいいのでしょうか。

わからないことをどう対応するのでしょう。

医者だって体調崩します。風邪をひくかもしれません。入院だってするでしょう。それは突然にやってきます。その時、これまでそこでみてもらっていた患者さんはどうするのでしょうか?

仕組みとしてのバックアップはありません。

カルテ情報も各診療所ごとに保存されています。

紙カルテの場合、何を書いてあるのか判断できないことも少なくないです。

これではまさに診療が継続できないわけです。

これでいいのでしょうか。

私が提案する方法は2つです。

1)医者一人の診療所の設置は法律で禁止する。

2)カルテ情報は全国統一でクラウド保存する。

1は政府が動けば簡単にできます。1は効率的でもあります。現在10個の診療所があれば、10個の受付があり、10人以上の事務員が働いているわけですが、これって明らかに無駄じゃないですか?事務員は10人も不要でしょう。受診カードも10種類も作るのはナンセンスです。事務効率も良くなります。利益が増えれば、さらに多くの医療者を雇うことができ、より多くの時間をゆったり使って患者さんに寄り添うことができるのではないでしょうか。また、10人の医者がいれば、一人体調悪くなっても9人で支えることはできるでしょう。

2は医療の質の向上にもつながるでしょう。医者一人のところは、まさにブラックボックスです。明らかに間違ったことをしても誰も気づくことができません。ナースや事務員が指摘することは困難です。従業員は、唯一の医者=経営者=雇用者に逆らうことは通常難しいでしょう。つまり診療内容の透明化にもなります。

またこれは災害時のバックアップにもなります。3.11大震災の時に、津波で紙カルテやパソコンが流され壊れました。医療情報は喪失しました。これでは継続性は担保できません。平時からクラウドにあげることでそのリスクはゼロになります。「紹介状」という制度も不要になります。あれを作成すると自己負担で患者が数千円支払うのが現在ですが、それも不要になります。なぜなら違う医療機関でも、違う医療機関の検査結果やカルテを見ることができるからです。カルテを見ることができるようになるのは医療者だけではないです。患者さんもスマホから自分のカルテを見ることができるようにすることで、検査の見落としからの不幸な転帰、も減るのではないでしょうか。今分散してしまっている、健診・がん検診などの結果も統合されます。

ここらへんはPHRの概念ですね。

PHR

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/it/report/200908/511905.html


上記は全くの夢物語ではありません。今の技術があれば可能です。あとは政治だけです。






















個人的な感想としては、


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