絵描きは盗んだ絵の具でみごとな絵を描いた。
しかし、やがて罪悪感に急き立てられて、跡形もないように火を点した。

そうして姉は焼け死に、未完成の絵だけが遺された。
未完成のくせに、この世のものとは思えないほど美しかった。

筆は借りた。あとは絵の具、と僕は小銭をつよく握りしめた。

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