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会社とコミュニティ、あるいは会社というコミュニティ

2月23日、3x3 laboで開催された「EGMサミット2015 "会社というコミュニティーでやりたいこと"」を聴講してきました。

■テーマ:会社というコミュニティ

「会社とコミュニティ」ではなく、「会社というコミュニティ」というワードが、今回打ち出された新しい視点だと思います。ただ何かの気付きを与えてくれそうなワードですが、一方で今回はまだそのイメージはふんわりとして、登壇者間でも各人各様のものに思われました。

このワードを軸に、少し検討と発信を続ける旨も聞きましたので、今回はこのワードについて、登壇者の各視点を追っておきたいと思いました。

「会社“は”コミュニティ」

八木橋Pachi昌也氏は「会社はコミュニティーだって言ってんじゃん」という表題のスライドで、ポジションを表明されました。質疑応答も踏まえて八木橋氏の視点を私なりに解釈すれば、「会社もコミュニティの多様なバリエーションのひとつ」、営利目的や企業理念を持つひとつの類型というか、特化型ということになりそうです。

八木橋氏は途中、「会社は自分で変えられると思う人」「コミュニティは自分で変えられると思う人」を会場挙手で確認し、今回は「会社は変えられないけどコミュニティは変えられる」と思う人とディスカッションしたいと話されました。八木橋氏のポジションと合わせると、これは「会社もコミュニティなんだから、コミュニティを変えられると思えるなら会社も変えられるよ」というメッセージなのだと思います。

「会社“と”コミュニティ」

神垣氏は社内でマネージャクラスでも「役職、部署、etcにとらわれない関係性」、コミュニティ的なつながりを作りたいという意見を持つ人がいたという話を紹介し、また同時に会社では果たすべき責任(仕事)があるけれど、やり方は選べる、そして各人が楽しくそれを果たせる環境にしたいといったことを話されていたと思います。次に登壇した松下氏も、自発的な活動、横断的な働きかけをやってみる、「自分がやる気になったらもっと会社は活用できる」というお話でした。

共通して、「会社」的な組織に「コミュニティ」的な働き方、活動を導入していく、両者を現時点では別のものとしてコミュニティのよさを取り込むというスタンスだったかと思います。続く佐藤氏も、「ヨコ」と「タテ」という言い方をされていましたが、同様に感じました。

「会社“という”コミュニティ」

今回の登壇者で一番の異物と感じた発表者ながら、実は「会社というコミュニティ」という言葉に一番正面から向き合われていたのは実は最後に登壇した前田氏だったかもしれない、と思います。前田氏はコミュニティには規範性、指向性、...といった様々な属性があり、その属性の間に例えば農耕民(農業コミュニティ)では柔軟性より計画性、突出性より協調性が重要といったコミュニティごとの優先順位があると指摘した上で、会社というコミュニティを変えるにはという点に言及されました。

■会社とコミュニティを対比する

コミュニティという語は広く捉えれば八木橋氏や前田氏の捉え方、会社もコミュニティであるとなると思います。すべての組織、すべての集団はコミュニティです。そのなかで前田氏がして見せたように、「会社というコミュニティ」の特性を考え、その動かし方や変え方を考えていくことはできそうです。

一方で、狭く捉えれば「会社」的な集団と「コミュニティ」的な集団があります。これを対比することは、広く捉えたときの「会社というコミュニティ」の特性を考えるのに役立つように思います。私は、最近再開したこのあたりの雑談をしながら、次のように考えてきています。

(前提)以下は狭義の、そして典型的な(あるいは旧来の)「会社」と「コミュニティ」の対比になる。

(1)「会社」は企業理念(憲章)や営利など、組織自体が「目的」を持ち、構成員はその目的遂行の参加者である。コミュニティは、構成員がそれぞれの興味があり、言い換えれば構成員がそれぞれの「目的」を持つ。

(2)「会社」は組織の目的遂行のアクションにマッチした階層構造型(ヒエラルキー型)の組織構造を持つ。「コミュニティ」は構成員がそれぞれの興味の多寡にマッチした位置やつながりを持ちやすいフラットで粗密のあるネットワーク構造を持つ。

(3)どちらも典型、あるいは多数の従う自然な方向であって、実際のところどちらもハイブリッドな部分を持つ。コミュニティは徐々に行動規範を持つし、会社は個々人の欲求にも動かされる。コミュニティもリーダーやコアメンバーを持つし、企業もワーキンググループやサークルなどのフラットなネットワークを併せ持つ。

こう仮説してしまえば、コミュニティーという語を広く捉えて「会社“は”コミュニティ」と言った時にも、その特性を話すことができます。コミュニティ自体に活動目的や存続目的がある、構成員はその目的遂行の参加者である、一般に階層構造型の組織を持つ、この組織構造はスケールしやすい(大企業、長寿命企業が生まれやすい)など。

そして、会社に別の特性、例えばフラットなネットワーク構造を重ねるにはとか、この特性のコミュニティを変えるには(というのは前田氏のスライドの結論になりますが)といった議論の前提にできる気がします。

もちろん私の認識であって、これが正しいというものでも、定説でもありません。単に議論を先に進めるための仮定です。でもとにかく、仮定もないところに議論を積むよりは、なにかしら足場を用意した方がよいということです。

■次回以降に期待すること

「会社というコミュニティ」というワードは僕にとっても新しさを、新しくないにしても新鮮な空気を感じさせてくれました。「このワードを軸に、少し検討と発信を続ける」というところには、ぜひ期待したいと思っています。

その時に「会社とは」「コミュニティとは」からやっていては明日からできる実践に結びつかないのだとは思います。それでもこれらの語をばらばらの意味で、しかもばらばらであることを明らかにせずに使っているのは、話をぼんやりさせすぎてもったいないなと思いました。

もし次があるのであれば、パネラー間でそのあたりの認識はあわせてから進めるか、あるいは逆に各人各様の認識をはっきりポジションとして打ち出して、いっそその差異を論点にするともっと面白いのではと期待します。

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写真はbarkによる「40+152 Tie」。ライセンスはCreative Commonsのby。もし「Creative Commonsって何?」と思ってもらえたなら、こちらのノートをお勧めします。

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