スーパーブラッドムーン(詩)

醜さが悪になった世界
ほらあのデブを見ろよ
後ろ指差される彼には
血のにじむような苦痛

天高く赤く燃える月
君を求めてさ迷う日々
いつからか何かが足りなくて
いつからか全てが敵で
それでも空に向かって
心のロケットを飛ばす
血のにじむような満月

なにも苦しむ必要なんてないのに
木の実と獣を食べて水を飲んで
仲間と笑い泣き、時々憎んでいれば
幸せだったのに
いつからか彼らは
星に祈るようになった
際限無く
もっと、もっと

間断無く続く無間地獄
祈りの声は月に届いたが
変わらずに地球の周りを
遠くぐるぐると廻るだけ。

思いを伝える術を知らない
引っ掻き続ける猫のように
終わらない痛みを撒き散らして
誰からも関心をもたれない
弱き男

丸々と月のように太った男
宝石の
ラウンドブリリアントカットのように
ありのままで美しいと呼ばれたら

月が綺麗ですね

欠け行く満月
半月のように
体重も減って行く
醜さを隠す術を知っていく

体重を減らして
歯を矯正して
仕事を頑張って
ユーモアをもって
ファッションセンスを良くして
本を沢山読んでかしこくなって
歌を練習して素敵な声で歌って
それから
それから
なあ
もっと、もっと

それはまるでゲームのように
楽しくて
残酷で
愉快だねぇ……

欠け行く満月
三日月のように
理想へと近づいていく
ほめられることも増えていく
増えていく笑顔
増えていく隠した本音
増えていく陰湿さ

壊れていく
何かが作られるのと同時に
何かが
壊れていく

原石をカットしていくように
自身を切り刻んで
美しくあれ
美しくあれ
呪いのような
祝福のような 

それでも

あなたに愛されたくて

一人の部屋
自身のテーマソングが流れる

孤独の果てに
自分がゼロになった果てに
新月の宇宙へ
願いを放つよ

きっと次の満月の頃には
君の指に
キラキラの指輪を

痛みの分だけ
笑みの分だけ
覚えた魔法の分だけ
耐えた時間の分だけ
希望の分だけ
勝利の分だけ
感動の
涙の分だけ

悲しみの慈しみが
美しいジュエリーが生まれる
それは自分という
存在そのもの

すべての人は
超える赤月よ
君の涙へ
届け魂よ

触れて離れて

ふれて
フレテ
ふれて

月の軌道を君は行き
ロケットで彼は行く

月の軌道を彼は行き
ロケットで君は行く

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