【雑記】第9回アイドル楽曲大賞(2020)を結果発表前に個人的に振り返る(地方・インディーズ部門)

 前回、アイドル楽曲大賞のメジャー部門の投票曲の振り返り記事を書いた。

前回記事:【雑記】第9回アイドル楽曲大賞(2020)を結果発表前に個人的に振り返る(メジャー部門)

 今回は、地方・インディーズ部門の振り返りを行っていく。

地方・インディーズ部門

5位:Step by Step / サンダルテレフォン

投票コメント:今年の注目株。全部曲が良すぎて悩みました(笑)。メンバーのそれぞれの声が映えるようにしっかりと歌割がされていて、特に、1stコーラスの小町まいさんと夏芽ナツさんが素晴らしい。他の3人と比べて落ち着いた低めの優しい声の小町まいさんの声が、ユニゾンにおいてベースのような役割を果たしていて、素晴らしいハーモニーを奏でています(これはサンダルテレフォンの全ての楽曲に言えることですが)。

 今年の楽曲大賞の投票を見ていると、サンダルテレフォンはやはり多かった。どこか懐かしさを感じるサウンドに四人の個性豊かなボーカルが載せられていて、ユニゾンでもソロでもとにかく耳障りがいい。特に小町まいの澄んだアルトボイスは、際立っていて、ユニゾンでもはっきりと彼女の声を聞き分けることができる。そして、高音のリードを取るのは、夏芽ナツなのだが、非常に表情が豊かで聞いている側の心を揺さぶってくる。(息遣いが少し、柴田淳に似ている気がする)そしてすべての楽曲において、この個性豊かな声の四人を絶妙にパート分けしていて、推し曲を決めるのが本当に難しかった。「Shape the Future」、「Magic All Night」、「ワンダーランド」で永遠に迷った。後述する「SYSTEMATIC」が、投票候補なら迷いなくそれに入れていたのだがw。ライブでも安定した歌唱と綺麗なダンスを見せてくれるグループなので、是非とも足を運んでいただきたい。ちなみに、小町まいに90年代の歌謡曲を歌わせると、もう天下一品である……。

4位:ナイスポーズ / RYUTist

投票コメント:出だしのピアノからパーカッション、ストリングスの入り、全てが素晴らしい。最初の10秒で約束された神曲。だが、そこで終わらないところが、流石。というのもこの楽曲は、柴田聡子さんの提供曲で、彼女の予測できない多種多様な曲展開がこの楽曲にも盛り込まれている。「ギリギリで青だった~」からクライマックスの盛り上げに向かって助走をつけるような段落からの、「ナイスポーズ!」とタイトルを回収してクライマックスに向かう曲展開はお見事。

 これもメジャー部門で投票した、「星降る引きこもりの夜 / でんぱ組.inc」と同じく、楽曲提供者推しの曲である。提供者は、柴田聡子。澄んだ高音の歌声と、変幻自在の曲構成が特徴的だ。柴田聡子の推し曲は、「結婚しました」なのだが、予想の付かない曲展開で、終始ワクワクさせてくれる。

 投票コメントの通り、「ナイスポーズ」でも曲展開の素晴らしさは遺憾なく発揮されており、最後のサビにもう一段、別のサビを加えて展開させる妙技が、私の性癖である、”終盤に行くにつれて輪をかけて盛り上がる曲構成”の発展形と感じられる。(これはメジャー部門で1位に投票した位「BOY MEETS GIRL / Pimm's」がまさにそうだった。)

 ちなみに、RYUTistはこのナイスポーズが収録された、「ファルセット」が今年の名盤と呼ぶに相応しい出来栄えであり、アイドル楽曲大賞のアルバム部門をほぼ無双していた。(誇張ではなく、3人に1人は入れているレベルだったし、私も入れている)そんな「ファルセット」の収録曲は、どれも素晴らしいので、「ナイスポーズ」のみならず最初から最後まで通して聴いてもらいたい。

3位: Dear my friend / スマートオブジェクト.

投票コメント:今年の注目株2組目。長崎のお披露目前のアイドルグループで、メンバー、プロデューサーとも新参者。なのに全くそれを感じさせないハイクオリティの楽曲に仕上がっている。後のリリースではレゲエやHIPHOPの要素が強くなるが、こちらは欅坂46、ラストアイドルの系統を感じさせる仕上がりになっている。ギターソロ→Cメロからの落ちサビという贅沢な構成で、ラスサビの後もかっこいいギターソロが鳴り響き、5分越えのボリュームをしっかり最後まで聞かせてくれるところも好感度が高い。

 まさか、長崎の新人アイドルグループでここまでワクワクさせてくれるものが生まれて来るとは思わなかった。1st MVにもかかわらず、洗練されたビジュアルとダンスパフォーマンス。卓越した映像。欅坂46の系譜を感じさせるシリアスなリリックと語るような音ハメのセンス。どれをとっても安っぽさを微塵も感じさせないクオリティである。特にハモりが印象的で、四人の声色や音程の微妙な違いから、混声が非常に立体的に聞こえてくるのがまさに新体験。初めて聞いたときは、思わず目を見張った。(これは後述する3rdの「帰ろう歌」で爆発しているので是非聞いて欲しい。)2nd、3rdで楽曲面だけでなく、映像やダンスパフォーマンスでどんどん彩度を上げてきているので来年も非常に期待できるグループである。

2位: ころがる / NELN

投票コメント:今年の注目株。正直、全てのリリースが良すぎて超迷いました。でも、その中で異色だったこちらの楽曲に決めました。この楽曲が最も4人のボーカルの特徴が活かされていて、見せ場が均等に与えられているように感じました。また歌詞のメッセージ性が、他の楽曲と比べてストレートでアツく力強いサウンドとなっていたのも決め手です。そう考えると、異色な曲ではあるかもしれません。

 スマートオブジェクト.が地方アイドルのダークホースならば、インディーズのダークホースは誰か?となると確実にNELNの名前を挙げる。今年の4月からリリース活動を始め、12月25日現在まで8曲をリリースしているが、どれもこれも、楽曲・MVともに恐ろしいクオリティである。彼女らの魅力は、過去のアイドル紹介記事でも触れているので、そちらも興味があれば一度読んでいただきたい。

【アイドル紹介3】NELN

 このグループも、サンダルテレフォンと同じく、投票で目立っていたグループだ。そして、サンダルテレフォン以上に、推し曲を決められずにファンを悩ませたグループだったのではないだろうか。

 上の記事でも触れているが、彼女らの楽曲は、Phoenix等のフレンチポップ・ハウスを彷彿とさせるお洒落なサウンド。それに、アンニュイでざらついたボーカルのNATSUMIを筆頭に個性豊かな歌声がのせられており、まさに珠玉の名曲のオンパレード。

 投票にあたっては、「ワンダーフォーゲル」、「MILK」、「irony」と悩みに悩みまくったわけだが、メンバー四人の見せ場が最も均等に感じられる「ころがる」に投票した。「ころがる」以降は、NATSUMIの歌声はもちろん、AKARI、KARIN、MAOの三人の見せ場が増えており、グループの確かな進化を感じさせてくれる。来年の4月までは、月1曲というハイペースでのリリースが決定しているので、12か月連続リリース残り4曲も、期待せざるを得ない。

1位:Craftsman / We=MUKASHIBANASHI

投票コメント:メンバーの作詞でメンバーのイメージカラーになぞらえて、夢に向かってひた走ってきたこれまでを称え、これからの希望を謳う非常にアツいロックナンバー。歌唱力、迫力、個性と三拍子揃った4人のボーカルが非常にエモーショナルで、涙腺をガンガン刺激してくる。とくに1stサビの前の「AH~」の部分がエモすぎる。いや、そのあとの「願い事叶えずに~」からサビのところも、本当にヤバい。ここまで感情を突き動かすアツいボーカルをできる4人なんていないんじゃないか、そう思ってしまうほどに素晴らしい。

 いや、本当にズルい。ズル過ぎて最高。歌いだしの「青い夢が~」の声の震えが素晴らしすぎる。WE=MUKASHIBANASHIの推し曲は、「Craftsman」が出るまでは、「ロックンロールスニーカー」であったし、最初の投票候補はそうだった。「ロックンロールスニーカー」のときのリードボーカルSAKIの歌声は、まっすぐで力強かった。だが、「Craftsman」はどうだ。力強さを保ちつつも、不安定に震えていて、荒々しさを感じさせるものになっている。それが、”これまで歩いてきた道のりとこれから”を歌い上げるリリックと相まって、哀愁を呼び起こしてくれる。この歌声で「ひとつひとつ積み上げて、ここまでやってきました」と歌われたら、こみ上げるものを押さえられない。実際初めて聞いたときは、もう、変な声が出た(笑)。しかも、「Craftsman」が出て以降は、他の楽曲でもSAKIの激エモビブラートが炸裂するようになった。もう、ライブパフォーマンスを見るたびに、感情が忙しすぎて仕方がない。今、生でパフォーマンスを見たくて仕方がないグループの1組である。

 さて、以降は、涙を飲みながら投票できなかった楽曲たちである。

番外:世界の終わりは君とふたりで/RAY

 いや、良すぎんか。

 RAYはシューゲイザーをフィーチャーしたサウンドに、儚げなファルセットを歌唱を乗せた独特の楽曲が持ち味なのだが、この取り合わせがもうエグいくらいに切ない。彼女らの1stワンマンを配信ライブで視聴したのだが、ちょうどこの曲で、メンバーのプロデュースによるエフェクトで、ホワイトアウトガチの映像でパフォーマンスが流れた。もう、それはそれは感嘆のあまり、変な声が出たわけである。胸をまさぐるような情感が押し寄せてきて、思わず唸ってしまった。

 他にも「バタフライ・エフェクト」、「尊しあなたのすべてを」も最高なので聞いて欲しい。もっといえば、これら3曲が収録された「Pink」自体が、アイドルポップスどころか、邦楽全体で見てもとてつもない完成度を誇るアルバムなので、是非聞いて欲しい。

番外:夜ニトラゼパみゅ

 いや、良すぎんか?(2回目)

 ゲーム音楽を思わせるピコピコ音に激しいギターリフが絡み合うと思いきや、CY8ERを彷彿とさせる”ゆめかわ”ボーカルが繰り出されるロックナンバー。声色だけでいえば可愛い系であることは間違いないのだが、サウンドとの調和も相まって、果てしなくカッコいい曲に仕上がっている。ちなみにこの曲が収録されている「NEMURIORCA」は、捨て曲一切なしの、とんでもない名盤なので絶対に聞いて欲しい。

番外:ファインダー/Sway Emotions Slightly

 いや、良すぎんか!!!?(3回目)

 なぜ、もっと早く出会っていなかったのかと真剣に後悔したグループである。淡く繊細なメロディラインと3人の絶妙に掠れた歌声が、エモの渋滞を引き起こしている。サビの「夢見た~」の掠れ具合からして名曲確定なのだが、ラスサビで独り歩きしだすベースラインがこの曲を、より神格化させている。ギターが泣いているという表現は、聞いたことがあるが、この曲で泣いているのはベースなのである。この曲の他にも、「Parade」、「スペースシャトル」も非常に完成度が高い。

次回投票したい曲たち

 かなり気が早くて鬼に大爆笑されると思うが、次回投票の有力候補を挙げていく。ちなみにメジャー部門は、十中八九、「イナフイナス/CYNHN」に投票していると思う。

 地方・インディーズ部門では、「SYSTEMATIC/サンダルテレフォン」、「Half Hope/アイドルカレッジ」、「帰ろう歌/スマートオブジェクト.」が有力候補。

 「SYSTEMATIC/サンダルテレフォン」は、小町まいのパートはもちろんだが、夏芽ナツのパートが凄まじく切ないボーカルで胸が締め付けられてしまう。さらにリリックの音ハメが非常に気持ちが良く自然とシングアロングしてしまうので、昨今の声出し禁止ライブでは注意したいところ。

 「Half Hope/アイドルカレッジ」は、欅坂46みを感じる楽曲で、これまたサビの音ハメが非常に心地良い。クラシックバレエのようなサビの振り付けが印象的。ここの海老原優花(リーダー)のダンスが非常にしなやかなので、ライブでこの曲がかかったら、メンバーの動きをじっくりと堪能してほしい。アイドルカレッジは、フルメンバーだと20人を優に超える大所帯ながらも、統率の取れた迫力あるパフォーマンスなので非常に見応えがある。まだ新しい楽曲ということもあり、Half Hopeは選抜メンバーによるパフォーマンスであることが多いのだが、それでも10人ほどはいるので、見応えが凄まじい。

 「帰ろう歌/スマートオブジェクト.」は、メンバー四人のパートによって音程が違っており、結果、四人それぞれの歌声が同時クリアに耳に入ってきて、非常に立体的に聞こえるようになっている。さらに1st、2ndと比べてもダンスや表情のつけ方が段違いで進化している。MVも長崎の美しい景色と合わさって見ごたえのあるものとなっているので見て欲しい。スマートオブジェクト.は、1stでも凄いのに毎回クオリティを上げてきていて、正直、今最も注目すべき地方アイドルと言っても過言ではないと思っている。来年の活躍(そしてライブ)が非常に楽しみである。

 地方・インディーズ部門は、メジャー以上に熱が入り、記事が長くなってしまった。他にも来年投票するだろうなあと思うのは、やはりNELN。サンダルテレフォンもSYSTEMATICを超えるものを出してくるかもしれないし、他にも目が離せないグループが沢山いる。(きみとぼくの革命だとかボソッ)

 来年のアイドルポップスシーンも引き続き、血眼になって追いかけていきたい所存である。




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