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気持ちよい出勤、あるいは満員電車に乗らせない技術

パソコンを立ち上げて「少し自宅で作業をして11:30ごろ出社します」とメッセージを打つ。ふた仕事ほど片づけ、関係者にファイルと進捗状況を共有してパソコンを閉じる。最寄り駅始発の10:30発の電車は、発車時刻直前にホームに行ってもガラガラで、ゆったりと座る。東京駅で降りてシェアサイクルにまたがる。今日もいい天気で、冬の寒さに戻ると聞いてたのに暖かい。11:20に会社の下につき、外勤に向かう同僚とすれ違って言葉を交わしたりしながら、オフィスフロアに向かう。

1月に転職して通勤距離と通勤時間は長くなったけど、通勤のストレスはそれほど感じていない。いくつかの自由がそうしてくれている。

まずリモートワークの自由があるから、出社時間を遅らせて家で作業してから行ってもいい。通勤経路の自由(交通費支給のために申請している経路以外で行く)があるから、大手町から東西線の代わりに東京駅の裏から自転車で茅場町まで行ってもいい。ちなみに出勤時間も自由なので、普段からもう少し早い時間だけど始発電車で通うことにしている。少しぐらいのダイヤ乱れがあっても、混雑する迂回経路に移らずに始発電車で待っていればいい。

少し前の話だけど、朝の混雑によるダイヤ乱れで、上野駅で京浜東北線が時間調整をしたことがある。「後続の電車が遅れているため、この電車は時間調整のため当駅で2分少々停車いたします」と車内アナウンスが流れる。上野駅停車中の京浜東北線。けっこうな人数が向かいのホームの山手線に移る。ドアが閉まらなかったのだろう、「もう少しお体、カバンをお引きください」と構内放送が聞こえてくる。

ガラガラの京浜東北線の中で、「あと1分ほどで発車いたします」という車内アナウンスを聞きながら、まだ向かいのホームを出られない満員という言葉では追い付かない混み様の山手線を眺めている。会社としては時刻だけを見て一律で処遇したいだろうけど、現場としては1、2分早く疲れ切ってきてくれるより、1、2分遅くても仕事を頑張れる状態で来てほしいんじゃないかと思う。それとも現場の同僚たちも、疲労困憊までがんばって1、2分早く到着した方が褒めてくれるような、そんなオフィスなんだろうか?

ようやくホームを出ていく山手線のすぐ後を追って京浜東北線が走り出す。転職によって前職を「降りた」僕は、そのことであの電車も「降りた」んだなあ、と思う。

例えば発熱だったら、最近は多くの企業ががんばって出勤したがる従業員には休むように促し、風邪やインフルエンザの蔓延を避けてパフォーマンスを維持していると思う。それはヒューマンリソースマネジメントスキル、「休ませる技術」だ。同様に出勤時間厳守という会社の規則と職場の空気にもう少し遊びを持たせれば、「満員電車に乗らせない技術」ができる。実際、僕はその技術に促されて満員電車を「降りた」のだから。

出社時間もむやみに頑張らないこと、がんばらせないことが、早く社会の普通になるといい。「満員電車に乗らせない技術」が人事系スキルの当たり前になるといい。リモートワークはいろいろ難しいにしても、その他のことはそんなに難しくないことじゃないかな?みんなが気持ちよく出勤できるようになるといいな、と思う。

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