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広告は生き残れるか〜カンヌから見る日本ブランディングの課題〜

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カンヌアフター勉強会に参加してきました。

カンヌ勉強会の趣旨

今年はレポートではなく、「NETA倶楽部」というコミュニティで

勉強会やワークショップなどを継続的に実施するそう。

NETA倶楽部はFacebookの非公開グループで展開されているので

興味のある方は申請してみると良いかと思います。

世界の"イキのいいネタ"を届ける「NETA倶楽部」。カンヌをはじめ様々なテーマで年数回の勉強会を開催します。


Cannes Lionsはカンヌ映画祭(よく出川がパパラッチしに行っているやつ)

の後に開催されている広告の祭典。

今では「広告」という表現はしていないので

クリエイティブのフェス

といったところでしょうか


私も2013年にフェスに参加してきたのですが、

未だにその衝撃と熱は残っています。

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例えばロンドン五輪のパラリンピックのプロモーション

Meet the Superhumans

私は現地で見てパラリンピックのイメージが変わりました。

広告のチカラってハンパねぇ!

全世界のクリエイターが感動する広告のパワー

これを肌で感じることができた熱は未だに冷めることはありません。


そんな広告(クリエイティブ)フェスも

一般の人からしたら「ジブンゴト」には決して入りません。

広告はいつだってウザい存在だから。


そんなわけで今回の勉強会は

これでいいのかカンヌフェス

というお題と勝手に解釈してまとめてみたいと思います。


まずは広告批評元編集長の河尻さんから

直近の各国エントリー数&受賞数で見ていきます。

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2016年以降は

カンヌダイエット

と言われるようにエントリー数は減る傾向にあります。


エントリー数の減少もさることながら問題なのは

日本の受賞数の低さ

オリンピックでいえばメダルの数が圧倒的に少ない。

2018年の受賞数で見ると

アメリカ300個/イギリス100個/ブラジル100個

に対して日本は20個

エントリー数に対しての受賞数(野球でいう打率)に換算すると

アメリカ300/8,000=⒊75% イギリス100/2,000=5%  ブラジル100/2,000=5%

日本20/1000=0.5% 

同じ受賞数のイタリアはエントリー数でいえば500と受賞率は1%


つまり世界的に見れば

打率が低い=ヒットが少ない

のが日本の広告業界


エントリー数もカンヌの参加費も決して安くはありません。

つまり打席に立つことが高価である以上、

現状の数値から見れば

カンヌはコスパが低い

ということになります。

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日本の広告はレベルが低いのだろうか


決してそんなことはない!というのが結論

しっかり実績を出しているという広告もたくさんあります。


ハズキルーペがクリエイティブがどうかという議論はあるでしょうけど(笑


あくまで

日本の広告文脈(コンテスト)がカンヌの受賞文脈に合っていないだけ


そんな現状課題を解決に繋げるための視点が以下の4点。

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①広告フェスの意義

②social good(Purpose化)の是非

③「日本としての視点」は成立するのか

④クリエイター・会社としてのカンヌとの関わり方



social good(Purpose化)の是非

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私が現地に行った2013年からキーワードに

なっていたのがsocial good。

ソーシャルグッド(Social Good)とは、地球環境や地域コミュニティなどの「社会」に対して良いインパクトを与える活動や製品、サービスの総称を指す

そのワードが今年はPurposeというワードで表現されています。

詳細は河尻さんの記事で。

ユニリーバが6月にリリースしたリポートでは、「2018年、人々のためにアクションを起こす"Purpose"を持ったユニリーバのブランド(DOVEやクノールなど)は、同社のほかのビジネスに比して69%スピーディに成長した」という。
社会的マーケティングの真の"目的"は、慈善を施すことではなく市場を再構築することにある。社会の分断はマーケットもズタズタにしてしまうが、多様性を尊重することはマーケットを幅広く取りこむことにつながる。


2019年のカンヌで際立ったのは

NIKEとThe NewYork Times

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NikeのDream Crazyキャンペーンは

Just Did itとメディアで評されるほどの結果を残しました。

こちらも詳細は河尻さんの記事をご参照ください。


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これは解説をするよりもムービーを見た方が早い

それくらい圧倒的なクリエイティブ

河尻さん曰く

広告映像のプロフェッショナルと報道映像のプロフェッショナルが、がっつり組んで作ってそうな印象を受けます(ワーディングにも)。そのことで「コマーシャルでありニュースでもある」独自のパワーが生まれているのではないかと。両者は日頃、水と油の関係とも言えるので、一層レアケース


Purpsoseを体現する社会アクションの事例では

身体障害者に向けたサービス

X-BOX,IKEAは日本人にとっても伝わりやすいケース


「社会向けアクション」もいいですが個人的には

バーガーキングのようなユーモア

(ある意味ブラックユーモア)のある広告も嫌いではありません。

マクドナルドのような王道なブランドがあるからこそ

アイデアで勝負という戦略も成り立つのではないかと思います。



クリエイティブから見るヒトの進化と未来


ここからは河尻さんから制作会社キラメキ石井さんへバトンタッチ

石井さんは毎年カンヌへ行くことで

「広告を集中的にインプットする時間」

強制的に設けていると言っていました。

現にカンヌでお会いした時もフィルムを缶詰で

見ている姿を目撃しました。

本当に広告にストイックな方。


そんな石井さん曰く

今年のカンヌはシルバーに名作が多かったとのこと

ハイネケンはヨーロッパチャンピオンズリーグのスポンサー

こういうお茶目なCMボクも好きです。


ビアンコは靴のメーカー。

 step out of your head(空想から一歩踏み出そう?)

というコンセプトですが決してコストをかけた広告ではありませんが

一歩踏み出す勇気の必要性みたいなものが伝わります。

amazon primeのシリーズ作品を見れば

あなたの人生(エピソード)の彩りも変わるといったところでしょうか


John Lewis & Partners 

クリスマスシリーズはおそらく自国では定番となっているのでしょう。

カンヌ文脈という点では日本でも続ける広告が必要なのかもしれません。

キューピーのような文化に根付くような、

今でいうとソフトバンク白戸家や 

缶コーヒーBOSS宇宙人ジョーンズといったところでしょうか。


他に紹介された作品も貼っておきます。

AT&T

Thai Life Insurance


日本の広告を救うためにできること

日本の広告をカンヌ文脈にしていくためには

もっとクライアントを巻き込んで行くことが必要

例えばトップダウンで広告を決定できる孫さんのようなリーダー

と共に広告に対する危機感を発信していく。


「社会的アクション」がないと世界ではブランディングが

成り立たないという現状をどう理解させていくか。

ようやく日本でもSDGsやESG投資といった言葉が定着しつつあるので

それに乗っかる必要があるのかもしれません。

広告を絶滅危惧種にしないために

カンヌなどで審査員として参加されていた方からは

カンヌは「化石」

と表現していました。

カンヌに投資家がいないこと(お金の匂いがしない?)

確かにad-techのようなメディアやプラットフォームを巻き込んだりと

あえてしていないのかもしれませんが。


あくまで危機感を例えているとは思いますが

このままでは100年後広告業界は絶滅しているかもしれません。

データで現わせるにも関わらず、広告効果が未だに不明瞭なことは

業界としては進歩していないことと評価されても仕方がありません。


東京2020に向けて日本のクリエイティブが世界に発信できる機会が

目の前にあるからこそ日本のブランディングを再考するときかもしれません


特にカンヌにおける日本作品の表現は

「日本では古来○○を呼ばれ…」

という説明から始まるものが多く

その時点で

too contextual(情報過多?)

と予選落ちしてしまうそうです。

カンヌで勝ち抜くための表現方法=トレーニングを

身につける必要があるのです。


広告フェスがいつか遺跡発掘とならないためにも

今ボクらが動かないといけません。

カンヌ勉強会を通じてボクなりにできることを

これからも発信していきたいと思います。


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