【雑記】第9回アイドル楽曲大賞(2020)を結果発表前に個人的に振り返る(メジャー部門)

 もう投票期間はとっくに終わってしまったが、「アイドル楽曲大賞」なるものが開催されていた。(集計結果は2020年12月29日発表予定)

 アイドル楽曲大賞には、メジャー部門、インディーズ・地方部門があり、また、ハロプロ所属のグループは、ハロプロ楽曲大賞として別枠が設けられている。私はまだハロプロは詳しくないので、投票できていないが、メジャー部門、インディーズ・地方部門ではがっつり投票してきたので、投票した楽曲とグループを、今年リリースされた個人的注目曲とともに紹介していく。

メジャー部門

5位:空白の花 / ≠ME [冨田菜々風]

投票コメント:叶わぬ想いを情感たっぷりに描いた詞をエモーショナルなボーカルで歌い上げれば、そりゃもう泣くしかないじゃないですか。初めて聞いたときは、もう、ただ「ズルいなあ」と思うばかりでした。さっしー、完敗です。

 年齢がバレるが、私が大学生~院生の頃はAKB48の全盛期だった。そのときは指原梨乃が、アイドルのプロデューサーになるとは思わなかったし、アイドルに興味を持ち始めたのが、本当に今年だったので、彼女が=LOVE、≠MEのプロデューサーをしていると初めて知ったときは驚いた。

 彼女のプロデュースの手腕は、=LOVEの方でさらに発揮されていると思う。が、楽曲でいえば、妹グループ≠MEの、それもメンバーのソロ楽曲であるこの曲が好みに刺さった。曲調としては、王道バラードで、あまりフックはないのだが、それ故に指原さんのワードセンスが深く刺さってくる。

「この恋が花だったなら学名すら無いでしょう」

 と綴るセンスが素晴らしい。どこかThe Pillowsの名曲「ストレンジカメレオン」の「歴史には価値のない化石の一つになるのさ」に通ずるものがあると思う。いくら個人にとって重大な出来事でも、多くの人にとっては価値の無いものになってしまうという虚無感を表す絶妙なフレーズだ。

4位: モラトリアムアクアリウム / meme tokyo.

投票コメント: とにかくスタイリッシュでアバンギャルドなmeme tokyo.ですが、もうこれはとことんキレています。息つく暇もない曲展開の中で跳ねて跳ねて暴れまくるキーボードのラインが最高にかっこいい。ぜひキーボードに着目してこの楽曲を聞いて欲しい。シビレます。

 かつて、ここまでアバンギャルドかつスタイリッシュなグループがあっただろうか。meme tokyo.はもともと、でんぱ組.incの妹グループとしてスタートし、あの「でんでんぱっしょん」をカバーしたりして活動していたようだが、すっかり自身のアイデンティティを確立し、他の追随を許さない領域で活躍している。特筆すべきは、「モラトリアムアクアリウム」も含めてすべての楽曲において、音がトガりまくっていること。ベース、キーボードを含め、あらゆる楽器が、跳ねたりうねったりを繰り返しているメロディラインに、ネットミームの混じった攻撃的で押韻の利いたリリックが乗っかっている。結果として、彼女らのビジュアルにばっちりとはまった、破天荒でとんでもなくかっこいい楽曲に仕上がっている。本当にどの曲を聞いても、滅茶苦茶にかっこいいので聞いて欲しい。

3位:STORY OF DUTY / BiSH

投票コメント:ここのところ王道ロックサウンドの楽曲が続いていたBiSHですが、久々に攻撃力の高いサウンドを出してくれました。テクノの要素が非常に感じられるBiSHの新境地ともいえる音作りで、終始ノイジーなシャウトを放つボーカルがとんでもなくキレています。壮大で高揚感のあるサビもGood。

 このコロナ禍の中で、一番勇気づけられた曲は?と聞かれたら、「LETTERS」の方に軍配が上がってしまうわけだが……、「BiSHに求める曲は?」という問いが自分の中で浮かび上がって来て、その瞬間にこの曲がバゴーン!!って感じに他の楽曲をぶち抜いていった。

 BiSHは、私の中でもそうだろうし、世間的にも「アイドルとは~」というステレオタイプをぶち壊してくれた存在だと思っている。もちろん小規模では、BiS(第一期)に言及せざるを得ないと思うのですが、よりエポックメイキングだったのはBiSHだったんじゃないかなあ、と。

 そんなBiSHの持ち味と言えば、「楽器を持たないパンクバンド」という肩書に相応しい攻撃的なリリックとサウンドだったわけで。もちろん「I am me.」や「MORE THAN LiKE」等の可愛らしい楽曲や、王道ロックバラードの「LETTERS」、「My landscape」等も素晴らしいのだが、BiSHにしかできないサウンドは?となれば、「SMACK BABY SMACK」、「GiANT KiLLERS」、「NON TiE UP」、「遂に死」等のアグレッシブな楽曲に軍配が上がってしまう。(個人的主観)

 尚且つ、「STORY OF DUTY」は、テクノの要素が強く、プロデイジーのようなサウンドが感じられて、むちゃくちゃ刺さった。

 メンバー6人のボーカルがトガりまくっているのもこの曲の推しポイントですね。後は壮大さを感じさせるサビのボーカルライン。テクノによりつつも、しっかりとロックサウンドを聴かせてくるあたりが、新しい要素と信頼のバランスが上手い。

2位:星降る引きこもりの夜 / でんぱ組.inc

投票コメント:特徴的なキーボードのフレーズを中心に展開される楽曲で、これがまた美しい。神聖かまってちゃんのの子さんの提供曲と聞いて納得。実にかまってちゃんらしい楽曲に仕上がっている。1コーラスを終えて、サビからAメロに移る際の展開が見事しか言いようがない。そしてラストの落ちサビのボーカルラインは、兼ねてより親交のあったこの組み合わせだからこそ成しえるものだと思う。完璧です。

 私事ではあるが、アイドルにハマる前はバンドオタクだった。そのときの入り口となったのは、神聖かまってちゃんだった。そして今も、イチオシのバンドと言えば、神聖かまってちゃんの名前を挙げる。世間では音楽番組でいくつかの放送事故を起こした色物として見られているかもしれない。けれど、の子の作るサウンドには、他の誰も真似できない独自性があり、ドラッグ(精神薬)のように中毒性を持っている。かまってちゃんのサウンドと言えば、ホーリーコーラスも特徴的だが、この「星降る引きこもりの夜」に関しては、もう一つの特徴でもあるキーボードラインの美しさが際立っている。

 この楽曲は、キーボードの奏でる強烈なフレーズのリフレインがベースとなっていて、そこにでんぱ組.incの個性的な歌声が重なってくるわけだが、この重ね方が、まあ上手い。アイドルへの楽曲提供で、提供者が好きなミュージシャンだったりすると、提供者のセルフカバーの方を推してしまいがちだが、この曲はセルフカバーよりも、でんぱ組.incの方が断然本家だと思ってしまう完成度だ。端的に言えば、歌割りが完璧。どこのフレーズをどのメンバーが歌ったら一番良くなるかが非常に計算されている。個性豊かなメンバーをそろえた上で、この計算を突き詰めると、まず敵わないのだ。その事実を突きつけてくる曲として充分すぎるほどの攻撃力を持っている楽曲と言える。

1位:BOY MEETS GIRL / Pimm's

投票コメント:透明感のあるミディアムバラード。楽器の中では、キーボードがとりわけ美しい。曲展開が進むごとに、ボーカルはファルセットが強くなり、クライマックスの高音の応酬で凄まじい高揚感を感じさせてくれます。今年はメンバーの入れ替わりも激しかったPimm'sでしたが、新体制になっても期待を変わらず持たせてくれるナンバーでした。

 一言で言えば、この曲はひたすらに「ズルい」のだ。私はエモいサウンドやボーカリングに本当に弱い。特に情感のこもった、ビブラートとファルセットにはエモみを感じるわけだが、この曲は、後者のファルセットで尽く攻められる曲だった。(ちなみにビブラートで攻めまくられる曲は、インディーズ部門1位に投票したCraftsman/WE=MUKASHIBANASHI)

 また、私が好きな楽曲には曲構成に特徴があって、まずは、穏やかなメロで始まる。メロ→サビの順を踏まえたうえで、二周目は、一周目よりもさらに情感を込めて、最後にラスサビで落ちサビ、あるいは転調、Cメロ及びDメロの追加によって一気に爆発させるといもの。この曲は、思いっきりその通りの曲構成だった。曲が進むごとにサビのファルセットのキーが高くなり、胸を締め付けられ、ラスサビで絶頂を迎え、開放感のあるアウトロで結ぶ。一連の流れが、とんでもなく気持ちいい。一曲聞き終えた頃には、フルコースを味わったかのような満足感に満たされる名曲だ。じっくりと大音量のイヤフォン/ヘッドフォンで味わってほしい。

 とまあここまでが、メジャー部門に投票した楽曲に対するコメントだ。インディーズ部門も近々投稿するので、そちらも併せて読んでいただけると嬉しい。

 以降は、涙を飲みながら、投票しなかった楽曲群である。

番外:週刊少年少女アイドル/虹のコンキスタドール

 稀によくあるカップリングに超名曲のパターンである。私はキーボードとともにブラスセクション、さらにスラップベース、ボーカルのこぶしに性癖があるのだが、この曲はその全てを網羅している。本当に私にとってはズルい曲である。正直、「サマーはキミと私なりっ!!」も「Fancy Friday Night」もどれもこれも名曲でむちゃくちゃ投票したかった。

 虹のコンキスタドール、でんぱ組.inc、CYNHN、meme tokyo.、リルネード等が所属しているディアステージは、アイドルポップスとしてかなり曲の作り込みが凄まじく、事務所ごと推しているような状態。「分かっているなあ」という手堅さと、「おお、これは!!」という新しさのバランスが絶妙だと感じる。ここでは紹介しきれていないが、ARCANA PROJECTもこれからの注目株だと感じる。

要注目:水生/CYNHN

 メジャーアイドルで楽曲派といえば、個人的にはCYNHNとmeme tokyo.の名を挙げると思う。そして、この二つのグループはどちらもディアステージ所属ということ。ディアステージ所属のグループは、本当に曲の完成度が高い。

 中でもCYNHNが優れているメンバーの5人の歌声の方向性が全くもってバラバラなことだ。通常、四人以上メンバーがいるグループで、それぞれのパートを声だけで聴き分けることは難しいが、CYNHNはそれができてしまうほどにメンバーの声の個性がバラバラで、且つ、どのメンバーの声も調理の次第でいくらでも活かせることができてしまうのだ。

 まず注目してしまうのは、崎乃奏音の繊細かつ艶やかな声と、綾瀬志希の荒々しいハスキーボイスだろう。でもウィスパーボイスの月雲ねる、エッジの利いた真っ直ぐな声の百瀬怜、絶妙なバランスを醸し出す青柳透も聞き込めば聞き込むほどに味わいが出てくる。さらに、五人のユニゾンでも全く喧嘩することなく調和している。ここまでくると、いくら楽曲を作り込んでも、人選の時点で他のグループは敵わない領域にまで来てしまっているのだが、そこにCYNHNのサウンドプロデュースの渡辺翔さんが、最高の楽曲を持ってくるのだから、向かうところ敵なしである。

 そんな中、ついにメンバーの声色に最適な歌割りをした上で、最高の楽曲が来てしまった。それが、今回のアイドル楽曲大賞では惜しくも投票対象にならなかった(リリースが新しすぎた)「イナフイナス」である。

 正直、これに敵う完成度の楽曲にはまず出会ったことがない。けたぐりつけるようなメロディラインに乗せられたメンバーの歌声は、どれもこれも自身の声色が最も攻撃力を持つタイミングで繰り出される。もう、どうあがいてもCYNHNの五人にしか歌うことができない名曲になってしまったもの、それが「イナフイナス」だと思う。個性あるボーカルが複数人同じグループに居合わせるという奇跡が生み出す魅力を最大限に感じられる楽曲だ。余計なお世話かもしれないが、これを超える曲はこれから生まれるのか?と思ってしまうほどだ。早くも来年のアイドル楽曲大賞投票候補である。(まあ、「水生」も今回かなりの投票数を貰っていると予想されるが)

 とまあここまでが、メジャー部門の振り返りである。インディーズ・地方部門ではさらに番外の語りが長くなること請け合いなのだが、お付き合いいただければ幸いである。

 では、次回はインディーズ・地方部門を語っていく。


 


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