可愛いトリオは不格好

あなたって嘘をつく前に一瞬、目線を左下に泳がせるのね。
それで顔を上げたときには、ほらさきっき「冬の青い空が好き」って、話してくれたのと同じくもりのない目だわ。

ごまかし方は上手いほうだと思うけれど、すべて分かっている私にとっては、あなたの前後に矛盾のない優秀な台本や上手な演技も、茶番にしか見えないの。

一度なくした手袋のスペアを買うくらい、そのプレゼントは大切だったの?

私の知らない女の人からもらったばかりの手袋の左を、あなたは先週、どこかに落としてしまった。

だから今、そこには不格好に揃う左と右と右の手袋。

あなたは無邪気を装って、そのおかしなトリオを私に紹介してくれたけれど、あなたの意志で両手が再びつがわれた事実に、ほんとうは我慢がならないのよ。

それでも、何も言えないまま、じゃばら折りにしたストローの袋をもてあそぶ手で、「そう」とだけ返した。
青い空のときみたいに。

口角をあげた顔だけ崩さないように気をつけて、あなたが見せてくれた右が一つ多い手袋を撫でてみる。

「あなたのことだから、次もきっと左をなくしちゃうわよ」
そっと吐いた呪いの言葉が、あなたの耳に冗談として届くように願いながら。

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