黎明期(詩)

(以前書いた詩の蔵出しです)

冷たい気温を肌が感じて
降り行く雪の真白さを眺めている
早すぎた君と大地の出会いは
どんなに頑張って積もろうとしても
溶けていくだけ

降り注ぐ雪が積もっていく
新しい雪の上に君が積もっていく
大地との距離は少しずつ離れていく
君の日々の努力が編む存在の上に
新しい君が舞い降りていく

大地の温度はただ下がっていく
あの頃の君はもういなくて
別の美しい雪が大地を包んでいる

水をたっぷり含んだ大地の上に
雪が降り積もっている
ずっと心は
涙の中で呼吸している

熱すぎた大地が
冷静な心と頭に
進化したようだ

いくら願っても
君には届かない

時が流れていく
雪は時間に踏みつけられて
汚れていく

水が流れていく
汚れた光が
大地の中を通り抜けていく

何もかもが
虚しいのか
何もかもが
叶わないのか

全てが叶わなかったわけじゃないけど
一番ほしかったものは手をすり抜け続けていく
大地の中を水が通り抜けていく
僕の目の前を君が通り抜けていく

美麗な煌めきが体を通り抜けていく
もしも私と出会ったことで
その色が汚れることなく
美しい色彩に染まったなら
少しは生まれた意味があったのかなぁ

大地の奥深く、
雪の溶けた水と鉱物が
重なり合う

君の残した美しさが
君のくれた笑い声が
心の中のミネラルと溶け合っていく

時間を通り抜けていく
君の欠片が僕と共に旅をしていく

僕の溶けた君は力を宿した水になる
君と過ごした僕は癒しを宿した石になる

君に縁した人は生き生きと生き返り
僕に縁した人は新たな躍動を手に入れる

遠い二人の記憶は
今日を呼吸している
悲しい記憶も
楽しい記憶も
二人の生きた奇跡を形作る
かけがえのない宝物

たとえ行く末は違う在り方でも
僕の中には君が
君の中には僕が
生き続けている

それが
二人出会って愛し合ったことの特権
所有権が持てはやされるこの世界で
僕は永遠に君と生きる権利を手に入れた

心よ
全てを失い続けても
それよりも大きな光が
お前の中からあふれ出している

正義よ
決して許される行いではなかったけど
深く愛する人を傷つけてしまったけど
それでも前を照らそうとする
一条の閃光が
この道にお前を呼び寄せるだろう

心よ
ただ前を向け
流れゆく雪解け水が
希望の虹を架けるから

ただ前を向け
その洗われた
透明な瞳にだけ
虹は映るのだから

強く
強く
夜明け前の紫に染まった
黎明期を越えてゆけ

強く
強く生きれば
また雪の降る季節に
優しい声が
心に溶けていくから

魂よ
繰り返す輪廻に
最高の軌跡を
その深奥に
最高の奇跡を
刻んでいけ

喜びの舞いを
君と共に

今日も
大地の中で

想いは
天高く

世界を
巡り

世界を
照らせ

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