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ニッチの取り合いにならないような環境設計や生存戦略

雑草研究者の稲垣さんの本を読んでいる。とても面白い。

以下は「多様性」をめぐる第四章の一部と、そこから考えたことを。

NO.1にならなくてもいい もともと特別な Only one

一世風靡したSMAPの超ヒットソング「世界に一つだけの花」の有名なフレーズを引用し、これについてはさまざまな解釈ができるとしつつ、生物の世界では「ナンバー1しか生きられない」という鉄則が存在すると著者は説明する。

どういうことか。

生物学者のガウゼさんが行ったゾウリムシの飼育実験(ガウゼの実験)の話。

ある水槽に、ヒメゾウリムシとゾウリムシを入れて飼育をしたところ、1ヶ月後にはゾウリムシが死滅し、ヒメゾウリムシだけが生き残った。
一方、また別の水槽では、ミドリゾウリムシとゾウリムシを入れて飼育したところ、1ヶ月後には2種のどちらも生き残ったという。

かいつまんで乱暴に説明すると、後者の場合、住んでいる場所と食べ物が違ったそうだ。ミドリゾウリムシは水槽の底の方にいて酵母菌を食べる。ゾウリムシは水槽の上の方にいて大腸菌を食べる。だから両者は共存することができた。

すなわち、前者ではナンバー1を争うことになったのに対し、後者ではナンバー1がバッティングせず、どちらもナンバー1でありオンリー1な状況が生じていたということだ。

この「ナンバー1かつオンリー1であるポジション」のことを生態学では「ニッチ」と呼ぶそうだ。

この箇所を読んで、とても示唆に富んだ話だなと思った。

つまり、環境設計あるいは生存戦略次第で、ナンバー1かつオンリー1(ニッチ)はいくらでも成り立つということだ。

ある水槽(=社会集団)の中で、ニッチの取り合いにならないような環境設計を行ったり、生存戦略を取ったりすること。「共に生きる」って面倒で大変だなと思いがちだけれど、「対話を・・・」といったアプローチが有効である一方で、こういう方向性からのアプローチもありだなと思った次第でした。

「ナンバー1しか生きられない」って聞くと厳しい世界をイメージするが、ところがどっこい、「ナンバー1かつオンリー1でみんなが生きられる」のだとしたら、すごくやさしい世界な気がする。

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