見出し画像

【SD】今からでも間に合うプレーオフ出場特別講座

今季チーム年俸$249MMという大盤振る舞いにより大型FA補強と契約延長を敢行し、球団55シーズン目の今年こそワールドチャンピオン獲得という悲願達成に十分な戦力が整ったと目された我らがサンディエゴパドレス。

3-4月は15勝14敗だった。ワールドチャンピオン候補としてはやや物足りない成績だが、フェルナンド・タティス・ジュニア(PED出場停止)とジョー・マスグローブ(足指ヒビ)が4月下旬まで欠場。またプレーオフ候補相手の連戦続きだったため、まずまず健闘したとされていた。そして何よりまだシーズンの18%終了時は慌てるにはあまりに早すぎる段階だった。それからはほぼフル戦力でプレーオフ候補以外の対戦も増えてくる。さぁこれからだと。

5月のパドレス、10勝16敗。

アメリカにはメモリアルデーという祝日がある。戦没将兵の追悼記念日で毎年5月の最終月曜日に設けられている。そしてこの祝日はMLB界では戦況が見え始め、この日以降ならパニックボタンを押しても差し支えが無いとされている。ポチッ。

「嫌あああぁぁぁ!これだけ大金突っ込んでプロスペクト軒並み放出して補強したのに負け越してるうううう!高年俸球団なのに楽天でもパッとしなかったブランドン・ディクソンがDHイイイイ眼鏡白フレームゥゥゥ!」

レギュラーシーズン開幕から二か月ちょっとが経過したが、現地6/7の60試合終了時点で28勝32敗と、ナショナルリーグ西地区首位ドジャースとダイヤモンドバックスとは7ゲーム差で、一番ゲーム差が近いチームが最下位コロラド・ロッキーズという状況である。開幕前お世辞にもプレーオフ候補とは呼び難いロッキーズのオーナーが「パドレスの4‐5番手先発投手はわが軍と同レベル」評し一部のパドレスファンから失笑を買ったが、蓋を開けたらパドレスの方が勝率をロッキーズと同レベルに揃えてくるという律儀かつ有り難くない伏線回収でなかなかの笑いものになっている状況である。

笑いもの球団を応援する事に関しては過去20シーズン以上と何ら変わりが無いので個人的には特に痛くも痒くもないが、リーグトップクラスの年俸を投じているので例年より格好悪さが際立ってしまう。大型補強を受け期待していた分の落胆も大きい。金銭獲得トレードを試みるも相手が渋ったのでマイナー選手と交換で中古のトレッドミルをもらっていたケビン・タワーズGM時代とは時代が違うのだ。

しかしご安心あれ、パドレスはまだプレーオフに行ける。今回はそのための方策を呈しよう。

現況

まずは現状把握。結論から述べるとカルロスすると予想外な低迷の理由は得点の少なさだ。

主な打撃指標は以下の通り。無機質な数字の羅列になってしまうがお付き合い頂きたい(ソースFangraphs。カッコ内はNL15球団中の打撃優位順/NL平均)

R/G 4.12 (13/4.50)
AVG .222 (15/.250)
OBP .314 (14/.323)
ISO .160 (7/.161)
SLG .382 (14/.411)
BB% 11.1 (1/9.0)
K% 23.8 (10/22.7)
wRC+ 95 (12/100)
fWAR 6.7 (9/6.7)
BABIP .267 (15/.300)
Barrel% 8.4% (5/8.1%)
Hard Hit% 37.3 (10/39.2)
FB% 41.0 (2/36.6)
NOAL(Number of Austin Nola. オースティン・ノラ保有人数) 1 (15/0.07)

打率、出塁率、長打率までは投手有利なペトコパークを本拠地とするため低くなってしまうが、パークファクターを考慮したwRC+も12位。開幕前もリーグ屈指の得点力を誇る打線という期待からは程遠い。

Hard Hit%は低いがフライが多いためバレル率はNL5位。ISOは中段に位置する。Pull%は42.6%とNL4位だ(NL平均41.1%)。四球を選び、飛距離を得るために引っ張り打球が多いというアプローチは現代野球のトレンドとかけ離れていないように映る。

残りのPlate Disciplineはどうだろうか。

Z-Swing% 64.8 (15/67.7) ストライクゾーン内スイング率
O-Swing% 29.0 (4/30.6) ストライクゾーン外スイング率
Meatball Swing% 73.9 (13/76.2) ど真ん中スイング率

これらの指標群から推測できることは、悪球打ちよりも見逃しストライクの多さが打率の低下の主要因であるということだ。もちろん四球は増えるが、三振の多さが招く打率の低下が著し過ぎて十分な出塁率を稼げていない。ちなみに去年も待ち球の傾向は同様だったが長打に悪影響を及ぼしていた。

またパドレスの打撃について二つのトピックが話題になっている。

  1. 1点差試合勝率の悪さ

  2. 得点圏打率NL最下位(.200)

確かに事実である。だが放っておいて良い

無論これらの指標が向上すれば勝ち星も上がるだろう。しかし#1については投手力は有りながら1点差に陥る全体的な得点力の無さが問題である。

#2についてはチミたち得点圏に限らず全場面で打率最下位やんけという結論に収斂する。そもそも得点圏で迎える打席数がNL11位なので、絶対的なチャンス数が少ない。ちなみに得点圏打率NLトップはロッキーズの.295だが、同チームのwRC+はNL最下位の82だ。順位は前述の通りだ。

そして何より1点差や得点圏という限られた状況のみの打撃成績を向上させることが可能なのかという疑問がある。もちろん試合やシーズンやキャリアが終わってみればチャンスに強い打者は散見するがその結果は極めてランダムであり、少なくとも現代科学で事前にコンスタントにチャンスに強い選手を発掘若しくは育成することはいまだに不可能だとされている。昨年パドレスで4度のサヨナラ打を放ち"Let's Fuckin' Go San Diego!"のフレーズを発したカルトヒーロー、ホルヘ・アルファーロが今年もサヨナラ打を連発する保証はない。

方策

前置きの状況説明が長くなったが解決案に移ろう。

#1.タティスを中堅にコンバート

今季パドレスの打者は美点と弱点がはっきりしている。タティス、フアン・ソトマニー・マチャドザンダー・ボガーツらが不動のメンバーである一方、ラインナップに並ぶ残りの4-5人は打率2割台より1割台が主で長打も見込めない。もちろんマチャドやタティスの不調やボガーツの手首の状態は問題だが老け込む歳ではないし、控えが薄くスタメンから外したり年俸の高さからチームOPSトップのソトを除きトレード放出もほぼ不可能だ。

パドレスの大きな弱点ポジションは4つ、捕手、一塁手、中堅手、指名打者である。

https://www.baseball-reference.com/leagues/NL/2023.shtml

この4ポジションのWAAはマイナス、つまりリーグのレギュラー選手平均以下である。ならばそれらを補強すれば良いという話になるのだが、ば捕手と中堅手で良い打撃成績を残す打者は希少なため獲得が極めて困難である。同様に補強が難しいポジションは遊撃手なのだが、パドレスには遊撃経験者は有り余っているので懸念は少ない。

2020年60試合制シーズンでトレント・グリシャムは.251/.352/.456/122wRC+という成績を残したが、その後打撃成績は低下の一途を辿り昨年と今年は打率1割台だ。昨年は見逃しストライクが多かったため今年はゾーン内スイング率が持ち直しているが空振りが増えている。昨年ゴールドグラブ受賞の守備は健在だが、今の打撃成績ではレギュラーよりはプレーオフ候補球団の4番手外野手という職務がより適切だろう。

今年からフルタイムで右翼守備に挑戦しているタティスはいまだにフライの目測が三流だが、超一流の運動能力でカバーし右翼の守備指標はリーグトップ。肩も申し分ないため、身体能力的にはセンターを守れない理由がない。そして14年$340MMという多額な契約を結んでいるのだから、ショートを除きもっとも守備で貢献できる中堅で起用しても罰は当たらないだろう。

ただタティス自身も打撃に課題を抱えている。PED違反出場停止処分が解けた4/20に復帰も、.257/.304/.497/11HRと2021年ホームラン王の数字にしては物足りない。チーム全体の方針とは逆に早いカウントでもブンブン振り回して6.5BB%と四球を稼げていない。特に初球のスイング率は53.8%とリーグ平均の29.5%を大きく上回り、カウントを悪くしたところで低めの変化球を引っ掛けて三塁か遊撃ゴロに終わる打席が増えている。昨シーズンを自身の不始末で棒に振ったため焦る気持ちがあるのかもしれないが、今後の追い上げにはアプローチの改善が欠かせないだろう。

なお打率.168に甘んじる捕手補強も勿論望むところだが、中堅手以上にチーム得点力に影響を及ぼすほどの強打選手を探すことが困難なポジションだ。時折噂に上がるロイヤルズの生え抜きベテラン捕手サルバドール・ペレスは完全トレード拒否権を有している。よほど良い話が無い限り、最近獲得したゲイリー・サンチェスと親指手術で欠場中のルイス・キャンプサーノの復帰で様子を見ることになるだろう。

#2 打撃が強みの右翼手か左翼手を獲得

控えやAAAに強力な右翼手が居ないので、タティスが抜けた後の右翼を守る外野手を補強する必要だ。だが中堅手や捕手より候補は見つかりやすいだろう。

#3 打撃が強みの一塁手も獲得

この選手は#2と同一でも構わないが、求める三つの理由がある。一つ目はジェイク・クローネンワースの打撃成績が悪化の一途を辿り一塁手としてはかなり物足りないレベルに沈んでいること。二つ目は42歳ネルソン・クルーズと37歳マット・カーペンターのシルバーDH人材実験は芳しい結果を残せていないこと。前者はハムストリング痛、後者は選球眼が悪化している。三つ目はボガーツが長患いの手首不具合により長期欠場した場合、二塁キムが遊撃に、一塁クローネンワースが二塁にスライドする必要があること。一塁手は両翼外野手よりも見つけやすい。

ただ問題は#2と#3の補強が実現化するにしても主力級の補強は早くとも7月半ばになりそうという点だ。それまでのひと月半でカーペンターか白メガネを右翼で起用するくらいなら今のままの方がマシである。現在Fangraphs予測によるプレーオフ出場確率が5%以下のチームはさほど多くなく、タイガース(3.0%)、レッズ(1.6%)、ロッキーズ、ナショナルズ、アスレチックス(全て0%)位だ。これらのチームとの取引は早く始められるかもしれないが、いかんせん今のパドレスにはトレードに用いられるプロスペクトの手駒が少ないため平均レギュラー以上の選手獲得が出来るかは怪しい。今オフもプロスペクト放出による即戦力獲得トレードは皆無だった。該当ポジションのFAも今の段階ではゴロ柱エリック・ホズマーやフライボールを追う時の挙動不審さのあまり職務質問を受けそうなノマー・マザラというさもありなんというレベルだ。

A.J.プレラーの補強に予測は立てようもないが、不調と怪我に喘ぐ現ツインズ元レンジャース時代の有望株ジョーイ・ギャロ辺りをどうにか安く買い叩こうと目論んでいるのではなかろうか。

フィールド外の脅威

またパドレスには長期に渡る経済的ダメージを負いかねない出来事が最近起きた。試合中継企業Bally Sportsの親会社Diamondの再建型倒産手続に伴う放映料未払いだ。これにより放映権がパドレスに帰属しパドレスはMLB初の直接放映球団となった。しかしDiamondとの契約破棄により契約残り7年$420M、年あたり$60Mの収入源が消えた。

180%以上のTV視聴者増とローカルブラックアウト撤廃による新規MLB.TV加入による新たな収益源を得たが、この記事を執筆したバリー・M・ブルーム記者本人に直接Twitter上で質問したところ、これらで先の損失を埋め合わせるには程遠いとのこと。今年分損失の80%は補償するとMLB機構からの発表がなされたが、来年以降の損失に対する救済措置プランの有無も現段階では不明だ。

この一件によりパドレスの大盤振る舞い補強路線に赤信号が灯るか否かは球団オーナー、ピーター・サイドラーの心持ち次第だが、この出来事は他球団にとって対岸の火事ではない。というのも、Bally Sportsはパドレスの他に13球団の放映を手掛けているからだ。この問題はまだこの時点で吉と出るか凶と出るかははっきり分からず、パドレス定点観測の一項目でカバーするには大き過ぎる内容のため機会があれば別途触れてみることとする。

#4 運気アップ
打撃陣のBABIPがNL最下位なのでペトコパークの方位が風水的によろしくないのではと疑ったが、2023年の三大凶殺は暗剣殺が南東、五黄殺は北西、そして歳破が西の方角とのことでペトコパークが位置する南西にはあたらなかった。投手のBABIPも下から2番目に低かったので行って来いだった。

投手陣

投手陣のfWARはNL3位だ。ただ先発投手に不安が無いわけではなくライアン・ウェザース(4.28ERA/5.24xFIP)や5月NL最優秀投手のマイケル・ワカ(3.48ERA/4.48xFIP)が今まで通りの好成績を維持すると期待しづらい。しかし一方でダルビッシュ有、ジョー・マスグローブ、ブレイク・スネルが全員防御率4点台以上でシーズンを終えるとも考えづらい。全体としては最悪でも今まで通りのレベルを期待しても良いだろう。たとえばブリュワーズのコービン・バーンズの様な投手を獲得出来るに越したことはないが、おそらく他のプレーオフ有力球団も狙っているだろうしブリュワーズ自身が地区首位なことからも実現性は高くない。また先発陣に故障が生じた際にはニック・マルティネスが復帰可能なので、リリーフの方が向いてはいるが、先発5番手程度のピッチングはどうにかなるだろう。残りのリスクはセス・ルーゴ欠場の長引き具合か。

お求めやすいポジションから

あらためてまとめると、せっかく半ば無理して守備位置に柔軟性を持たせられるロースターに仕上げたのだから、実力ある現行戦力をプレミアムなポジションに移し、コーナー外野手や一塁手という比較的安価な補強を進めるべきであるという方策が有効そうだ。だが7月半ば迄は本格的なトレード相手はみつからないから、それまでは現行戦力に期待通りの活躍を期待しつつ、ウェイバーでスクラッチくじ的補強を続けていくことになりそうだ。

しかしすぐ始められる方策もある。今年風水のラッキーカラーはオレンジ、グリーン、そしてホワイトだそうだ。先ずはディクソンの白い眼鏡を打者全員掛けてみることで運気を上げてだな。

サムネイル画像元
https://minami-hiroshima.mypl.net/shop/00000346209/news?d=1585187

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?