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化石賞とか

今日くらいから、ネット界隈で化石賞なるものの話を聞きます。

https://www.asahi.com/articles/ASMDD0298MDCULBJ01Z.html

報道の概要は、COP25における小泉環境相の演説に対して、環境団体NGO(のネットワーク)から“地球温暖化対策に後ろ向きと認定された国が選ばれる不名誉な賞”である化石賞を与えるとされた、とのこと。

→それを受けて小泉環境相が” 驚きはない/的確に国際社会に発信できている”と発言。

→ネット界隈…  (゚Д゚)ハァ?

とざっくりこんな話かと。ちなみに日本の化石賞が今月3日に続き2回目、というのはこの賞はCOP開催中毎日発表されるものらしいです。

全文引用無いかなーと思いさらっと調べましたが見当たらず。この記事の写真見るに記者の前でさらっとしゃべったくらいみたいなので、まぁこのままなんでしょう。

まず小泉環境相が、環境団体NGOからdisられたのを気づかずに、逆に”うわぁバズッた”とか勘違いしてこういう発言になった、とはさすがに思いません。大臣になってから語彙力をいろいろ疑問視されている環境相ですが、今回のCOPについては国際会議での彼のデビューでもあり、ただ日本のスタンスを表明することに徹していると考えています。よってこの発言は”日本としては削減目標の上乗せは現状約束出来ないと伝えたし、それに対して批判があるのは想定通りで驚きはない”という趣旨であるという前提で進めます。

今回に限らず日本のCO2排出量削減に関してのスタンスは、
・ CO2排出量削減には賛成で目標も設定している(2013年比で2030年までに26%削減)。
・ しかし日本のCO2排出量はその経済規模に比較して既に少なく、これ以上の上積みはしたくない。
と一貫しています。

ですからまずはシンプルに事実を羅列しようかと思います。

日本のCO2排出量は多くない
国別CO2排出量(https://www.globalnote.jp/post-3235.html)で言うと中国がダントツ、次が米国、5位の日本は中国の1/9、米国の1/5です。日本は一応まだ世界第3位のGDPがあるので、経済規模対比だとさらにCO2排出が少ない国になります。また、一人当たりの排出量(http://top10.sakura.ne.jp/IBRD-EN-ATM-CO2E-PC.html#map)でも、米国よりもかなり下で多いとは言えません。

日本の削減目標は低い
今の主要国のCO2削減目標(http://www.rite.or.jp/news/events/pdf/akimoto-ppt-kakushin2017.pdf)を見る限り、2013年比で2030年までに26%削減という日本の目標は数値的に低いです。他国は(基準はまちまちであるも)30%~40%です。日本からすればそもそもの排出量が少なく効率も高いので削減率が低いのは仕方ないと言いたいところですが、パリ協定のようなグローバルなルールで個別の事情をあまり細かく考えていたら進まないってこともあり、批判されるのも致し方ないのかとも思います。

各国の足並みは揃ってない
まず米国は来年の大統領選挙の翌日にパリ協定からの離脱を予定しています。米国の主張は”CO2による温暖化・環境破壊はフェイクである”というある意味アナーキーなものではありますが、そもそも温暖化による環境破壊が大げさに言われているという主張(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E6%87%90%E7%96%91%E8%AB%96)は昔からあり米国がそれに乗っかった形。また、ロシアやトルコはパリ協定に署名はしたものの国内で批准はしていないし、中国やインドは発展途上国ということもあってCO2排出そのものは今後も増加する(GDP対比の排出効率を上げるのみ)としています。

国内事情
日本のおけるCO2削減目標は、3.11まで良くも悪くも原子力発電を前提にしていましたが、しかしその後の出来事は皆さんご存知の通り。一度は全ての原発が止まり、今現在稼動しているものはわずか(大飯、玄海、川内、伊方のみ)です。当然、政府は福島の事故以降太陽光を中心に再生可能エネルギーの普及を進めてきましたが、海外対比普及率はまだまだ(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/shared/img/77scv-2fnqera2.png)です。本来なら再生可能エネルギーへのシフトは長期的な国策として行われるべきものですが、政財界の様々な思惑もありはっきりとしたビジョンは見えていません。この思惑は最近の関西電力の一件のような”原子力村の闇”的な話から、シンプルに個人や企業の電気i料金負担までいろいろです。電気代というのは国全体で非常に大きなコストであり、現状最もコストの高い太陽光なり風力、潮力を急激に進めるというのが国の経済政策上簡単な話ではないのは事実でしょう。

上記から私が思うのは、日本政府の代表として軽く削減目標を上積みしたり出来ない以上、報道されているCOP25における環境相の演説(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191212/k10012211791000.html)に違和感は感じませんし、それを環境NGOにdisられたくらいで弁明するような問題でもないと思います。そもそもCO2の排出量からみれば、現在の最大排出国で2030年まで排出量増やし続ける前提である中国と、パリ協定から抜けようとする排出量第2位の米国がほぼ全ての問題なわけですから、その日の演説を見て次の日に”貴方に化石賞を!”とかあまり生産的な行為では無いなと。当然、先進国である日本にCO2削減により積極的でいて欲しいという気持ちはわかりますし、何かを論じる時に違う立場を批判することは当たり前でしょうけれど、日本がそれに合わせる必要もまたありません。

そして小泉環境相がこんなレベルの話を知らない筈はなく、その上でのあの演説、化石賞の対するあのコメントでしょうから、私は極めて全うな内容だったと思うわけです。確かに、環境相の言葉の選び方ついてはいかがなものかと思うことも多いですし、保守の論客からそもそも政治家としての能力に疑問を持たれているのも事実ですが、こんな瑣末なことで若い政治家を貶めるほど今の日本に人的リソースってありましたっけ?

この”化石賞”に絡んだ報道やネットでの反応を見て、嫌いな勢力(リベラルvs保守とか)を脊髄反射でdisったりするは、そろそろやめたほうが良いと思いました。

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