東京は下町。
隅田川のほとりにある、カウンター数席の小さな居酒屋。
絶品の酒と肴に吸い寄せられるよう、今日も今日とて常連が集う。

「さぁ！ お次は日曜の函館記念です！　先生お願いします！」

得たり。とうなずくと占い師。
チンチロリン！占い師の手から放たれた賽は小皿の上で小気味の良い音を立て、止まった。

「内卦・震、外卦・離、そして変爻の賽が五。火雷噬嗑の五爻、天雷无妄へ之く。が出ました」

「か、からい？ぜいごう？？　てんらいむぼう。。。どちらも四文字熟語みたいですね」

「はは、言われてみればそうですね。二文字の卦は全体の１／４くらいですから本卦と之卦のどちらもってことは珍しいかもしれませんね。この火雷噬嗑という卦はですね…」

• 雷を表す八卦「震」の上に、火を表す八卦「離」が乗っている

• 卦の形から、口の中にあるものを噛んでいる象として、上下のあごがかみ砕く・咀嚼する、という意味と持つ

• かみ砕く対象は「良くない事」で、刑罰を表す卦でもある

• 卦辞は「噬ごうは亨る。獄を用いるに利ろし」

• 五爻の爻辞は「乾肉を噛み、黄金を得る。貞厲なれば咎なし」

「…という感じで、なにか問題や障害があれば、それに目を背けることなく対処すれば問題はない。という卦ですね。五爻は正しい判断であれば良い、といされます」

「お、黄金を得る！？ですと！？」

爻辞の言葉にポロシャツは目を（￥）（￥）マークにして輝かせた。

「なんだろな。。これは解釈が難しいわ。中間なにか問題があった馬とかいるのかね？それか噛み癖がある馬とか。ここは俺はパスで行くことにするわ」

健は最近（馬券を買わない。という選択も悪くないな）ということに気が付いたようである。

「からい。。。かみ砕く。。ということは口に関係すること。。！！　08スカーフェイス！こいつはまさに悪そで刑罰をうけそうな名前です！からの～結果、笑顔で07スマイル、そして辛そうな名前の11レッドライデンでいきます！」

「スカーフェイスは確かに悪役なかんじだが断罪される側はダメなんじゃないのかい」

「いいんですよ。正直、函館記念は普通に予想すればどうせ格上のサンレイポケットから巴賞上位組～になっちゃうんですから。それでも当たらないんだから一緒です」

「ほう。。」

一見ふざけているように見えて、実はポロシャツも競馬（馬券予想）の本質というものに少し近づいているのかもしれない。
そんなことを思いつつ、占い師は盃を干した。

「当たるも八卦当たらぬも八卦」

こうして今日も下町の夜は更けていく。