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ラジオのススメ

ラジオを聴くのもやるのもすっかり好きなわけですが。こちらは過去に「ラジオ」というくくりで書かせてもらったものを抜粋・修正したものです。せっかくですのでこの機会にお納め下さい。ご興味が出たら是非、より濃い内容が掲載されている「お笑いラジオの時間」シリーズをどうぞ。

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〜「まだお笑いラジオの時間」コラムの時間より〜

中学の頃、ヤンチャな同級生が多い学校で生活していた僕は、日々コソコソしながらも、その中でどうにか生き抜く術を持っていました。一つは「実家がとっていた日刊スポーツの芸能欄」。毎朝記事をチェックしては、ヤンチャ達に鮮度の高い情報を届けることで奴らのオラオラを受け流すという、とてもセンスのある生き方をしていました。まだ携帯すら持っていない頃だったので、この役割である程度やり過ごすことができたのです。

でもヤンチャの中には、「なんかもっと濃いヤツ知んねーの?」と聞いてくる輩もおりまして。「知らねーよバカかよヤンキーなら学校来んなよ」とか言う勇気はもちろんなく、なんかないかなぁと考えた結果、「深夜ラジオで聴いた話をそのまんまする」という、スーパー受け売りな二つ目の武器を手にしました。「めちゃイケのあの回、裏でこんなことがあったんだよ」とか「ゆずって実は、下ネタすごい言うんだよ」とか、そんな話をヤンチャのお耳に納めることで、パーティー券の押し売りを回避していたのです。これには本当に救われました。「そんな不純な気持ちでラジオ利用してんじゃねーよ」とか思われるかもしれません。でも、スキッパチビで天パブス、おまけに陰気で伏し目で猫背ブス、ついたアダ名も「スケベヅラ」なんていう少年からしたら、ヤンチャが頂点の地方中学で生きていくには何かにすがるしかなかったんです。それが僕の場合、日刊スポーツの芸能欄と深夜ラジオでした。おかげさまで「妙な情報屋」というポジションを確立し、ごく一部のヤンチャから評価を得て生きながらえました。

印象的な思い出がひとつ。当時好きだったU-turnさんのオールナイトニッポンで、エロ本のどのページで興奮してどこでどうなったのかを答え合わせするという、なかなかパンチの効いたエロコーナーがありまして。バカ中学生だった僕はそのコーナーが死ぬほど好きでした。でも、好きで聴いてはいたものの、当然エロ本そのものは見ることができず日々悶々と過ごしてまして。そんなある日の休み時間、僕きっかけでラジオに興味を持ったというヤンチャの一人がわざわざ僕の机まで来て、嬉しそうに言いました。

「こないだ話題になってたエロ本、兄貴が持ってたわ」

そしてヤンチャは、そのエロ本がどんな内容だったのかを語ってくれたのです。この瞬間、僕とヤンチャは完全に横並びで、まるで親友かのような距離感で会話していました。ラジオとエロがスクールカーストをぶち壊したのです。「ここのラインが超いいの!」と、僕のためだけに目の前でM字開脚してくれたヤンキーの姿、一生忘れません。「今度持ってきてよ!」の一言が出なかった自分の臆病さだけが心残りでしたが、これは僕の中学時代、一、二を争う最高の思い出となりました。林間学校を盲腸で休んでしまったことを帳消しにしても余りあるくらい、いい思い出です。ありがとうラジオ、ありがとうエロ。

ラジオをやる側に回っても感覚は変わりません。ただただ部屋で話しているようなバカな話を共有し、楽しんでくれる人がいて、それが広がって、ライブとか観に来てくれて、おまけに「実は僕○○なんです」とか言ってきて、「おぉ○○か!」とか言って初対面を飛び越えた会話になる存在ってなかなかないと思います。壁を壊してくれるツールとして今もなお、実感しております。

(「まだお笑いラジオの時間」(綜合図書)に掲載)

#ラジオ #コラム

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