芸人が家を借りる時の話。

芸人が家を借りる時、職業をどう説明すればいいのか、職業欄になんて書けばいいのか、困る。特に収入なんてない時なんて、勤務先の欄にバイト先の住所を書く空しさをそこで味わうわけで。生活も不規則、近所迷惑をかける可能性あり、そんな末端人間に家を貸す大家さんの心意気ってなかなかなものだと思っていまして。

あるアパートに住んでいた頃。2階建てで2部屋ずつしかない、4棟のそのアパートは立地の割に安く、住みやすい物件ですごく気に入って過ごしていました。大家さんは横浜に住んでいたため、ほとんど顔を合わす機会もなく、一時期だけ空き部屋となった隣りをリフォームしにいらしてましたが、それでも平日の昼間っから顔を合わせちゃう心苦しさがこちらにはあって、いらっしゃる時はなるべく音を立てないようにジッと生活し、「なんかすいません」と思いながら暮らしていました。

そんな部屋から引っ越すことになり、引き渡しのタイミングで大家さんにご挨拶した時のこと。優しそうな大家さんと空になった部屋で向き合い、「今までお世話になりました〜」なんてご挨拶を交わそうとしたところ、先に向こうから声をかけてくれました。

「陰ながら応援してましたよ」

契約した時から、ずっと見守って下さっていたそうです。深夜の番組までチェックし、「うちに住んでる子が喋ってる・喋ってない」と、家族で一喜一憂していたんだと、楽しげに話してくれ、「若い子のはよく分からないけど、これよかったら」と、BEAMSの袋に入ったポロシャツまでプレゼントしてくれました。面食らいました。そんなバカなと。温かすぎるだろと。

いつか自分が巨万の富を得て、アパート・マンションを買って家賃収入を手にできる立場になったら、絶対やろうと思っています。そういう恩返しをしたいものです。ちなみに、みてくれたテレビの中で自分は、『全身に名前を入れてアイドルの握手会に行く』という、奇抜ボケをかましていたそうです。

これ。

これを褒めてくれたのは後にも先にも大家さんだけでした。活力になっています。ありがとうございました。

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