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卓球と「地鶏と焼きネギのペペロンチーノ」

(ラリーズ メルマガ4月配信分)

昔話をさせてほしい。春だもの。

私が人生で、もっとも卓球から離れていた時期の話だ。

20年以上前、都心のパスタ屋で学生バイトをしていた。

細身で柔らかな物腰の雇われ店長は、店が閉まった後や休憩時間には「いいね、槌谷くんは夢があって」と優しく接してくれたが、殺人的な忙しさのランチタイムには、私の盛り付けミスに、持ち芸かなと思うほど鋭い舌打ちを差し込んでくるジキルとハイド型店長だった。

私がそこで覚え、今なおずっと自分の得意な料理が「地鶏と焼きネギのペペロンチーノ」だった。
その後、自宅で振る舞うたび「いや、地鶏じゃないじゃん、スーパーの鶏肉じゃん」と客人たちに言われ続けたが、私が覚えたメニューの名前はそれなのだ。

結局私は半年ほどでそのバイトを辞め、お店もいまは跡形もない。
違うパスタ屋になり、カフェになり、メガネ屋になったあたりで足が遠のいてしまった。

時々、あの柔らかな雇われ店長は、いまでもパスタパンを振ってるんだろうかと思う。
振ってないだろうな、と思う。

私だって、20数年後にまさか卓球メディアの編集してるなんて夢にも思わなかった。

決断の連続で、いつの間にか人は遠い場所に立っている。

葛藤の末に、新たな決断をしたプロ卓球選手・神巧也独占インタビューをどうぞ。

ラリーズ編集長 槌谷昭人

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