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Amazon倉庫の「低賃金」と赤羽バイト

世界一の富豪のアマゾン、倉庫を支えるのは尿瓶、生活保護の人たち | ギズモード・ジャパン」という記事、よく話題になるAmazon倉庫作業の低待遇は相変わらずなのかと思いながら読み進めて、最後まできて「あれっ」と思った。記事公開後にAmazon側がコメントしたという「米国内の梱包センターにおける正社員の賃金は時給平均15ドル」って、あれあれ?記事タイトルから想像するほど、低くなくない?

先月、赤羽のバイト募集を見ていて、「時給950円〜」とか「時給950円」という求人を見つけた。

「平均」15ドルと比べるのも変な話だけど、それよりも安い。ちなみにこれが気になった理由なんだけど、これ、赤羽勤務なのに東京都の最低賃金958円より安い。気の利いたところは、時給960円で求人を出してる。でもどちらにしても、平均15ドルまで行きそうな感じではない。

ちなみに比較対象を合わせるなら、Googleで「amazon 倉庫 バイト」で検索すると、バイトル、タウンワーク、indeedとあちこちで求人が見つかる。タウンワークで見つかった58件のうち56件は日勤時給1,000円、夜勤時給1,250円。2件だけ「Amazon八千代FC」で時給950円というのがある。ちなみにこの勤務地を含む千葉県の最低賃金は現在時給868円なので優に上回っている。

The Interceptが調べた公的記録によると、現在Amazonは米国内5つの州でフードスタンプ最大受給企業TOP20に数えられており、アリゾナ州では社員の実に3分の1までもがフードスタンプ暮らし(フードスタンプはレジで食料購入するときに使える配給券で、米農務省が低所得層に補助的栄養支援プログラム[SNAP]で支給している生活補助)。長者番付世界一のジェフ・ベゾスが経営する一流企業なのに、 底辺は生活補助を受けているブルーカラーということになります。

記事ではこのことも指摘している。フードスタンプは、次のようなものらしい。

概ね、4人家族で月収入2,500ドルを下回ると対象者となることが多く、最大1人あたり月100ドル相当のスタンプ(スーパーマーケットなどで使用可能なデビットカードの形式が多い)が支給される。(Wikipedia

月収2,500ドル、27万円といったラインで「底辺は生活補助を受けているブルーカラー」と言ってるんだろうか。たしかにこれは年収3万ドル、いわゆる相対貧困ラインである、2016年度の家計収入の中央値5.9万ドルのほぼ半分だ。

でもAmazonの時給平均15$や日本での求人の1,000円前後、またはそれを下回る東京都の最低賃金時給958円でこの数字を目指そうとすると、どうなるだろう。270時間前後、労働基準法的に言えば160時間+残業110時間に匹敵する時間数、余裕で過労死ラインだ。富豪ベゾスの元で倉庫勤務する彼らだけでなく、大抵のブルーワーカーの待遇や、最低賃金の設定に言える問題じゃないだろうか。

別にAmazonを弁護する気はないんだ。僕にそんな義理はない。でもこの記事は、あまりにAmazonを強調しすぎてて、Amazonと同程度かそれに至らない待遇というのが広く存在するということから目を逸らす働きをしちゃう気がする。

平たく言えば「ベゾスは金持ちだが、Amazon倉庫勤務者は金持ちじゃない」と言っている。それはその通りだが、そこが同一賃金になるべきだとは思えない。「トップが世界一の金持ちになる好調のAmazonですら倉庫勤務者の給与はこれぐらいでしかない、ブルーワーカー待遇や最低賃金はこれでいいのか」とか、そういう論点設定であるべきじゃないのか。

それともこの記事はそういうブルーワーカーや最低賃金労働者のために書かれてるのではなく、そういう待遇を続けたいAmazon以外の企業のトップ達のために、そこから目を逸らさせるベゾス叩きに夢中にさせるために書かれてるのだろうか。まあこれは穿ち過ぎ、意地の悪い見方、陰謀論というべきだろうけど。

(ヘッダ画像はMaarten van Maanenの「Zone picking」、ライセンスはCC BY-SA 2.0。)

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