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「解釈の余地」と「解釈の陥穽」

先日、4回目の参加になるリアル謎解きゲームで、指示通りに進んだつもりだけどヒントを全部回収できていない状況になりました。二人で来ていたので手分けして「指示の解釈を間違えた」「道中に見落としがあった」の両方の可能性をチェックしましたが、結論は見落としでした。

以前、もう少しシリアスな場面で「別の解釈も」と言われたことがありました。協働しようとしている相手が見落としてるルール(業務規則とか)を指摘した時に、「そうかもしれないけど、これこれに解釈すればこのケースは逃れられるのでは」。

謎解きはゲームで、一緒に参加しててもそれぞれで解いて楽しみたい同時ソロプレイだから、別の解釈を考えても問題ありません。しかし、仕事などの場面は一般に協力プレイで、しかも分担(分業)プレイです。ルールや指示は、参加者の共通認識や合意を作るためにあります。できる限り誰もが同じように解釈し、同じ理解をできるように作られていますし、曲芸的な解釈は合意を難しくします。

そもそもルールや指示を作成する側も、受け取る側とのコミュニケーション手段として書き起こします。お互いにある程度のコミュニケーション能力があれば、最初に浮かんだ解釈が多くの場合は作成者の意図と合致するもので、曲芸的な解釈は不要です。それは文言にはあっているけど作成者の意図には沿わない、「ルールに反していない」けれど「本意に沿わない」ものになりやすいでしょう。

最近、PPAP関連語が第三者によって商標出願されたことがあり、出願者のコメントが報じられています。

とにかく先に出願した方が、最も早い出願人が勝つんです。新聞やインターネット等のメディアを通じて、この言葉いいなとか、自分がこれから使用するかもしれないなとか、そういうものに限って出願しています。[...](商標には)盗むという概念はないんですよ、原則として。だから私自身は不正な利益は一切求めない。正当な利益を求めていく。(「PPAP商標出願」男性を直撃 「ビジネス」と強調(毎日放送))

なぜこのような隙のある仕組みになっているかは「PPAP等の大量勝手商標出願問題について整理してみる」がまとめています。ここではまず、商標法の第一条をみて「解釈」してみてください。

第一条  この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。(商標法)

あなたの頭に浮かんだ最初の解釈と、新聞やインターネット等で見つけた言葉を出願する出願者の解釈は、合致するでしょうか。解釈が分かれたとしたら、あなたはその相手とスムーズに商標関連で協働したり依頼したらできるでしょうか。そして商標法の「意図」や「本意」はどんなものだったでしょうか。みんなと解釈が合わない、曲芸的に解釈してしまうということのコストやデメリットが見えてくるかと思います。

柔軟で多様な解釈は発想の段階、可能性を考える場面で役立ちます。でも実行の段階、協働の場面では、むやみな自己解釈は自分の足を引っ張ることがありそうです。少なくとも「書かれていないから」という行間をこじ開けるような解釈や「この一語を厳密に解釈すると」といった言葉尻の解釈に「解釈の余地」を求めると、コミュニケーションに失敗し孤立する「解釈の陥穽(落し穴)」のリスクも口を開けるのだと思います。

(ヘッダー画像はKumar's Editの「Broken Love and Trust」。一言で言えばTrust(信頼)を構築しづらくなるという問題かも知れない。)

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